夏に舞う妖精






「・・・・・」
 火村は仏頂面で自分の着ているものを改めて見やった。
「恰好いいーっ。火村めちゃ似合うやん。」
 隣でアリスがはしゃいでいる。
 火村はそんなアリスの姿を見て・・・ため息をついた。
(アリス・・・。なんでそんなに可愛いんだ。)
 2人は今、浴衣に着替えたばかりである。
 火村は「浴衣ー?俺は、いい。」と拒否したのだが、アリスの
「お願い。着て?」というウルウルとした瞳にあっさり敗北。あっ
という間に着せられてしまったのだ。
「あっもうこんな時間やん。火村、行こ?お祭りvお祭りv」
 嬉しそうに腕を引っぱるアリスになかば引きずられるようにし
て、火村は祭りへと駆り出されるのであった・・・。





「うわぁーっvv」
 アリスは物珍しそうにキョロキョロしながら歩いていた。
「おい。前向いて歩かないと、転ぶぞ?」
「へーき、へーき。」
 といった瞬間、つんのめる。
「危ないっ。」
 間一髪、火村の腕がアリスを支える。
「あーびっくりした。」
 ホッと息を吐くアリスに、
「それはこっちの台詞だ。」
 火村が怒ったような顔で言う。
「ごめん。」
 しゅんとなったアリスに、火村がほらっと手を差しのべる。
「えっ?」
 戸惑うアリスの左手に、火村の右手が重ねられた。
 アリスは幸せそうに笑って、その右手をぎゅっと握り返した。
 手を繋ぎながら、しばらくブラブラと歩いていると、ある出店を
見つけてアリスが目を輝かせた。
「火村。あれ、やろう!!」
 アリスが指さしたのは、『金魚すくい』。
 火村もやる気満々で、浴衣の袖を捲り上げながら、頷く。





 数分後―――
 アリスの手には、破れた網が5つ握られていた。
 一方。
 火村の手には、破れた網が1つと金魚が2匹入った袋が1つ。
 アリスは「何でとれへんのー?」と半分涙目である。
 火村は苦笑しながら、自分の金魚をアリスに差し出した。
「やるよ。」
 アリスの顔がぱぁっと輝く。
「ええの?」
「ああ。」
「ほんまに?」
「ああ。」
 念押しして安心したのか、アリスは嬉しそうに金魚の入った袋
を受け取った。
「金魚さん♪金魚さん♪」
 変な節をつけて楽しそうに歌うアリスを見ながら、火村は『来て
良かったな・・・』と思う。
 『祭り』などという賑やかなイベントはどちらかと言うと苦手な火
村だが、『アリスのためなら、たまには悪くないな・・・』と思う。
 口端に微笑を浮かべてそんなことを考えていると、いつの間に
かアリスは先に歩き出していた。
「火村ーっ。早く早くー。」
 跳ねるように歩いていたアリスが、振り返って呼んでいる。
「また転ぶぞー。」
 火村も答えながら、慌てて後を追いかけるのだった・・・。






                                  【END】








[後書き]
砂吐き注意報発令中・・・(爆)。えっと・・・このSSは、遼ちゃん
が描いたトップのイラストから、私がイメージ(というか妄想)を
膨らませて書いたものです(汗)。遼ちゃん、素敵な浴衣イラを
ありがとうvv勝手に話作っちゃってごめんねー。イラのイメージ
ぶち壊してないといいんだけど・・・。

↑ ということだったんですよ〜(苦笑)。イラストめちゃ可愛かっ
たんですよーvああ〜っ、お見せできないのが残念だわ。私の
SSだけだと、どうもただのバカップルですね(汗)。しかも・・・夏
の話を今頃アップする羽目に(遠)。サイト開設時だったらまだ
夏だったのにぃ。私のバカー!




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