『世界中でただ1人』(小話その4) うららかなある春の日。 アリスは自宅兼仕事場の某マンションの一室で、1人テレビを鑑 賞していた。 台所では、カップ麺を食べようと、火にかけていたヤカンが、ピー ッピーッと音を立てている。 アリスは、「はいはい。」とヤカンに返事を返しながら、のそりと立 ち上がると、台所に行って火を止めた。 そのままカップ麺に湯を注ぎ、冷蔵庫に磁力で貼り付けてあるイ チゴ型のキッチンタイマーを3分にセットして、再びテレビ鑑賞に舞 い戻る。 たまたま付けていたチャンネル―大○テレビ―では、ちょうどアニ メ放送『スヌーピー』が始まったところであった。 いつの間にか、真剣に見ていたアリスは、数分後、雷に打たれた ような衝撃を覚えた。 そう、それはチャーリーブラウンのこの台詞を聞いたときのことで ある。 『どうしてうちの犬だけこんなに変なのかなぁ?』 アリスは思わず1人テレビに向かって叫んでいた。 「ええぇっ!?」 そのまま電話台まで突進すると、受話器を引っつかみ、ピッと短 縮2番―火村の研究室の電話番号―を押す。 トゥルルルー♪トゥルルルー♪ ガチャッ 「はい。」 やや不機嫌な火村の声。 しかしそれを気にすることもなく、アリスは、「なあなあ、火村。知 ってた?」とマイペースに切り出す。 「ああ?」 さらにトーンの下がった声。 それでもアリスは、「せやから、スヌーピーが犬やって知ってた か?」と、自分の用件を的確に告げた。 「はぁ?」 火村のトーンが急激に上がる。間の抜けた声だ。 アリスはさらに、「でな、スヌーピーって、チャーリーブラウンの飼 い犬やってんなぁ。俺、さっき初めて知ったわぁ。」と、火村を凍ら せるに充分なことを言ってのけた。 「・・・・・アリス、俺は今忙しい。」 「あっ、やっぱり?」 悪びれた様子もなく、テヘッと笑うアリスに、受話器の向こうで何 かがプチッと切れたような音がした・・・のは錯覚だろうか。 「・・・犬でも猫でも知ったことか!!」 ガチャンッ 一声怒鳴ると、そのまま受話器を叩きつける火村。 取り残されたアリスは、ツーツーという虚しい音を聞きながら、「火 村、スヌーピー嫌いやったんやろか?」と激しく論点のズレたことを 思うのだった・・・。 しかしこのときアリスは、スヌーピーが犬であることを知らない者 が、世界中で自分ただ1人であろうことに、まだ気付いてはいなか った。 そして――― カップ麺が延びきってしまい、もはや食べられる状態でないこと も、アリスはまだ気付いてはいなかったのである・・・。 オチなしで【終】 すみません、すみません、すみません!このSSだけは再アップす るべきではなかったと、今海よりも深く反省致しております(じゃあ アップするなよ?)。そして読んで下さった皆々様、アリスはこんな アホとちゃうわーっ!というツッコミは、既に自分でしておりますの で、どうかご勘弁下さいませ。これがまさか実話ネタだったなんて、 誰も思うまい(自爆)。これを書いた○年前の自分に乾杯!(違) 謝罪補足(爆)→スヌーピーファンの皆々様、本当にすみませんで した!この駄文のことは忘れてやって下さい、一刻も早く。 |