※このSSは、鬼組 THE REVOLVER7巻(第28話 A STRONG WIND)
 のネタバレを若干含んでおります。何卒ご了承下さいませ。










 忘れられない記憶がある……。






  『流せない記憶』






「お前はどうだ?血の縁は完全に断ち切れているのか?」
 抉るような白鬼(暁凪)の言葉。
「そんなもの最初からありゃしねぇよ。」
 それに平然と答えた自分に、少しだけ吐き気を覚えた。
 そのときの俺の脳裏には、目の前で戦う大の姿と重なって、『あのとき』の大
の姿が確かに映し出されていたというのに……。





 あれはまだ、俺と大が明凌(高校)で共につるんでいた頃―――。
 学校が終わり、いつものように大のおごり(強制)で街をぶらついてから、俺
は大の家に向かった。
 なにやら両親は懸賞が当たったとかで旅行に行き、妹は修学旅行中で、家
には今誰もいないらしい。
 まあようするに、『1人じゃ寂しいから…茜、今日泊まりに来て?』というわけ
だ(注.実際の大の台詞とはかなり異なっています)。
 晩メシも大が腕によりをかけて作るというので、俺は大の家に泊まることを快
く承諾した。只メシにありつけるなら、何日でも泊まってやるってなもんだ。
 ちなみにその日の晩メシはカレーだった。
「なーんだ、カレーかよ。他のモンは作れねぇのか?」
 そう聞くと、大はプクッと頬を膨らませて、
「悪かったな。どーせこれしか作れねぇよ。」
 と言う。
「えっ、マジで!?」
 俺が素で驚いていると、大は頬をうっすらと赤く染めながら、
「うっ…。今度茜が来るときまでには、他のモンも作れるようにしとくよ。」
 なんて可愛いことを可愛い顔でぬかしやがった。
 俺様が柄にもなく照れて言葉を発せずにいると、
「それで文句ねーだろ!?バーカッ!」
 大がさらに続けて悪態を吐いた。
 ベーッと舌を出すというオプション付きで。

(かっ、可愛いじゃねぇかっ!)

 このへんからすでに俺の思考回路はブッ壊れかけていたらしい。
 その日の晩、大のベッドに潜り込んだ俺の中に、すでに『理性』という2文字
は存在しなかった――――。




「あっ…茜っ!ちょっ……どこ触ってんだよ!?」
「ん〜?どこって……アソコ?」
「バッ、バカ!…あっ……いやっ………やめろってば!」
「けど大のココはやめて欲しくなさそうだぜ?」
「…あっ……ヤダッ………なっ、何でこんなこと…………」
 震えて今にも泣き出しそうな声に多少の罪悪感を覚えて、俺は手を止め大
の顔をそっと覗き込んだ。
 潤んだ瞳と真っ赤に染まった頬。
 このときの気持ちをなんと表現したらいいのだろう……。
 とにかくグラッときた。もう何でもいいからコイツが欲しいとそう思った。
 こんなに激しい衝動に駆られたのは生まれて初めてで、抑えが利かなかっ
た。いや、抑えようとも思わなかった。
 俺は無理矢理大の唇を奪い、行為を再開した。
 大の潤んだ瞳から、ついに涙が溢れ出す。
 それを綺麗だと思いながら、俺は引き寄せられるように大の瞼に口付けて
いた。
 ピクッとそれに一瞬反応を返した大が愛しくて、俺は無意識のうちに大に笑
いかけていた。
 その俺の笑みに安心したのかどうかはわからないが、大の体から少しだけ
力が抜けたような気がした。
 俺は今しかない!という決意のもとに、口を開いた。
「大…。さっきの質問に答えてやるよ。何でこんなことするかって、んなもん大
が欲しいからに決まってんだろ?」
「ほ…しい?」
「ああ。」
「な、んで?」
「何で…って、好きな奴のこと欲しいって思うのは当然のことだろーが!」
「す…き?茜が…俺のこと?」
「ああ、好きだ。誰にも渡したくねぇ、抱きてぇって思うくらい、大のことが好き
だ。」
「あか…ね………うっ……ふえっ………」
「うわっ!なっ、何で泣くんだよ!?い、嫌…なのか?俺のこと。」
 柄にもなく弱気になっちまった俺に、大はブンブンと首を何度も横に振って、
「ちっ、ちがっ!嬉し…から。俺も…茜のこと……好き。」
「大っ!」
 嬉しさのあまり、俺は大をぎゅっと抱きしめて、何度も何度も貪るようにキス
をした。



 その日、心が通い合った俺達が、そのままベッドの上で何もしなかったわけ
はなく。しっかりと体でも愛を確かめ合ったことは言うまでもない。
 初めての大は酷く怖がったが、俺様の優しい愛撫とスーパーテク(笑)で、最
後はしっかりとよがらせてやった。
 まあちーっとばっか泣かせすぎて、翌朝瞼は腫れ上がってるし、声は掠れて
出ないしで、キレた大に殴られたが……。








 目の前で戦う姿からは想像もつかないような『あのとき』の大の艶っぽい表
情。
 それを思い出しながら、俺はそれでも冷めた目で大を見続けていた。
 一生懸命な大を嘲笑うかのように。
 『あのとき』確かにあった愛は、今もお前の中に残っているのだろうか?
 俺は…俺はお前を……
 その先に続く言葉は、凍りついた俺の心が拒絶する。
 それでも…許されるなら―――

 『俺はお前を……愛している。』






                                           【END】











[後書き]
……はぅっ!なんか久々の更新がこんなんですみませんっ!!!!!!一体これはギャ
グなのかシリアスなのか…(汗)。リボルバーになってから、茜ちゃんと大君が
すごく遠くなってしまったので、ほんとは茜ちゃんが大君のことこんな風に思っ
ててくれたらいいなぁ(というか、もう絶対そうなんだって!)という思い込みの
ままに書いたらこうなりました(爆)。しかもコミックス7巻(リボルバーの方です
!)を読んでないとわからないという超不親切設計(オイ)。ほんとに色々とす
みません。代理キリリク投票で鬼組に票を入れて下さった皆様、その節は本
当にありがとうございました。アップが遅くなってしまって申し訳ございません。
ご期待に添えてないこと確実の内容で、さらに申し訳ないです(滝汗)。少しで
も楽しんで頂けたらよいのですが…(ビクビク)。うちのサイトでは少ない茜×
大にあえて挑戦してみましたが、人間無理なことはするもんじゃないな…と新
たな教訓を得ました(ダメじゃん)。それでは言い訳三昧で書き逃げといきまし
ょう(←コラコラ)。ご感想など頂けましたら、踊り狂って喜びます(笑)。




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