『想い出にそっとグラスを傾けて』 (小話番外編) 今日は・・・赤星の一周忌。 月を眺めながら、グラスにワインを注ぐ。 グイと一息にあおって、ふと遠くを見つめれば――― なんとなく、彼の笑顔が思い起こされた。 赤星楽。 同業者で友人。 切れ長の二重瞼。 そして・・・いつも艶っぽい色をたたえた瞳。 その瞳に冗談めかした笑いを滲ませながら、彼はよく私に愛の言 葉を投げかけたものである。 そう。 まるで、「もうかってまっか?」と言うように、「好きだぜ。」とか「愛 してる。」とかそんな言葉を・・・。 しかしあれは、本当に冗談だったのだろうか? 「・・・って何考えてんねん。冗談に決まってるやないかっ。」 自分の考えを慌てて否定する。 それからまた何かをふっ切るように飲み続けて・・・だんだんと頭 がボーッとしてくると、ふいにあることを思い出した。 ・・・そういえば、以前赤星が取材旅行から帰って来て、おみやげ とか言ってお守りをくれたことがあったっけ。 確かあそこの引き出しに・・・。 フラフラと立ち上がり、机の引き出しをごそごそと捜すこと2分。 『商売繁盛』と書かれた青いお守りが見つかった。 「これやこれや。」 ・・・そういやこれくれた時、あいつ・・・なんか妙に落ち着きない かんじで、変やなーて思たんやったな。 純粋な(?)好奇心に、酔いが回ってきたことも手伝って、ちょっ とくらいええやろうか・・・とお守りの封を開けてみることにする。 すると。 「?」 中から1枚の紙が出てきた。 そこには、一言。 こう書かれてあった。 『この身が狂いそうな程、君だけを想っている』 「あっ・・・。」 驚きに見開いた瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちてゆく。 「アホやな・・・作家のくせに、もっと気の利いた言葉書けへんの んか・・・。」 呟きと共に、さらに涙が溢れ出す。 それを拭うこともせず、しばらく泣き続けて――― おもむろに立ち上がり、グラスをもう1個持って来ると、それを自 分の前の席に置いた。 そしてそれにワインを注ぐと、自分のグラスにもワインを注ぐ。 カチンとグラスの合わさる音が、静かな部屋に響き渡る。 今夜だけは。 想い出にそっとグラスを傾けて・・・。 【END】 [後書き] 長崎旅行記念(笑)のSSでした(←なぜなら長崎は赤星の出身 地だから・苦笑)。やっぱり1度はやっておきたい赤星ネタ・・・で も暗い(爆)。故人だとシリアスになっちゃうのかしら・・・? あっ、これは赤星×アリスのお話ではありません。念のため。 まあ火村×アリスがベースにある赤星の片思い話と思っていた だければ・・・。たまにまた、こういう突発的な番外編というのも書 いていきたいです。 ↑や、やっぱり切ないですね・・・(苦笑)。赤星カムバーック!! (←無理言うなって)オトコマエでタラシで(笑)、でも本命には素 直に気持ちを伝えられない・・・そんな不器用な彼が好きですvv そんなこんなで、有栖川で唯一のシリアス系(?)でした。 |