注).このSSは、男同士の性的描写が多少あります。多少とは言っても、とりあ
えず、ぶっちゃけヤッてます(苦笑)。裏というほどでもない(私的には)と思い、こ
こに普通に置いていますが、もし『そういう』モノに耐えられないという方は、読ま
ないで下さい。読んでしまった後の苦情は受け付けませんので、何卒よろしくお願
い致します(お手数をお掛けして申し訳ありません)。










   『激情の行方』






 ―――いつも、相反する2つの想いが胸の内にあった・・・。




「逃がさない。」
 俺から離れていくことは許さない。
 俺の目の届かないところにいることは許さない。
(自分のモノにしてしまえ!)
 そんな想いが胸の奥底から湧き上がり、
(おまえは奴を一生手に入れることはできない。)
 そんなわかり切った事実を突きつける声がどこかから聞こえる。
「幸田・・・。」
 強く掴まれた腕の痛みに顔を顰めながら、幸田はいつもとは違う目の前の男
の顔を不思議そうに見ていた。
「――北川?」
 自分の名前を呼んだきり、何も言わない北川に、『言いたいことがあるなら
早く言え』そんな思いから発した呼びかけ―――のはずだった。
「うわっ!」
 だが、それが引き金となり、幸田は北川に足払いを喰わされ、自宅の床に転
がされることとなった。
「イタタッ・・・」
 幸田がしこたま打った側頭部の痛みに気を取られている間に、北川は幸田の
体を仰向けにし、自分の体重を加えることによって、幸田を完全に床に固定す
ることに成功していた。
「幸田・・・」
 先程よりさらに違和感のある呼びかけ。
 どこか艶めいていて、どこか投げやりなような。
 幸田が目を上げると、今まで見たこともないような北川の表情があった。
「きっ・・たがわ・・・?」
「・・・・・。」
 北川は何も言わない。
 それでもその瞳が強く主張していた。
 ―――『おまえが欲しい』と。





「うっ・・・クッ・・・・ハアッ・・・・・」
 幸田は眉を顰め、先程から何度となく苦しげに息を吐いていた。
「幸田・・・。」
 まるで夢の中にいるような、そんな北川の声が、よけいに幸田の苦しみを増
幅させていく。
「き・・たが・・・わっ・・・・ハアッ・・・もっ、苦し・・・・」
 幸田の目から、自然と雫が流れ落ちる。
「幸田・・・?」
 北川の声の調子が変わった。
 まるで今目が覚めたばかりだとでも言いたげな、半分意識を失っているかの
ような―――声。
「北川っ!」
 縋り付くように幸田が背中に手を回す。
「あっ、幸田・・・俺・・・・俺は・・・・・。」
 今、この状況で我に返った男は、情けないくらいのうろたえぶりだった。
 幸田は思わず呆れたように笑い、その振動に身を震わせた。
 限界のときは―――近い。
「悩むなら、後にしてくれ。」
 完全に主導権を握っている幸田の誘い文句は、まさに鶴の一声。
「幸田っ。」
 北川がようやく何か吹っ切れたかのように、激しく腰を動かし始めた。
「あっ・・・・ああっ・・・・・ハアッ・・・・・・んっ・・・・」
 幸田の息が乱れていく。
 北川の動きが激しさを増していく。
「あっ・・・もっ、もうっ・・・・」
「ああ、俺も・・・」
 言いながら、北川がさらに最奥に自身を突き立てる。

『幸田・・・俺から離れないでくれ。』

 絶頂の瞬間、北川がしぼり出すように発した想いは、果たして幸田の耳に届
いたのであろうか・・・?
「北川っっ。」
 熱っぽく呼んだその声音からは、何も感じ取ることはできなかった。






『俺を傍に置いておきたいなら、俺を抱くな。』

 幸田の声が、意識の奥深いところで北川をいつまでも苛み続ける。
(それなら俺は・・・俺は・・・おまえを傍に置きはしない。その代わり俺がおま
えの傍にいて、おまえを一生縛りつけてやる!)
 新たな決意は、北川の心をほんの少し軽くした。
(縛って縛って、いつか俺のモノにする。)
 そう。幸田―――おまえは俺のモノだ。
 俺だけの―――。


 歪んだ愛が、今ようやく形になろうとしていた―――――。






                                            【END】







[後書き]
すっ、すみません!調子に乗ってまた書いてしまいました。それも本命から浮
気して、北川×幸田SSを・・・(遠い目)。し・か・も、北川さんへタレになってし
まって申し訳ないデス。ほんとは彼は総攻なんです!もっと男らしくて不敵な
かんじ・・・のはずなんですぅ〜。なのに私が書くと、どうやら攻様は皆ヘタレに
なってしまうようです・・・(爆)。それに私が『幸田さん至上主義』なので、気付
くと幸田さんが勝ってるし・・・。<何に?(笑)
一応このSS、以前幸田さんが『俺を傍に置いておきたいなら、俺を抱くな。』
と言ったことで、北川さんが葛藤しちゃってる物語・・・だったりします(笑)。
で、幸田さんが自分から離れて行ってしまうとなったときに、理性がぶっち切れ
て・・・でも正気取り戻したら幸田さんの言葉に怯えて、で最後は結局、居直っ
てしまった北川さんなのでした<身も蓋もねぇ!

って、説明しないとわからないような内容で、ほんっとすみませんでした!!
こんなんで申し訳ないですが、これも刹那様に押し付けさせて頂きます(超絶
迷惑)。返品もちろん大歓迎ですのでー。
                              2003.6  ■紅月しなの■








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