☆ 原案協力:銀士朗様 〜Special Thanks〜 ☆ 「やっと2人っきりになれたな、狂。」 そう言って振り向いた梵天丸の顔は、至極真剣だった―――。 『その扉の向こうで・・・』 先代『紅(あか)の王』のもとに向かう狂一行は、無事第一から 第五の『門』を突破した。 そして今、陰陽殿入口に通じる四つのトビラに辿り着き、クジ引 きで壱のトビラから肆のトビラに入るメンバーがそれぞれ決められ たのであった。 全員が一斉にそれぞれのトビラをくぐる。 『また・・・・あとでな―――・・』 という言葉(希望)を残して。 その・・・直後だった。 肆のトビラを狂とともにくぐった梵天丸が、冒頭の台詞を吐いた のは。 「・・・は?」 間抜けな声で聞き返した狂に罪はない。 この状況で、そして真剣な顔で、一体何を言い出すのか?この 男は。 「だから、やっと2人っきりになれたなって言ってんだろぉ〜。」 もう一度繰り返した梵天丸を呆れたように見つめ、狂は冷めた口 調で問う。 「それがどうした?」 「ああ。だからヤラせろ。」 「何をだ?」 「何って・・・ナニだよ!」 「梵・・・お前今の状況がわかって言ってんだろーな!?」 「わかってるから言ってんじゃねぇか!さっきまで俺がどれだけ我 慢してたと思ってんだ。もう何度後ろから犯してやろうと思ったこと か・・・。」 「バッ、バカなこと言ってんじゃねぇっ!おら、さっさと行くぞ。」 スタスタと歩き出す狂の腕を、唐突に梵天丸が掴んだ。 「うわっ・・・」 狂がバランスを崩したところを強引に引き寄せ、そのまま扉に押 し付ける。 ガシャンッと今入って来たばかりの扉が派手に音を立てた。 「イタタッ・・・」 狂が睨み付けようと視線を上げたのと、梵天丸の噛み付くような 口付けが降ってきたのは、ほぼ同時のことだった。 「狂・・・狂・・・・もう我慢できねぇ。」 梵天丸の掠れた声を聞いた瞬間、狂の理性も吹き飛んだ。 「・・・・・ッ・・・」 狂は梵天丸の膝に体を預けながら、忌々しそうに一度舌打ちを した。 はだけた着物からは赤く散らされた花びらがいくつも覗き、顰め られた表情(かお)にはまだ艶っぽさが残っている。 「よぉ、でぇじょーぶかよ?狂。」 梵天丸の暢気な声に、 「っんのバカ梵がっっ!!」 狂の怒声が返る。 「何だと!?」 「ガシガシガシガシとてめぇは獣か!?」 「へっ、んなこと言ってよぉ、しっかりヨガッてたのはどこの誰でした っけ?しかも俺のこと銜え込んで離さなかったくせによ。」 「んなっ!?ヤメロと言ってもてめぇが離さなかったんじゃねぇかよ !?」 「仕方ねーだろーがよぉ。狂の奥(なか)が良すぎるのがイケねー んだ。」 「ハッ、結局俺のせいにする気か・・・・フゥ。もういい、なんかもう疲 れた・・・・。」 「だっ、大丈夫か?すまん、やっぱ俺が悪かった・・・・久しぶりで加 減がきかなかったもんだからよ。」 さっきまでの威勢はどこへやら、急にションボリと項垂れる梵天丸 に、 「・・・・・いや、俺もなんだかんだ言って受け入れてたからな。同罪 だ。」 狂も珍しく素直になってみせた。 「狂・・・」 なにやら2人の間に甘〜い雰囲気が漂い始める。 そして梵天丸の唇がゆっくりと狂のそれに重なろうとした瞬間、 ベシッ と音を立てて、梵天丸の顔に狂の平手がめり込んだ。 「調子に乗るな!」 「ッテェー!煽るだけ煽っといてヒデェじゃねぇか。」 「バカヤローッ。これ以上ヤって俺を殺す気か!?」 「誰も(最後まで)ヤるなんて言ってねぇだろが!接吻くらいで死ぬ かよ?」 「てめぇがそれだけで済ませられる奴ならな。」 「・・・うっ(バレてる?)。んなこたぁ言ったってよ、惚れてんだから 欲しいに決まってんだろ!?」 「//////」 不意打ちを喰らって、狂の頬が赤く染まる。 「今日はもう腰が立たねー。」 そう言いながら、狂は梵天丸に掠めるような接吻をした。 「狂・・・・////」 今度は梵天丸が赤くなる。 「おら、もう行くぜ。」 「あっ、ああ。」 「っイテテッ・・・。おい、肩!」 「あ?」 「だーから肩を貸せってんだよ!」 不機嫌そうに睨み付ける狂を見て、梵天丸はニヤリと口元を歪め て笑う。 「なになに?狂ちゅわんは、あまりに良すぎて腰が抜けてしまった ってか?」 ピキーンと狂のこめかみに青筋が浮かび上がった。 そして――― バコンと梵天丸の頭を一発ぶん殴ると、 「ごちゃごちゃうるせーぞっ!お前が俺様を疲れさせたんだから、 つべこべ言わずに言うことをききゃーがれっ!!」 「ってぇ〜〜〜。わーったよ。ではお姫様、まいりましょうか?」 ヤケクソ気味にそう言って、梵天丸は狂の体をフワリと抱き上げ た。 「うわっ。てっ、てめぇ、何しやがる!?」 「だって、立てねーんだろ?心配すんな、俺様が責任を持って連れ てってやっからよ!」 「コラッ!下ろせ。コノッ!クソッ!」 なんとか梵天丸の腕から抜け出そうとするものの、体力バカの力 に敵うはずもない。 狂は諦めたようにため息を吐くと、小声でこう言った。 「おい、梵。せめておぶれよ?」 しかし梵天丸はその言葉を綺麗さっぱり無視すると、狂を抱いた まま、その頬や唇にキスの雨を降らせるのだった。 しばらくして――― 陰陽殿の入口の前には、梵天丸に俗にいう『お姫様抱っこ』をさ れた狂が、仏頂面で姿を現したという―――――。 【END】 [後書き] 大昔(汗)に実施したアンケートの『その他(よろず)』で第1位だっ たSAMURAI DEEPER KYO(梵天丸×狂)SSです。諸事情が ありまして、お蔵入り状態だったのですが、よろずサイトに生まれ 変わるということで、ひそかにアップしてみました。さーて、気付い て下さる方は果たしていらっしゃるのでしょうか?(苦笑)なんか今 さらのアップで申し訳ございませんが、少しでもお楽しみ頂けました ら幸いです(実は梵狂では初めての両思いなんですよ、これ/笑) |