最初は、『何でこんな奴が?』―――どちらかというと負の感情が先に立って。
 次に、『なーんか面白ぇ奴』―――ちょっとだけ興味が湧いて。
 さらに、『危なっかしくて目が離せねぇ』―――目で追うくせがついてしまい。
 気が付けば――――――惚れていた。





    君の全ては俺のモノ






 放課後―――
 屋上でタバコを吹かしていたら、大がやって来た。
「どうした?」
 って笑ってやると、「教室から壱茶さんが見えたので。」と言う。
 どうやら視力は相当いいらしい。
「そんなに俺に会いたかったのか?」
 からかうように言えば、案の定、顔を真っ赤にして慌てて否定する。
(おいおい、可愛すぎんだろ!?)
 俺は抱きしめたい衝動を必死に理性で封じ込めた。
(フー、放課後になんでこんなよけいな体力使わねぇといけねんだ・・・。)
 思わず思考がヤツ当たり気味だ。
「あのぅ、壱茶さん。」
 おずおずと話しかけてくる姿が、なにかこう小動物的なイメージとかぶる。
(あー、もうっ。可愛いなぁ・・・いっそのこと今すぐ俺のモンにしちまうか?)
 物騒な思考とは逆に、俺は笑顔で「何だ?」と聞き返した。
「あ、はい。えと・・・壱茶さんは甘い物とか平気な人ですか?」
「は?」
 俺は思わず間抜けな声を発していた。
(それがおずおずと訊ねることなのか!?ここは普通もっとこう色っぽい話とかじ
ゃねぇのかよ!?)
 俺の気持ちも知らず、大は悲しそうな顔で、
「やっぱり・・・嫌いですか?」
 などと言う。
 大の口から、たとえ意味は違っても、『嫌い』なんて言葉を聞くのは痛い。
(俺ってばやっぱり大に惚れてんだよなぁ・・・・。しかもゾッコンラブってかんじ?
/苦笑)
 俺がしみじみとそんなことを考えている間にも、大の表情はどんどん暗く沈んで
いく。
(大のこんな顔見んのもゾクゾクしてたまんねぇんだけど、そろそろヤベェかな?)
 俺は最大級の笑顔で、
「ワリィワリィ。別に甘いモン嫌いじゃねぇよ。クッキーだってマフィンだって食うし
よ。」
 と言ってやる。
 すると途端に大の顔がパアッと輝いた。
「本当ですか!?良かったぁ〜。」
 しかし、その数秒後―――
「でも、壱茶さん。それならすぐにそう言って下さいよ。俺、やっぱり甘い物嫌いだ
ったのかなって、スッゴク不安になったんですからね。」
 今度は一転、プゥッと頬を膨らませる大に、再び湧き上がってくる抱きしめたい
衝動。
 先ほど理性で封じ込めたはずの『それ』は、しかし今度はその理性がすでにブ
チ切れていたため、封じ込めることは叶わず。
 俺は欲望のままに、大の腕を掴み、強引に引き寄せた。
「?」
 引き寄せる寸前に見た大の表情は、不思議そうなポヤヤンとしたもので、そこ
には嫌悪も好意も見い出せなかった。
(まあ、いいか。)
 俺はそのまま大をぎゅっと抱きしめ、耳元で甘〜く囁いてやる。
「好きだ、大。」
 ビクッとかすかに大の肩が動いた。
(脈あり・・・か?)
 俺は半信半疑ながらも、とどめの一言を口にする。
「俺のモンになっちまえよ。」
 今度は先程よりもさらに大きく大の肩が動く。
 俺はゆっくりと体を離し、大の顔を覗き込んだ。
 思ったとおり、ゆでだこのように真っ赤になっている―――顔。
「プッ。」
 思わず吹き出した俺に、
「ひ、ひどいっ!」
 大が上目使いに睨んで抗議する。
(そんな顔して睨んでも、可愛いだけだっつーの。)
 俺はもう一度、真剣な顔に戻って、
「で、俺のモンになるだろ?」
 半決定事項として問いかけた。
 大は一瞬パチリと目を瞬かせ、それからふんわりと微笑んだ。
「はい。そのかわり、壱茶さんも俺だけの壱茶さんになって下さいね?」
「ああ、もちろんだ。」


 こうして両思いになった俺たちだが―――1つだけ疑問が残っている。
「で、大。さっきは何でまた甘いモンが平気かとか聞いたんだ?」
「あっ、それはですねぇ・・・もうすぐ壱茶さんのお誕生日じゃないですか。だから
ケーキか何かを作ろうかなって。」
「ああ、そう言えばそうだったな・・・。誕生日なんてすっかり忘れてたぜ。ん?待
てよ。誕生日ってことは、照宇にも作るつもりなのか?」
「あっ、はい。もちろんですよ!(にっこり)」
「ダメだ。」
「え?」
「ダメだダメだ。絶対ダメだ!」
「ど、どうしてですか?」
「大の手作りを他の奴に食わせたくない。」
「・・・・・壱茶さん、それってもしかしてヤキモチですか?」
「もしかしなくても、そうなんだよ!」
「//////」
(いや、待てよ・・・。)
「よしわかった。照宇にもケーキを作ってやってくれ。」
「え?いいんですか?」
「ああ。そのかわり、俺は特別メニューをもらうからよ♪」
「特別メニュー・・・ですか?」
「ああ、そうだ。俺は特別メニューの『大を丸ごと』もらうから、手作りケーキくら
い照宇にくれてやるよ。」
「なっ、なっ・・・・・・・・」
 口をパクパクさせて言葉の続かない大が、立ち直って絶叫する前に・・・とばか
りに、俺は大の唇をやや強引に塞いだ。もちろん俺の口付けで―――。



 果たして誕生日に特別メニューが振舞われたのかどうか―――は、2人だけの
秘密である。






                                             【END】










[後書き]
お待たせしまくりの『代理リクエスト(25000hit)』です。いかがだったでしょうか
?(ちょっとビクビク)ドキドキする壱茶というより、モンモンとする壱茶ってかんじ
になってしまいました(苦笑)。いつもとちょっと違った雰囲気を目指してみたら・・
壱茶のキャラが壊れすぎマシタ(汗)。何故か俺様チック(強気)でしたねぇ。「俺
に惚れてるだろ?」みたいな(笑)。それで「ごめんなさい」されたらどうするんで
しょうか。
そして相変わらず一人称になり切れず(涙)。三人称ぐせがつきすぎて、たまに
一人称で書こうとすると色んな意味で壊れます・・・。え?三人称でも壊れてるっ
て?(アハハ)←帰れ!
ちなみに大君のケーキ作りの腕前は、石黒さんに鍛えられてるので、かなりいい
かんじなのではないかと思われます。でも甘さはもちろん石黒さんより断然控え
めで(笑)。

注.このSSは、鬼組R(省略形で失礼)3巻のプロフを見る前に書いたものです。
照宇・壱茶の誕生日をまだ知らなかったため、中途半端な書き方になっておりま
すが、どうぞお許し下さいませ。まさか1日違いだとは思ってもいませんでしたし
ねぇ(苦笑)。

それでは、代理リクエスト投票にご協力下さった皆様、本当にありがとうございま
したー!!遅くなってしまって本当にすみませんでした><
ご感想など頂けましたら、幸いですvv(万年寂しい病なので/苦笑)




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