Wild fancy――truth――





「うわぁーーーっ!!!」
 自分の凄まじい絶叫に、火村は目を覚ました。
 心臓がバクバクと嫌な音を立てている。
「ハァハァ・・・ゆ、夢か・・・」

 4月15日。
 今日は火村の誕生日である。
 それなのに、なんと最悪の目覚めであろうか。
 時計の針は、朝の8時を指している。
 今日の講義は午後からなので、まだまだ余裕がある。
 とりあえずコーヒーでも飲もうか・・・と立ち上がったとき、机の上に置
いてある携帯が、ブルブルブルと音を立てた。
 寝ている間は、マナー設定にしているためである。
 手に取ると、メールが1件受信されていた。
 早速それを開くと、

『火村ー、誕生日おめでとう!
 これで1つお兄さんやね/笑
 まあすぐ俺も追いつくけど。
 今日は庶民派の俺がエーとこ
 予約しといたから、晩来てや!
 んじゃー。  アリス 』

 読み終えると、火村はクスリと笑い、
「誰がお兄さんなんだか。もうどっちもオッサンだろうが・・・。」
 とりあえずツッコミを入れておく。
 このへんが、すっかりアリスに影響されてしまっているのかもしれな
い。
 まあそれもいいだろう。
 その分こっちの影響も受けてもらえばいい。
「フッ・・・庶民派ね。夜が楽しみだな。」
 火村は、夢の中の自分とは違う、温かく柔らかな・・・日だまりのよう
な妄想に浸ってゆく。
 アリスが傍にいてくれるだけで、なんと素晴らしい誕生日であること
か。
 火村の中から、さっきの悪夢は完全に消え去っていた。
 朝っぱらから、ただ幸せな気持ちがあるばかりである。
 なんとなく呟いてみた言葉も、彼をますます幸せの世界へと引き込
むだけだった―――。


「アリス・・・愛してる。」





                                      【END】








[後書きという名の言い訳]
懐かしいこの作品…書いた後、ヒムラー様に全力で謝罪していた記
憶があります(苦笑)。当時の後書きによると、この作品は敬愛する
某サイト様で、火村とアリスの性格が逆だったら・・・というテーマで
描いていらした4コマを読んで、『明るい火村=ナチュラル・ハイな火
村』と私が勝手に間違った変換をして、そんな火村を書いてみたい!
と思い、無謀にも書いてしまったもの・・・らしいです(説明長っ!)。
あと、当時の後書きに、「火村の下宿にFAXないだろ?黒電話じゃな
いのぉー?というツッコミは、ご勘弁下さい」という自爆コメントが載っ
てました(苦笑)。拙いうえに短いお話ですが、少しでもお楽しみ頂け
ましたら幸いです。




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