被災地福島を訪ねて(第八回ガーナ高校生日本研修旅行)

公文 敏雄

磐梯山を紅葉が彩る十月下旬、猪苗代湖畔の旅館を訪ねた「ガーナよさこい
支援会」のメンバー中田、中村両君(35回生)は、食堂に集まった猪苗代町民
の熱い拍手で迎えられた。この日、八月二八日から一週間にわたるガーナ高校
生一行の福島訪問受け入れに汗を流した地元世話役の方々十名の「反省会」が
行われていた。中華料理を囲んで、笑いと尽きぬ思い出話に時を過ごしながら
も、三月十一日の東日本大震災以来の様々な苦労が各々の頭に蘇ってきた。

地震、津波、東京電力第一原発の被災が重なり、地元は言うに及ばす東京で
すら帰宅難民、水汚染、停電などの混乱が起きて、催しや旅行の中止・自粛が
報じられた。今年のガーナ高校生研修旅行先を東京と福島に予定していた当支
援会も、「日本にガーナ高校生が来てくれるだろか?」「毎年参加する原宿ス
ーパーよさこいは開催されるだろうか?」「福島は受け入れどころではないの
では?」「交流資金が集まるだろうか?」など心配事だらけで、いったんは「今
年の交流は中止やむなし」と観念した。

ところが、ガーナ高校生の反応は早かった。ネット画像You Tubeでの見舞い
メッセージとともに「行きます」との声。東京での交流幹事校麻布学園からも
「中止しないで」との訴えが。そして、縁者を失ったり、作物の風評被害、避
難民の世話などで大変な状況にあった猪苗代町から、「受け入れていただけま
すか」などと当方から訊ける雰囲気ではなかったところ、「ぜひ来てください」
との熱い言葉。

心配されたお金も、有難いことにスポンサー(株式会社ロッテ)はじめ、土佐
校同窓生を含む大勢の方々のご厚志が集まり始めた。

そして八月、都内高校生・土佐中生との交流や原宿スーパーよさこい出場、
ロッテや富士重工の工場見学(森郁夫会長=41回生のご好意による)を終えて
やや疲れ気味で福島県に入ったガーナ高校生一行二十名の目を癒したのは、磐
梯山を映す猪苗代湖や見渡す限りの水田…美しい日本の田舎の風景だった。

一夜明けて、お見舞い訪問かたがた猪苗代町長から震災の様子を伺い、野口
英世記念館ではガーナで客死した博士の事績を詳しく学んだ。

二日目、猪苗代高校を訪ねて講堂に通されると、全校生が集まっていて拍手
の嵐。生徒会長の英語のスピーチで始まる歓迎式典を皮切りに、そば打ち、浴
衣着付け体験、茶会など日本文化にひたった。そして、海岸の学校から集団避
難していた富岡高校バドミントン部員と交流。高校チャンピオンらによる模範
試合に続き、コート十面ほどを設けた大きな体育館狭しとばかり、全員が生ま
れて初めてのゲームに、サッサと羽音を立てながら我を忘れて楽しんだ。

傍目に驚いたのは、母校を離れ、親元を離れ、慣れない土地で難儀している
はずの富岡高校選手たちが、礼儀正しく、初心者相手のプレイにひたむきに打
ち興じる様子である。一意専心、一糸乱れずとはこのようなことか…高校全日
本を制した強豪チームとは聞いていたが、本物の強さを見せて貰った。

福島での交流は、会津大学見学、会津若松観光、ホームステイ、お別れ会と
続くが、紙面の都合で割愛する。

終わりに、ガーナ高校生が書いてくれた感想文は、自然と温かい心のある福
島にまた来たい、こんなところで学びたい等々感激と感謝の言葉に満ちていた
ことをご報告させていただく。

(平成2311月記)

 

正座してまずは一礼(猪苗代高校茶会)


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