『愛と狂気と特効薬』






 3月21日。今日は鉄生君の誕生日。
 お祝いと称して、あ〜んなことやこ〜んなことを…と色々考え(妄想し)て
は浮かれていた僕の耳に、彼―鉄生君―の聞き捨てならない言葉が飛び
込んできた。

「師匠っ!俺の誕生日覚えててくれたんだ。犬〜、見ろよ。師匠からの誕生
日プレゼントだぞ。…『ついでに犬君の首輪も送ります』だって。良かったな
〜、犬。」
「ワゥッ!」

(師匠…?またか……。)
 僕と鉄生君の間にいつも存在し続ける―――邪魔者。
 顔を見たことすらないというのに、僕はその男が憎くてたまらない。
 鉄生君の心に住み続ける、その男が…。
 見たくなかった。鉄生君が僕以外の人を思って、嬉しそうに笑っている姿
なんて。
「来るんじゃなかったな、朝からこんなところ(永田似園)まで…。」
 僕は独りごちると、その場からそっと立ち去った。
 こんな醜い嫉妬に駆られた姿を鉄生君に見られるわけにはいかないから
ね。





 その夜。
 僕は鉄生君を自宅(1人暮らしのマンション)に招いた。
「君の誕生日を祝いたいから、僕の家に来ない?夕食をごちそうするよ。」
と言えば、案の定、すぐさま色好い返事が返ってきた。
 上手いこと言いくるめ、邪魔者その2―犬君―を永田似園に置いて来させ
ることにも無事成功した。
 これで今夜は君と2人きり―――。
 さあ、ディナーを始めよう。
 たっぷり食べてね?…媚薬入りだけど。

 今夜の(僕の)メインディッシュは、もちろん君だよ?鉄生君…。





「…あっ……んっ………ああっ……はぁっ………」
「可愛いよ、鉄生君vv」
「…んっ……も…ぅ……お願………」
「どうして欲しいの?言ってごらん?鉄生君。」
「…もっ……苦し……助…けっ………りょー…と……」
「いいよ、助けてあげる。僕を名前で呼んで、上手におねだり出来たらね♪」
「…うっ…ん……」
 潤んだ瞳の焦点は、当然ながら合っていない。
 媚薬に侵された鉄生君の体はトロトロに溶けて、頭の中は正常な判断力
すら失われている状態だ。
 それでもいい。それでもいいから、君の口から自分を求める言葉を聞きた
い。こんな風に思ってしまう僕は、既にどこか狂っているのかもしれない。
 君を愛しすぎてしまった僕は―――君を傷つけることしか出来ない。
「…あっ……つ…司っ………欲しっ………早…く……キテッ………」
 僕の言うがままに言葉を発する君。
 ゾクゾクと背筋を駆け抜ける快感に身をゆだね、その欲望のままに僕は君
を犯す。
 深く、深く―――奥の奥まで。

「あああーーーーーーっっ……」
 僕を受け入れて、僕を締め付ける君の中は、なんて心地良いのだろう。
 うっとりとその快楽に酔いながら、僕は何度も何度も君を突き上げる。
 君の甘い喘ぎ声をBGMにしながら、君の中を僕の愛(精液)でいっぱいに
満たすまで。




 気が付くと、僕の下で鉄生君は気絶していた。
 瞼は腫れ上がり、顔は涙の痕でぐちゃぐちゃだった。
 こんなになるまで君を貪ってしまった自分の浅ましさに、吐き気を覚えた。
 一時の快楽は、果てしない後悔を生んだにすぎない。
「ごめんね?鉄生君。君を――愛しているんだ。」
 そっと耳元で囁く。
 すると―――
「俺も…。」
 返るはずのない言葉が返ってきて。
「…へ?」
 僕は不覚にも間抜けな声を出してしまった。
 いつの間にか目を開いてこっちを見ている鉄生君。
「こんな…薬とか盛って無理矢理酷いことするような最低ヤロウなのに、そ
れでも許しちまうくらいには、俺もお前のことが、好きだ。」
「てっ…しょう…君…。」
「でも、次からは薬はなしだぜ?」
「うん…うん…ごめんね、鉄生君。愛してるよ。」
「俺も…愛してる、司。」






                                         【END】











[後書き]
というわけで(?)、鉄生君お誕生日おめでとうっ!!!!!!そんでもって、お祝
いのSSがこんなことになっちゃってごめんなさい(笑)。いや、もう誕生日だ
と気付いてから書くまでの時間がほとんどなくて、でもやっぱりお祝いした
いから何か書きたいし…と勢いのままに書き始めましたら、あら不思議、エ
●が(と言うにはヌルイですが)出来上がりましたとさ(←オイ)。しかも陵刀
先生がエライことになってしまいました(遠い目)。キチクなのかただ単に壊
れてしまっただけなのか…とりあえず色んな意味でごめんなさい。こんなこ
とになりつつも、必ずハッピーエンドで終わらせる自分に乾杯!(言ってろ)
ちなみにタイトルの『特効薬』というのは、媚薬のことじゃありませんよ(笑)
鉄生君の言葉こそが、陵刀センセにとって最高の『特効薬』ということなの
です(というか、陵刀センセ=病んでいることは既に決定済み!?/笑)。
なんかややこしくてすみません!たいした描写もないので、裏に置かなくて
もいいかなぁ?とも思ったのですが、媚薬とか無理矢理っぽいかんじがどう
かなぁ?と思ったので、一応裏に置かせて頂きました。(というか、裏の更
新って一体何年ぶり…?/苦笑)ではでは、読んで下さって本当にありがと
うございました!!




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