宿題 放課後、ドアを開けると花嫁さんが座っていた。 「朝日奈・・・・・・・?」 思い当たった後輩の名を呼んでみれば、 「えっと・・・・・、は・・・・い・・・・」 消え入りそうな肯定の声。 恥ずかしそうに肯定するその花嫁は可憐で可愛いとしか言えなかった。 「つーかなにやってんだ?」 蝉の声が響き渡る放課後の教室で、机に座った場に不似合いな花嫁は、 「えっと・・・。女子に・・・頼まれて・・・・」 と暑そうに答えた。 「で?」 四方の声が震えてる。 「女子に脅迫されたって?」 壱茶、神南は遠慮なく笑ってる。 「はぁ・・・」 顔を赤らめて見入っている者も当然・・・。 「しかも、写真撮影したいからって待たされてるって」 朝日奈は身を小さくして頷いた。 その姿といったらもう・・・ 「かわいい・・・」 東堂がぼそりと呟いて朝日奈の頭を撫でた。 「本当に可愛いな」 ついで、四方。 「これなら欲しいよなー?」 壱茶など服の上から抱きしめる。 「あ、あの!け、化粧が付いちゃいますから!!!」 腕の中で朝日奈が焦った声で言う。 「へ〜。化粧までされたのか」 興味深そうな松尾の声。 「く、崩すなって厳命せれてて・・・!」 やっと壱茶抜け出すと服を崩さない様整える。 「すっっっごく!なにか怖かったんです」 だから逆らえなかったと言い訳をする朝日奈。 「そうか」 壱茶から逃れ、服を整えようとする朝日奈をちょうど横にいた照宇が抱きしめる。 「あー!照宇ずりぃ」 壱茶が指差し非難する。 「お前はさっきやったろう?」 「あんなんで足りるか!」 道明寺兄弟の間で取り合い勃発。 慌てる朝日奈は東堂によって救出された。 「崩すなとあれほど言っているのにな」 そのまま四方に回す。 「ちょっと崩れたな?直してやるよ」 四方は受け取った朝日奈の花嫁衣装の崩れたところを的確に直していった。 だいたい直ったところで、 「朝日奈ー」 松尾に呼ばれて振り向くと、 パシャ カメラのフラッシュが瞬いた。 「一枚千円」 暴利である。 「「買った!」」 しかし暴利でも需要はあるらしい。 道明寺兄弟だった。 「高いぞ!てめぇ!500円!」 神南は素直に値段交渉をする。 「朝日奈だぞ?ダメに決まってるだろ?」 松尾は呆然とした朝日奈にカメラを向け、また2,3枚撮った。 「松尾」 東堂が財布を出した。 「ネガ付きで一万」 諭吉がぴらぴらと揺れる。 「ずりぃぞ!東堂!ネガ付きなら俺だって一万ぐらい出す!」 壱茶が財布をあさった。が。 ・・・・彼の財布に諭吉さんはいなかった・・・・。 沈没した弟をよそに兄が立った。 「1万1千」 「2千」 「2千5百」 「3千」 いつの間にか東堂と照宇のオークション勝負になっていた。 独壇場から閉め出される松尾。 四方がそれを引っ張る。 「なあ、それ俺も写ってるよな?」 「ええ写ってますね」 にっこおと大変嬉しそうに笑ったなかなか美人さんな四方の笑顔に松尾が引きつる。 「モデル料込みでタダで回せ」 こうして何とも迫力ある美人さんはちゃっかり朝日奈とのツーショット写真をゲットした。 「ところで、朝日奈。写真撮影遅くないか?」 朝日奈の元に戻った四方が聞く。 「だよなぁ?いつする予定だったんだ?」 ヒートアップするネガ争奪戦を目の前に、写真を諦めたらしい神南も寄ってくる。 「そーですねぇー」 心配そうに朝日奈が廊下側の窓から廊下に身を乗り出した。 「あ」 来たのか?と二人が思ったその直後。 花嫁はグランド側へ逃げた。 「?」 二人が不思議に思っていると、 「あたるー!!!!!!!!」 スパンと音がして教室のドアがはずれそうな勢いで開いた。 「や、兄。早かったな」 『朝日奈ー!!!???』 扉の向こうに制服を着た朝日奈が。 「????」 男共はグランド側にいる朝日奈と廊下側にいる朝日奈とを交互に見た。 「どういう事だ・・・?」 神南が朝日奈がふたり!?と呻いた。 「あーたーるー!!!!」 しかも廊下側の朝日奈はなにやらものすごく怒っている。 「人の学校で何やってんだこの馬鹿!!!!俺の顔で妙な事するんじゃない!!!!!」 「しかし兄よ。これを着せたのは兄だぞ?」 「だから!何で家出るんだよ!そんな服着せられてて!」 「嫌がらせには嫌がらせだ」 「お前自宅謹慎中だろうが!!!」 「自宅謹慎というモノは遊ぶためにある」 「あるかー!!!!!」 情報整理中 固まった男共に廊下から息を切らして宗近が入ってきた。 「あ、朝日奈・・・、早ぇー・・・」 さっと、松尾が捕まえる。 「宗近、アレは何だ」 アレと指を指された方には、花嫁朝日奈と学ラン朝日奈。 「花嫁の方は、朝日奈の、妹、です」 宗近の代わりに同じく息を切らせた鳴川が答えた。 「妹?」 「はい。あいつら顔はウリ双子だから」 「だーかーらー!!!アレはお前が悪いんだろう!人の部屋にあんな薄気味悪いもの放り込んで!!」 「友人曰く傑作だ」 「なら、自分の部屋に飾れ!」 「何を言う。気色悪いじゃないか。それに私だけが楽しんだんじゃおもしろくないだろう?」 「俺の部屋に放り込んでもおもしろくないわー!!!!」 「いや、おもしろかったぞ?兄よ」 「愉快犯・・・?」 「御名答」 ぱちぱちと松尾に拍手を送る鳴川。 「しかし似てるなぁ?」 四方が感心した様に声を上げる。 「さすがウリ双子」 神南は二人に拍手を送った。 「で、妹は何しに来たんだ?」 照宇が一番答えを知ってそうな鳴川に聞いた。 「さぁ?俺らは『朝日奈がウエディング姿で歩いてる』って話を聞いて、そしたら大が凄い勢いでそ いつ問いただし始めて、そのままここまで走ってきたんで」 わからないといった鳴川。 「嫌がらせ」 東堂がが呟いた。 「さっき言っていたな。『嫌がらせには嫌がらせ』」 どういう意味だ?と鳴川に視線が集中する。 「そ、それはー、あれですね。きっと。この前、中ちゃん―朝日奈の妹、あたるっていうんですけど ―が帰省したとき、中ちゃん、大に悪戯したんですよ。で、大怒っちゃって。昨日、中ちゃんが自宅 謹慎くらって帰ってきたんですけど、前回の帰省の仕返しに中ちゃんが嫌がる女の子な服を着せて やったって言ってました。しっかし、どうせ中ちゃんが謹慎中で家から出られないからって、大派手な の着せたなぁ」 説明しながら感心する幼なじみに、 「お前、詳しいな」 と宗近がうらやましそうに言った。 「そりゃ、幼なじみですから」 当たり前のように言う鳴川。 宗近は気づけば鳴川頭を殴っていた。 「ナリちゃん」 「ナリ!」 口論をしていた兄妹が即座に反応。 「宗近さん?どうしたんですか?」 鳴川を気遣いながら大が宗近を問いただした。 「ナリちゃん。大丈夫か?この際記憶喪失になってないか?そしたらないことないこと吹き込める♪」 妹の不穏な発言に 「だ、大丈夫だから!記憶もしっかり!」 鳴川はあわてて復活した。 「お前はどこかの子供か」 理由も言わず謝らず。すねた宗近に松尾が言った。 「うるせぇ!」 自覚があるらしい宗近は目立たないが顔が赤い。 心配そうな大に四方が弁明してやる。 「大丈夫。お前に詳しい鳴川に嫉妬しただけだから」 相手が四方では反抗もままならないらしい。宗近は顔を背けたまま黙っている。 「それより、妹、何か用事があるんじゃないのか?」 以前、大が妹が遠くの寄宿学校に通っていると言っていた事(理科室「泰然自若」)を思い出した 照宇が言った。 「用事?」 首をかしげた中だったが、思い出したのかポンと手を叩いた。 「宿題」 「宿題?」 「そう、宿題。学活という科目で出た作文のために来たのだった」 「謹慎中だろ?」 「謹慎中だからこそだよ」 兄妹の会話に壱茶が口を挟んだ。 「どんな作文なんだ?」 「『私が知らない家族の顔』。なんでも人間にはいろいろな顔があって、家族と向き合うときの顔と 余所と向き合うときの顔が違うらしい。ので、それを見て自分の場合と比較検討し、感想を書けと 言うモノなのだが・・・。いちばんおもしろそうで調べやすそうなのが兄だったので、わざわざ謹慎く らって帰ってきたのだよ」 平然と流す妹に兄は突っ込んだ。 「わざとかよ」 「しかし、有効な手だてだぞ?むかつく先生を殴れて、宿題が心ゆくまま探求でき、ひどくすっきり する」 「・・・・殴ったのか・・・先生・・・・」 「あまりにむかついたのでな」 言い切った中を目の前に、鳴川は肩を叩かれた。 「ほんっとーにっ。顔だけしか似てねーな」 壱茶のみんなの思いを代表した正直な感想だった。 「しかし何だな。兄の裏の顔を見ようと思って兄の振りをしたが予想以上におもしろかった」 明凌連幹部に嵐を起こした朝日奈妹は翌日寄宿学校に戻っていった。 間際に、 「犯されんなよ。兄」 と何とも物騒な言葉を残して。 |
紅月の感謝の気持ち | 茨木童子様、もうめちゃ素敵な小説を本当にありがとうございまし たっ!!!!!リクエストした『鬼組で大総受。モテモテな大君、オプション に宗近さんの嫉妬付き』を完璧に書いて下さったうえ、大君の妹 (茨木さんのオリジナル)まで登場させて下さってvいやぁ〜『あた る』ちゃんいいですねぇ(笑)。 あっ、そうそう。小説中に書いてあ る『(理科室「泰然自若」)』というのは、茨木さんのサイトの「理科 室」に置いてある「泰然自若」(小説のタイトルは「大君の妹」)と いう鬼組小説のことです。設定的には今回の小説の前にあたり ますので、もうぜひぜひ茨木さんのサイトに行ってこちらも読んで みて下さい>< うちの『リンク』ページからGO!ですよ。あと、こ の小説の最後に『ネガは東堂がせり落としました』という素敵 な一文があったことをここで追記させて頂きます〜。茨木様、萌 えツボたっぷりの小説を本当にありがとうございましたvv私的に 最後の妹の一言が大好きです(笑)。 |