記念日





 出会ってから、明日でちょうど1年になる。

 火村は―――
 アリスは―――

 覚えているだろうか?


                        ☆


「ひーむらっ。」
「うん?」
 振り向く火村に、アリスがニッコリと微笑む。
「明日、何の日か知ってる?」
 そんなこと・・・知っているに決まっているさ。
 いや、むしろその日をカウントダウンして待っていたくらいだ。
 しかしそんな心の内を全く見せず、火村は興味なさそうな顔でとぼけてみせる。
「何かあったか?」
 アリスは、もうしゃーないなぁ・・・とため息をついて、
「明日は、俺と火村の記念日やろ?」
「ああ。」
 火村は今わかったというように、大げさに頷いてみせた。
 そして、ニヤリと口の端を歪めて笑うと、
「記念日って・・・なんかHくさい響きだな。」
 とんでもないことを言う。
「なっ、なっ・・・なに言うとんねんっ!!」
 顔を真っ赤にして、それでもなんとかツッコミを返すアリス。
 照れてる表情が、またなんとも可愛らしい(とは、火村の心の声である/笑)。
 そんな顔を見たくていつもからかってしまうことは、もちろんアリスには内緒で
あるが・・・。
 ひとしきりうろたえるアリスを堪能した火村は、打って変わった真剣な表情で
口を開いた。
 「お祝いしようか。」
 えっ!?と驚きにアリスの目が見開かれる。
 火村はくすりと笑って、
「俺達の記念日なんだろ?」
 と片目をつぶって見せた。
「うんっ。」
 アリスもニコニコと満面の笑顔でそれに答える。
 そして―――
「これからもずっとずっとそんな風にお祝いしてけたらえーな。」
 さらりと爆弾発言をする。
 そんな台詞を何気なく言ってのけるアリスに、だから敵わねぇんだよな・・・と
火村は思う。
 しかしやはり表情は崩さないまま、からかうような口調で、
「なんだ?それ。まるでプロポーズみたいだな。」
「はっ?」
 きょとんとするアリス。
 見ると火村は、いつものニヤニヤ笑いを浮かべている。
「もーう。マジメに言うとんのに・・・。」
 拗ねて可愛らしく頬を膨らませるアリスに、たまらず火村が吹き出す。
「なに笑とんねん!?」
「いや、別に・・・。」
 拗ね拗ねアリスと苦しそうに笑いを堪える火村。
 2人のじゃれあい(?)は、まだまだ続きそうである。



 そして明日―――
 そんな2人の最初の『記念日』がやって来る・・・。





                                            《END》






なんだかデキちゃってもいないのに、バカップルな2人(爆)。

↑当時のコメントは正しいです、はい(苦笑)。実は学生火アリを書いたのは、これが初めてだったんですよねぇ・・・懐かしい。




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