可愛い人(小話その2)





「そんな隅っこで、どうかなさったんですか?有栖川さん。」
 呼びかけに、窓際でボーッと外を眺めていたアリスが振り向く。
 そのまま目線を20センチほど上にやると、ようやく声の主―鮫
山警部補―と目が合った。
 はたから見れば、まるで「大人と子ども」の図である。
「いえ。ただ火村に『邪魔だから端の方に行ってろっ』って言われ
たもので・・・。」
 アリスはそのときのことを思い出したのか、ちょっぴり悔しそうに
口を尖らせた。
 そんなアリスの子どもっぽい仕草に、思わず鮫山の頬がゆるむ。
・・・ほんとになんて可愛い人なんでしょう。私と確か3つしか違わ
ないはずなのに、学生と言っても十分通じそうな・・・。
「まあまあ。火村先生も、悪気があって言ったわけではないでしょ
う。」
 鮫山は心の中とは裏腹に、いつものクールな口調でアリスをな
ぐさめる。
「ええ。そらわかっとるんですけど・・・。でも、邪魔はないと思いま
せん?邪魔は・・・。」
「そうですね。」
 頷きながらも、鮫山は『心中お察ししますよ、火村先生』と内心
火村に同情するのだった・・・。




 アリスは、だんだんと鮫山の仕事の邪魔をしているのではない
だろうか?と不安になってきていた。
「あの・・・警部補さん。」
 呼ばれた鮫山は、一瞬目をまるくし・・・、次の瞬間、プッと吹き
出した。
「えっ?ど、どないしたんですか?俺・・・なんか変なこと言いまし
た?」
 動揺するアリスに、鮫山は肩を震わせながら、口を開く。
「いえ・・・。長年刑事をやってきて、そんなに可愛い呼び方をされ
たのは、初めてだったもので・・・。」
 言い終わらないうちに、またくすくすと笑い出す。
 アリスは、かあーっと赤くなって俯いた。
・・・えーっ?『警部補さん』って変やったんかなあ?じゃあ、どう
呼べばえーんやろ?
 すっかり頭ぐるぐる状態のアリス。
 一方、いつもクールな鮫山は、どうやらツボにハマったらしく、
俯きながら必死に口元を押さえていた。
 困惑するアリスと肩を震わせる鮫山。
 こんな2人の図は、捜査員の1人が鮫山を呼びに来るまで続く
のだった・・・。





                                 【おしまい】






[後書き]
小話シリーズ第2弾です。えーっと、鮫山警部補ファンの方、イメ
ージを崩しちゃったらすみません。っていうか・・・崩れまくりです
ね(滝汗)。申し訳ないです。でも私、実はこれでも鮫山さんのこ
と結構お気に入りなんですよねー。で、今回初挑戦!・・・なのに
爆笑させちゃってごめんね?鮫山さん(笑←殴)。

↑このコメント、今の気持ちと変わりません(苦笑)。この頃から、
鮫やんスキーでした、私。小話とはいえ、鮫やんとアリスしか登
場してないあたり、どうなんだろう・・・?と思いつつ(去)。




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