:可愛いなんて言わないで: ある晴れた昼下がり、一組の男女がカフェで語り合っていた。 もちろん、『愛を』ではない。 「それでさあ、その時の信彦がまた可愛いんだよ。なんていったと思う? 『パパ大好き』だ よ!? もう激烈に可愛いよね。さすがみのるさんの子」 顔がだらしなく笑ったままで、正信はそうのたまう。 「まぁ…見たかったですわv 今でも十分可愛いけど、前はそれ以上に可愛かったのでしょう?」 正信の戯言に、コンスタンスは本気なのかそれとも付き合いなのか、うっとりしたように言った。 「そうなんだよ。いやーまさかコンとこういうこと話せるとは思わなかったよ」 「そうですか? でも信彦くんってホント可愛いですもの…」 うふふ、と笑いながら、コンスタンスは正信とみのるの一人息子を思い浮かべる。自分の息子 とは違って、そばかすのないツルツルの肌。みのるによく似た容姿。加えて明るくて優しい性 格…。 あぁっ! 欲しい… 「ダメだよ、コン。いくらコンの頼みでも、信彦はダメ。あ、もちろんみのるさんもね」 「…いやだ、先輩ったら。人の思考覗き見しないでくださいよ」 「ははは…。何を言ってるんだい? 君の考えそうなことなんて予想済みさ。伊達に先輩やって ないからね」 むぅーっとむくれるコンスタンスに、正信は笑って言う。 ただ、目だけは冷たい光を灯していたので彼の本気を窺い知ることが出来た。 「でも音井先輩? 信彦くんって大丈夫だったんですか?」 「? 何がだい?」 「前、先輩達が仕事の時は一人でお留守番していたんでしょう?」 「あぁ、そうだね。家政婦の人には来てもらっていたけど…」 「その間に何かイタズラをされたりとか、変な人に追い回されたりとか、変なものを見せ付けられ たりとか!」 何故か次第に興奮してきたのか、段々とコンスタンス女史の声が大きくなる。が、今は店にい るのが店員と正信とコンスタンスだけだったのであまり問題はないようである。 「あぁ、一度変質者に会ってね。それからは常に…」 「常に…?」 「いやいや。これは言わないほうがいいと思うから」 「何ですか? 気になるじゃないですか」 「…秘密。僕の切り札だからねv」 「ホントいい性格してますよね」 「おや、ありがとう」 「褒めてませんよー?」 「そうかい?」 「そうです」 ニコニコと笑いあいながらそう言い合っている男女二人組みは、どことなく入ってはいけないよ うな雰囲気をあたりに撒き散らしていた。 「あ、先輩。もうそろそろ時間じゃありません?」 「そうだね。行こうか」 「えぇ」 カフェを出た二人は、研究所への道のりで「愛する信彦談義」を繰り広げている。 可愛いを連発する二人組みは、話にのめり込み過ぎて周りが見えていないようであった。普段 ならば気付くこと。しかし、二人は気付かずに研究所へと入ってゆく。 その二人を物陰から見ていた、一人の少年には、結局気付かずに。 「親父の馬鹿野郎」 呟きは空しく道路に響いた。 |
hizumi様のお言葉 | 15000hitのキリリク。親ばかな正信でお送りいたします(笑)こ れに連結で「続 可愛いなんて言わないで」を書きますので。 ちなみにコンスタンスはマリエル・テリーの母君です。(恐らく知 らぬ人はいまい) |
紅月の感謝の気持ち | hizumi様、正信さんの素敵な親ばかっぷりを本当にありがとう ございますー(笑)。もう正信さんの口から「信彦可愛いv」という 言葉を聞けただけで紅月は幸せでございます(←ちょっと遠くに いっちゃってます/爆)。2人の「愛する信彦談義」に本気で加わ りたいと思いました(笑)。ところで・・・変質者。ギャーッ、その変 質者って無事だったんでしょうか?<ん? なんか正信さんに殺 されてそうな気が・・・(オイオイ)。なんか話が逸れてしまいました が、hizumi様、本当に素敵な小説をありがとうございましたー!! |