クローズ+QP:バンドメンバー(阪東・ヒロミ・ツネ)の日常



「阪(ばん)ちゃん、おっはよー。」
「…………………はよ。」
「相っ変ーらず朝はローテンションだねぇ。」
「うっせぇ。」
「ハハッ。あれ?ヒロミおかーさんは?」
「誰がおかーさんだっ!」
「じゃあヒロミおとーさん?」
「…………もういい(わかってる、コイツに何を言ってもムダだってことは…)。」
「で、ヒロミママは?」
「(結局戻るのか…)朝早くに出かけた。何か用事があるんだと。」
「フーン…………浮気だったりして?」
「ハァ!?」
「あっ、あせった?」
「バカかっ!」
「フフッ、阪ちゃん余裕だねぃ!ヒロミのこと信じてるんだ?」
「…………ハァ。」

「そこは信じてるって言うところでしょ?」
 突然、背後から割り込んだ声。
「うわッ!」
「あっ、ヒロミ!おっかえり〜♪」
「ただいま。」
 にっこり笑って、ツネの頭を撫でてる姿は、確かに母と呼べなくもない(かも)。
「阪東〜、さっきのとこは信じてるって言ってくれないと。」
「フン。」
「あっ、阪ちゃんヒッドーイ。」
「なー?阪東ってば酷い奴なんだよ。」
「お前ら…。」
「ねーねー、ヒロミおかーさん。俺、ベーコンエッグが食べたいな。」
「はいはい。すぐ作るから、おとなしく待ってな。」
「ヒロミ…お前、ツネに甘すぎないか?」
「だって、誰かさんと違って、ツネは素直でいい子だからね。」
「(いい子って…)悪かったな、ひねくれてて。」
「フフッ、でもそんなところも、好きなんだけどね。」
「…っ!ヒロミ…。」

「ねー、俺お邪魔だったら、帰ろーか?」
「「…っ!」」
「な、何言ってんの!子どもがよけーな気を使うんじゃありません。」
「いや、俺一応ヒロミとタメなんですけど…。」


 今日も阪東一家は平和です(笑)。










※以下のお話は、春道が学校を辞めた後、リンダマンと再会して恋人同士とな
り、同棲している…という設定のもとに書いております(+恋人同士なので、2人
はお互いを「春道」「恵」と呼び合っています)。
この設定に嫌悪を抱かれた方は、どうか読むのをお控え下さいませ。




  『悪夢』―前編―(リンダマン×春道)



「……道…………春道っ!」
「ううっ………う……んぅっ…………めぐ…み?」
「ああ良かった。やっと気が付いたか。」
「……そう…か。俺、夢…見てたんだな。」
「ああ、ものすごく魘されてたぞ。」
「ワリィ、起こしちまって。」
「いや、そんなことはかまわないが…一体どんな夢を見てたんだ?」
「え?…あ、や、えーっと……その…わ、忘れた。」
「へ?」
「だっ、だから忘れたっつってんだよ!」
「(やれやれ…。まあこれだけ元気があるなら大丈夫か。)そうか、わかった。
じゃあもう寝ろ。今度は悪い夢見ないようにな。」
「ああ、2度も見てたまっかよ。(あんな…嫌な夢。)」
 再び目を閉じた春道の脳裏には、はっきりと先程見た夢が映し出されていた。

 春道を置いて去って行く恵―――。
 どれだけ追いかけても届かない。
 どれだけ声を張り上げても振り向かない。
 どんどん遠ざかってゆく―――その背中。
 切なくて悲しくて苦しくて……。
 そんな夢を見て魘されたなんて、面と向かって言えるわけがないっ!

 意地っ張りで人に弱みを見せたことのない男――坊屋春道。
 数日後、言えなかったことをバカバカしく思うような出来事が待っていたりする
のだが、彼はまだそのことをもちろん知る由もないのであった……。






  『悪夢』―後編―(リンダマン×春道)



「…うっ……は…る………ち……」
「恵?」
「…いく…な…………み…ち……」
「おい、恵っ!」
「…っ!」
 ガバッと跳ね起きたリンダマンこと林田恵は、目を丸くして傍で自分を見ている
春道の姿を目に捉え―――
「春道っ!」
 いきなりガバリと抱きついた。
「へ?」
 訳がわからず一瞬呆然とする春道だったが、次の瞬間、あまりの息苦しさに慌て
て声を張り上げた。
「ちょっ、ちょっと…くる…くるし……恵っ!……このっ…離せってーの!」
「あっ、す、すまない…。」
 ようやく解放された春道は、ゲホゲホと咳き込む。
「馬鹿力め!」
 春道の悪態にシュンとうな垂れるリンダマンは、よく見ると全身にビッショリと汗を
掻いていた。
 もしかして―――
「何か怖い夢でも見たのか?」
 数日前の悪夢を思い出しつつ問いかける春道に、リンダマンはあっさりと頷いた。
「ああ、おまえが俺を置いていなくなる夢だ。」
「はぁ?」
「必死になって追いかけるんだが、いつまで経っても追いつかなくて…そればかり
かどんどん遠くなっていって、ついにはその背中が消えてしまった。本当に…怖か
った。」
「お・ま・え・なぁ〜〜〜っ。」
「ん?どうした?何をそんなに怒ってるんだ?」
「なんでそーいうことをあっさり口に出して言っちまいやがるんだ!これじゃまるで…
言えなかった俺がバカみてぇじゃねぇか!!」
「言えなかった…?あっ、もしかしてこの間春道が魘されてた夢って…」
「ああ、そうだよ!おまえが俺を置いてく夢だ。ったく、こんなことならあんとき言っち
まえばよかったぜ…。」
「そうか…俺たちは同じような夢を見てたってわけだな。」
「ああ。」
「そうかそうか…。」
「って、テメェ何笑ってやがる?」
「笑ってる…?そう…そうかもな。ハハハッ。」
「おい、おまえ頭大丈夫か?」
「失礼な奴だな。俺は至って正常だ。ところで、春道。」
「ん?」
「好きだ。」
「はぁ!?」
「愛してる。」
「なっ…ななっ何を今さら……////」
「ちょっと言いたくなっただけだ。」
「バカッ!んなもん言いたくなるな!それよか……えと、そうだ!ね、寝ろっ!寝ち
まえ!今すぐに。っつ〜か、俺は寝るからなっ。お、おやすみっ!!」
 布団をかぶって見えなくなった春道の顔は、きっと今頃真っ赤になっていることだ
ろう。
(相っ変わらず可愛い奴だな…。)
 春道が聞いたら怒って暴れだしそうなことを思いながら、リンダマンは自分も寝る
べく春道と同じ布団に潜り込むのだった。

 もうきっと悪夢は見ない――――。




                                              【END】




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