最大の敵?(小話その3) 「あれ?有栖川さん。」 呼ばれた声にアリスが振り向くと、大阪府警捜査一課の鮫山警部 補が立っていた。 「あっ、鮫山さん。こんにちは。」 「こんにちは。」 にこりと薄く笑みを浮かべる鮫山は、なにやらいつもと全く印象が 違う。なぜなら彼は、普段のパリッとしたスーツ姿ではなく、ポロシャ ツにジーパンという非常にラフな恰好だった。 仕事中の彼しか見たことのなかったアリスは、興味津々といった様 子で鮫山を上から下まで観察する。 あまりにジーッと見つめられて、鮫山は少し戸惑ったように目を伏 せた。 「あの・・・有栖川さん?」 「えっ?あっ、す、すいません。なんや鮫山さんのそういう恰好って初 めて見たもんで、ちょっと見とれてしもうて・・・。」 顔を赤くして慌てて説明するアリスに、鮫山はくすりと笑って、 「変ですか?」 少し傷ついた顔をしてみせる。困らせてやろうという意地の悪さが 見え見えなのだが、そんなことアリスはもちろん気づかない。 「あっ、やっ・・・と、とんでもないです!すごい似合ってますよ。恰好 エエなー思て見てたんですから・・・。」 「有栖川さんにそう言って頂けると、嬉しいですねぇ。そういう有栖川 さんも今日の服装とっても似合ってますよ。」 「えっ?ほんまですか!?」 嬉しそうに聞き返すアリスに、 「ええ。とっても可愛いですvv」 鮫山の残酷な一言が返った。 (か、かわいい・・・?) 「鮫山さん。それあんまり嬉しくないです。」 複雑な表情を浮かべるアリスに、鮫山は意外そうに問い返す。 「おや?そうですか・・・?」 「ええ。普通男に可愛い言うても喜びませんよ?」 「でも有栖川さんは、ホントに可愛いですからねぇ。特別です。」 『ほらっ』と鮫山がショーウインドーを指さす。そこにはまさに『可愛い』 という形容詞がぴったりのアリスの姿が映し出されていた。 それを見てアリスは・・・『どこが可愛エエッて言うんや?』と思う。 アリスは致命的なことに、自分の可愛さをまるで自覚していなかっ た。それゆえ常々火村が心配し、周りを牽制しているのだが、アリス はそんな火村の行動にも全く気づいていない。 普段そばにいられない火村が、どれだけ心を痛めているか・・・知 らないのはアリスだけで、周りの人間はひそかに火村に同情してい たりする。 しかし中には、そんなアリスの鈍さを逆にチャーンスとばかりに近 付こうとする輩もいるのだが、あとで必ず火村の恐ろしい報復を受け ることとなり、いまだ成功した者はいない。なのでたいていの者(特 に警察関係者に多い)は、ちょっと遠く離れたところから、『可愛いな ー』と心ひそかに想うにとどめている。 まあ自分から近付いていけるのは、ほんのひと握りの人物に限ら れていた。そのひと握りの筆頭が、鮫山警部補である。 ある意味火村と同質的な匂いを持つ鮫山は、今のところ火村の最 大の敵と言えなくもない。 「ところで鮫山さんは、お買い物ですか?」 アリスの問いかけに、鮫山は曖昧に頷く。 「ええ、まあ。有栖川さんは?」 「本屋めぐりです。なんや天気もええし、散歩がてらってかんじで。」 「そうですか。ではちょっと休憩しませんか?」 鮫山が少し先にあるカフェに目を向ける。 アリスは一瞬驚いた顔をして・・・すぐに笑顔で「はい。」と答えた。 「では、行きましょう。」 そう言いながら、鮫山は無邪気なアリスを横目で見て、『火村先生、 しっかり見張ってないと・・・危ないですよ?』と心ひそかに呟くのだっ た・・・。 その後、お茶をしてまっすぐ家に帰ったアリスは、鮫山の意外な一 面が見れたことに、ちょっぴり得をしたなーなどとのん気なことを考え ていた。 そこへ火村から電話があって・・・早速、鮫山とのことを話したのだ が。 火村は受話器の向こうで荒れていた。いや、暴れていた。 「アリス・・・たのむよ?」(もう少し危機感を持ってくれ!!) そんな火村の悲痛な叫びにも、「へ?何が?」というあまりにボケ た返事が返されるだけ。 火村はため息を吐きながら、『鮫山さん。この借りは、必ず倍にし てお返ししますよ?』と内心穏やかでないことを思うのだった。 【END】 [後書き] 何でしょう?これは・・・。何も考えずに書き始めたら、訳のわから ない内容になってしまいました(爆)。ようするに・・・鮫山さんが出 したかっただけ?(←オイ) 私、鮫山さんって結構くせ者だと思う んですよねー。はっきり言って火村に対抗できそうな人って、鮫山 さんくらいなんじゃないかーって。鮫山さんファンの方・・・またまた イメージ崩しまくりですみません(汗)。あーまたなんか火村の出番 が少な・・・ゲホゲホッ。では、そういうわけで・・・逃げっ! ↑ 当時の後書きの自爆っぷりは置いといて〜(苦笑)、やっぱり鮫 やんスキーですよね、私って。ヒムアリ本命だけど、鮫アリもいいなぁ とか思ってるのが丸わかりだわ(爆)。鮫森スキーさんは結構いらっ しゃいますが、鮫アリはマイナーですよね!まあ私的には、ヒムアリ でそこに鮫やんが面白半分で割って入って波風立てちゃう・・・みた いなかんじが好きなんですよねぇ。火村を焦らすことができるのは、 やっぱり鮫やんをおいて他にはいないでしょ!(と力説しつつ去る) |