注).このSSは、ヒムアリ・・・のつもりで書いていますが、おそらく鮫アリに見えます(爆)。 アリスが火村先生以外の男性とデートするなんて許せない!(笑)という方は、読まないで やって下さい。お手数をおかけして申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いします!(でも そんな深刻に考えることはありません。所詮は紅月の書くギャグ話ですので。) 『隣りの刑事に気を付けろ!』 「わっ!」 難波の街をブラついていたアリスは、いつの間にか次回作の構想に耽りながら、フラフラと 不安定な状態で歩いていた。 そのため前方の人影に気付かず、思わずぶつかってしまったのだ。 よろけたアリスを相手が支える。 「おや、有栖川さん・・・?」 ふいに名前を呼ばれて、アリスが慌てて目を上げると、至近距離に見知った顔があった。 「鮫山さん!?」 2人はとりあえず近くの喫茶店に入り、向かい合う形で座った。 そしてホットコーヒーを2つ注文し、ようやく落ち着く。 「有栖川さん、ボーッと歩いてらっしゃっては危ないですよ?ぶつかった相手が私のように反 射神経の良い人間とは限りませんからねぇ。」 ニヤリと笑う鮫山に、一瞬、誰かさんの皮肉げな笑みが重なる。 「もうっ。意地悪なんやから、鮫山さんは。ちょっと次回作のアイデアが浮かんだから、頭の中 で整理してただけですよ!」 プクッと膨れるアリスの可愛さに、鮫山の目がやんわりと笑んだ。 「整理ねぇ・・・。」 さらに含んだ笑いを洩らす鮫山に、アリスは完全にへそを曲げてしまった。 「もう、ええです!」 ぷいっとそっぽを向くアリスは、さらにそれが可愛らしい仕草になっているということに気付 いてはいないのだろう。 「アハハハ。」 鮫山はついに堪え切れず、爆笑してしまった。 (鮫山さんが爆笑してる!?) その珍しい光景に、アリスは驚きのあまり怒りを忘れてしまった。 笑いで関西人から1本取るとは(?)、恐るべし、鮫山警部補!!(注.鮫山警部補は、マ イ設定でノット関西人です/苦笑) 「ところで、次回作で思い出しましたが・・・」 「はい?」 「先日はありがとうございました。」 「えっ、いえそんな・・・こちらこそvv」 「大変楽しませて頂きましたよ♪」 「お世辞でもそう言って頂けると嬉しいですねー。」 「いえいえ、お世辞なんかじゃありません。私好みのフーダニットで、最後までとても楽しませ て頂きましたよ。」 「ヒャーッ、なんか面と向かって言われると、て、照れますね/// ありがとうございます!鮫山 さんみたいなクロウトさんにそう言って頂けて光栄です!!」 「玄人?いいえ、私はただ推理物を数だけは沢山読んでいるというだけのことですよ。・・・あ ーそれにしても残念だ。」 「?・・・何が残念なんですか?」 「今日有栖川さんにお会いできると知っていたら、この間送って頂いたご著書を持って来たの に・・・。」 「えっ?どうしてですか?」 「そんなの決まってるじゃありませんか。サインして頂くためですよ。」 心底残念そうに言う鮫山に、 「鮫山さんって・・・真顔で冗談言わはる人なんですねぇ・・・?」 なんだか変な感心の仕方をするアリスであった・・・。 時は遡って、約1ヶ月前のこと―――。 いつも事件現場に、火村にくっ付いて行くアリスは、わりと手持ち無沙汰だったりするわけ だが、そんなときいつも気さくに声をかけてくれる1人が鮫山だった。 他にはまあ、森下刑事か船曳警部くらいか。 そのときも、窓際でボーッとしていたアリスに、鮫山が話しかけてきた。 「実は私、結構推理小説マニアなんですよ。」 「えっ!?」 アリスが意外そうに鮫山を見返す。 「フフ、普通こういう職業についていたら、そんな非現実なものを読んだりしないと思われる でしょう?」 「はい、確かに非現実的ですねぇ。」 アリスは思わず自分の作品を振り返って頷く。 「でもそんなことないんですよ。非現実的な中にも、現実にとても近いようなことも混ざってい て、それがなかなか深いんですよ。実は結構勉強になります。」 「そうなんですか!?うわーっ、現役の警部補のお墨付きだったら、めちゃくちゃ説得力あり ますねー。なんかこちらこそ貴重なご意見をありがとうございますってかんじです。」 「ときに、私も有栖川さん・・・いえ、有栖川先生の方がいいかな?・・の作品を今度ぜひとも 拝見しようと思っているんですよ。」 「えっ!?そんな・・・血迷ってはいけません。私の書くモノは非現実的という面では自信が ありますよ!」 どんな自信だか。 「フフ・・・それは楽しみですねぇ♪」 「・・・・。あっ。それより、『先生』はやめて下さいね、『先生』は。私、そんなエライ人間じゃー ありませんので。」 「そうですか・・・じゃあ今までどおり有栖川さんって呼ばせて頂きますね。『アリスさん』という のも捨て難いですけど・・・。」 後半は独り言のようで、アリスの耳には届かなかった。 「そうして頂けると助かります。」 ペコリと頭を下げたアリスは、次の瞬間、ガバリと顔を上げて、 「あの・・・私の本を読んで頂けるというのは、本気で、でしょうか?」 と聞いた。 鮫山は一瞬目を丸くして、それからすぐに笑顔になった。 「はい、もちろん本気ですよ。」 「そうですか・・・ありがとうございます。では、後日とりあえずデビュー作だけお送り致します ね。よろしければ読んでやって下さい。」 「え?よろしいのですか?」 「はい。他ならぬ鮫山さんですから、ね。」 ウインク付きで言うアリスは、無自覚に可愛らしさを振り撒いていた。 「そんなこと仰ってると、火村先生に誤解されますよ?」 鮫山がクスクスと笑いながら言う。 「へ?火村に誤解?一体何を誤解されるっていうんですか?」 きょとんとして聞き返すアリスは、さらに可愛らしさ2割増しである。 鮫山はさらに笑みを深くして、 (こんなに自覚がないとは、火村先生もご苦労なさいますね・・・。) そっと心の中で呟くのだった―――。 再び現在。 場所は難波のとある喫茶店。 「冗談とは、心外ですねぇ・・・。」 鮫山は、『サインが欲しい』と言ったことに対して冗談扱いされたことに御立腹だった。 いや、顔は笑っているのだが。 「いや、まさか本気で言うてくれたはるとは思いませんでした・・・。恐縮です!」 なんだか照れ照れと頬を赤らめつつ謝るアリスである。 その後、しばらくミステリー談義を続けた後、2人は喫茶店を出た。 店を出てからも、鮫山は別段急ぐ様子は見せなかった。 やはり今日は本当に非番だったようだ。 (最初アリスは、ひそかに張り込みか何かではないかと疑っていた) それじゃーそろそろ・・・と別れようとしたとき、アリスの携帯が鳴った。 「ちょっとすみません。」 と断ってから、 「はい。」 と歩きながら出たアリスは、それから2言・3言話して――― 「わっ!」 何もないところでつまずいた。 「あっ。」 鮫山が慌てて手を差し伸べる。 『アリス!?』 電話の向こうから、驚いて半分裏返った声。 電話の相手は火村だった。 まだ態勢を立て直し切れていないアリスに代わって、鮫山がやんわりと携帯を取った。 「有栖川さんなら、大丈夫ですよ。ちょっとつまずかれただけです。」 ふいに受話器から聞こえた鮫山の声に、火村のトーンが途端に下がった。 「鮫山警部補?何故あなたがアリスと一緒に?」 「そう怖い声をなさらないで下さい。たまたま偶然お会いしただけですよ。」 『たまたま』『偶然』を強調して答える鮫山である。 その言い方が逆に火村の気持ちを逆撫ですることは、もちろん承知のうえである。 ムッとして何事かを言おうとした火村を制し、 「では、有栖川さんにお返ししますね。」 と、鮫山は態勢をようやく立て直したアリスにさっさと携帯を渡してしまう。 自分の言いたいことだけを言い、相手には言わせない―――見事な刑事の手並みである。 『おい、アリス。何で鮫山さんと一緒にいるんだ?』 「何でって・・・バッタリおうたからやけど?」 『おまえはバッタリ会えば誰にでもホイホイついていくのか!?』 「なんやて!?」 明らかな火村の失言に、アリスの声が渋味を帯びた。 「俺が誰と歩こうが俺の勝手や。これから鮫山さんとデートの続きをするねんから、放っとい て!じゃあな。」 プチッ―――ツーツーツー アリスは言うだけ言って、そのまま電源をOFFにしてしまった。 柄にもなく大人げないことをしてしまった自分を恥じていると、隣りからクスクスという笑い 声。 「あっ・・・みっともないとこ見せてしもて―――」 「いえいえ、楽しませて頂きました。」 鮫山はまだクスクスと笑い続けている。 一体今日は、何回鮫山を笑わせれば気が済むのか・・・。 「じゃあデートの続きをしますか?」 ウインク付きで言う鮫山は、いつもの学者然とした姿ではなく、なかなかのプレイボーイ風 だった。 さすがは森下刑事の教育係といったところか。 アリスは、「すみません、変なこと言ってしもて・・・。」と謝ったのだが、どうやら鮫山は本気 らしい。 「いえ、それより火村先生のおかげで、有栖川さんとデートが出来ることになって嬉しいです よvv」 なんだか妖しい色気の漂う視線がアリスに注がれた。 「え?」 カーッと赤くなるあたりがアリスらしい。 「よろしかったら、おすすめのバーにご招待しますよ?」 そうまで言われては、アリスも断れない。 元はと言えば、身から出た錆(さび)・・・なのだから。 「はい、ぜひ連れて行って下さい。」 その後――― 京都から車を飛ばして駆けつけた火村が、泥酔したアリスと再会したのは、数時間後のこ とだった。 鮫山は、少し残念だと思いながらも、アリスを保護者(火村)に返すという責任を果たした。 しかし心の中では、酔っ払って色気たっぷりのアリスを堪能できたので、今日のところはこ れで満足・・・とか思っていたらしい。 ――――隣りの刑事に気を付けろ!? 【END】 [後書き] すーみーまーせーんーーー(といきなり謝ってみる/爆)。これでもヒムアリなんです!(説得 力の欠片もない)ええ、私は鮫やんが好きなのよ!とか居直ってもダメですよ・・・ね?<殴 好きやけど、キャラ壊しまくりですみません(滝汗)。火村とアリスがラブラブなのはわかり切っ たことなので、そこに鮫やんがちょっと波風立ててくれると嬉しいなぁ・・・というのが私の本音 だったりします。鮫やんが本気出したら、略奪愛とかありそうで怖いけど(笑)。 今回のSSは、『字書きさんに100のお題』で既にアップされている「046.名前」(サブタイト ル『アリスのミステリー講座―名前の付け方編―』)の前にあたるお話です。このSSを読ん でから、100のお題の方を読んで頂けると話が繋がると思いますので、あわせてよろしくお 願いいたしますー(って、宣伝か?)。ちなみにこの「鮫やんとアリスが大阪でバッタリ」シリー ズ(どんなシリーズや!?)は、ほんと火村の出番が少ない(というか、ない/汗)ので、ヒムラ ー様には深く深くお詫び申し上げます(というか、ヒムラーさんは滅多にうちには来られてない ・・ですよね?)。 あっ、そや。鮫山警部補ファンの方がもしいらっしゃいましたら、こちらもお詫び申し上げます。 お詫びばかりですみません(汗)。 ↑ 今読み返してみても、これはやっぱり鮫アリですよねぇ(うわっ!言っちゃったよ、この人 …/爆)。なんか火村が可哀相なんですけどー(←書いたのあんただろ!?)。その後、鮫山 さんの更なるアプローチは果たしてあるのか!?待て、次回!(はございません)←オイ その後の展開は、皆様でご自由に想像してやって頂ければ幸いです。上記の当時の[後書 き]に書いてあるお題SS『アリスのミステリー講座―名前の付け方編―』なんですけど、読み たい方っていらっしゃいますでしょうか?…えーっと、どこにいったかな?(←オイ)一応探して みますね。多分どっかにデータを保存してある…はず。もし見つかったら、またいずれアップす る…かもしれません(←んないいかげんな…)。 では、このSSを読みたいとメールして下さったL様に感謝を込めてvv |