『ある人の何気ない一言が人生を変えた。』
 なーんてことは、世の中存外よくあることで―――。




  『銀ちゃん改造計画』




「お前さー、何で髪型変えたんだ?」
「えっ!?……に、似合い…ません…か?」
「いや、そういうわけじゃねぇけどよ。まあ個人的な好みってやつ?」
「こ、好み!?」
「ああ。オレ的には前の方が好きだぜ?」
 ニヤリと口端に笑みを浮かべ、流し目をくれる(本人無自覚)目の前の男―黒澤
和光先輩―は、俺の憧れの人だ。
 そんな人に『前の髪型の方が好き』などと言われたら、俺の取るべき行動は1つ
しかないわけで…。
「オレ、切って来ます!」
 言うが早いか、俺は脱兎のごとく駆け出した。

 心の中は春真っ盛り。
 お花畑を飛び回るような心境の俺の耳には、もちろん先輩の残酷な呟きは永遠
に届くことはなかったのである――――。



「前の髪型の方が(頭を)撫でやすかったからな…(銀次はうちで飼ってる犬にそ
っくりなんだよな…)。」




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