『離れていても・・・同じ空の下』





「今日は5月7日か・・・。」
 北白川の下宿で、火村は独り窓辺に佇んでいた。
 心なしか声も表情も寂しそうで、それはやはり今日という日にアリスに会え
ない切なさからだろう。
「同じ空・・・とはよく言ったものだな。」
 京都と大阪―――この距離のなんと遠いことか。
「ニャーン」
「ニャオ」
「ニャー」
 火村の隣りでは、飼い猫たちが主人の気持ちを汲み取ったかのように切な
く鳴いていた・・・。




「あーあ、5月7日やっていうのに、なんで仕事が詰まってるんやろ・・・。」
 ほんとなら、今すぐにでも火村の元へ飛んでいきたい―――それがアリス
の本音だった。
「もうっ、さっきから1行も進んでへんやん。」
 声に出しても、返事を返す者はいない。
 寂しさが一層込み上げてくる。
「火村・・・君に会いたい。」




 タイミング―――それは目に見えない偶然。

 ガラガラガラ。
 下宿を出る火村と、
 ガチャリ。
 自宅を出るアリスは、ほぼ同じタイミングだった。
 もちろん2人は、そんなこと知る由もない。
 京都と大阪・・・目に見えない距離にいるのだから。
 火村が向かったのは、駅前にあるスーパー。
 アリスが向かったのは、近所のコンビニ。

 1時間後。
 またもや2人のタイミングは、寄り添うようにぴったりだった。
 買って来たばかりの『カレーマン』をほくほく顔で見つめるアリスと、
 買って来たばかりの『シーフードカレー味のカップ麺』を苦笑いしながら見
つめる火村・・・。
 そう、今日は2人の『カレー記念日』。
 コーヒーの入ったマグカップを掲げて。
 お茶の入った湯呑みを掲げて。
 さあ、言葉にしよう。
 離れていても―――同じ空の下。


「「記念日に乾杯!!」」






                                          【END】








このSSは、火村とアリスのカレー記念日に、どうしても何かお祝いがしたい
と思い、当日に即興で書いたもの…だったらしいです(苦笑)。一応、コンセ
プトは「離れていても心は1つ」とかなんとか照れもせず当時の後書きに書
いてありました////(恥)カレー記念日は、会って2人でお祝いするパターン
orどちらかが相手のいる場所を訪ねるパターンor会えないパターン…etc.
色々なパターンが妄想出来て、とっても美味しいと思います!(何の話…?)




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