ひーさんの嫉妬(小話その1)





「あっ、有栖川さん。この間は、どうも。」
 火村について現場にやって来たアリスに、森下刑事がさわやかな
笑顔を投げかける。
「あっいえ。こちらこそ。」
 ペコリと頭を下げるアリスの隣で、火村が何っ!?と表情を曇らせ
る。
 数秒後(←この間、火村の心でどんな葛藤があったかについては、
想像におまかせする)、火村がぼそりと呟く。
「アリス。この間って何だ?」
「へっ?」
 アリスは一瞬きょとんとしてから、ああその話かとうなずいて、
「この前、難波のへんブラブラしとったら、非番の森下刑事と偶然会
うてな。で、せっかくやしいうて、一緒に飲みに行ってん。」
「ほぉー。」
 アリスの説明を聞きながら、心なしか火村の顔がひきつる。
「どないしたん?なんか顔色悪いで、火村。」
 アリスは自分がその元凶とも知らずに、心配そうに火村の顔を覗
き込む。
 火村は、相変わらずのアリスの的はずれなボケぶりに、はぁーっ
とため息をついて、
「俺はいたって健康だ。それより、アリス。おまえいつから森下刑事
とそんなに親しくなったんだ?」
「えっ?」
 アリスは思いもかけない火村の問いかけに目を丸くする。
「うーん。別にそない親しいゆうわけでも・・・。」
「そうか。だったらもう一緒に飲みに行ったりなんかするなよ。」
 本当は、『飲みに行くだけではすまない場合もあるんだぞ』と続け
たいところだが、それは抑えて口には出さずにおく。
「えっ!?な、なんで?」
 案の定、アリスは不思議そうに火村を見返す。
 そんなアリスに、火村はやれやれといったかんじで肩をすくめ・・・、
意味ありげな笑みを口端に浮かべる。
「アリス。1つだけ教えてやろう。」
 火村は右手の人差し指をピッとアリスの鼻先につきつけて、言う。
「男は皆、飢えた獣か狼さっ。」
 アリスが『じゃあ、俺も?』と自分を指さすのに、火村は『やっぱり
わかってない』と盛大なため息をつくのだった―――。




                                   【おしまい】






[後書き]
えへへー。これはですね、昔にFAXで送ったりしていたミニ話なの
です。で、なんかその原稿がでてきたので、載っけてもらいました。
けど、でてきたのはこれだけなので、その2からはこれからボチボチ
と新たに書いていこうかと・・・。よろしかったらこれからも、この小話
シリーズにお付き合い下さいませ。

↑あっ、コメント真面目だ(笑)。これってめちゃ懐かしいですよー。
タイトル通り、火村の嫉妬話ですね。しっかし火村ってば心配性です
ねぇ。『男は皆、飢えた獣か狼さっ。』は、紅月の名言ナンバー1で
す(違)。




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