「俺じゃ…ダメですか?」
 そう言った銀次の表情は、今にも泣きそうだった―――。




  『告白とその行方』




 フゥと軽く息を吐き出して、黒澤は目の前の男を見た。
 2つ年下の可愛い後輩。
 ―――のはずだった。
(それが何でこうなっちまったんだか…。)
 プルプルと微かに震えながら、項垂れつつもこちらをそっと伺う瞳。
 汚れなきその澄んだ瞳は、黒澤の心を揺さぶって、何故か居た堪れないような
気持ちにさせる。
「好きなんです―――貴方が。」
 さらに告げられた真っ直ぐな想いに、黒澤も観念せざるを得ない。
「ったく…一体俺なんかのどこがいいって言うんだよ?」
 呆れたように問い返すと、
「全部です!」
 あっさりと言い切った。
(ハハハ…なんか悪い物でも食ったんじゃねぇのか!?)
 心の中でとりあえずツッコんで、黒澤は曖昧に笑って今の言葉を聞かなかった
ことにした。
「銀次…。」
「はい?」
「俺と付き合うか?」
 半ば諦めたように発した黒澤の言葉に、銀次は目を見開いたまま一瞬フリーズ
した。

 数秒後―――
「はっ、はいっ!!!!!!」
 満面の笑みで頷く銀次の姿があった………。


 そんな銀次を見ながら、
(まずはお前の中の『俺』を全部ぶっ壊してやるよ。それでも目が覚めなきゃー、
俺の負けだ…。)
 黒澤は心の中でそっと呟くのだった――――。




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