小笠原諸島へ

 以前から行きたいと思っていた小笠原諸島に行ってきました。良い場所ですね。片道24時間、その不便さもまた楽しみのひとつです。ちょっとした旅行でしたので、いつもより少し詳しめに行程を簡単に振り返ってみたいと思います。
 
 まずは、我らがおがさわら丸(3代目)とははじま丸(3代目)をご紹介。調べてみたら、おがさわら丸は伊豆諸島へ行くさるびあ丸よりも大きく、全長150m、乗客数900名弱。それでも、6日に1往復しかしないので、年間に島を訪れる人は5万5千人もいないということですね。ははじま丸は父島と母島を2時間で結ぶ定期運航船で、こじんんまりとしています。

おがさわら丸(小笠原海運)

ははじま丸(伊豆諸島開発)
 そして、小さい写真ですが、父島と母島の全景です。いずれもははじま丸の船上から撮ったものですが、二見港・沖港以外は断崖絶壁で近寄り難いのが分かります。

父島 全景

母島 全景
 
 第1日目(2024/3/8 Fri) 竹芝桟橋→父島二見港
 さて、旅の始まり、竹芝桟橋出航は午前11時。9時半から乗船開始です。10時10分頃着いたので、コーヒーを買い、一応東京愛ランドのお土産コーナーをチェックしたら即乗船。乗船料がそれなりなので下から2番目の2等寝台としましたが、狭いとはいえプライベート空間は確保されており安心。出航直後はエンジンの振動と騒音が酷くて「こんなんじゃ寝られない」と思いましたが、しばらくして静かになりました。東京湾を出るまでは揺れもたいしたことなく、酔い止め薬は要らなかったかもしれません。
 出航後は船内を散策しながら、パネルを見て回ります。小笠原の自然、歴史、経済的な価値・・・。期待が高まるし、読んでいるだけで面白い。「明治丸、すげえ」ちょっと感動。クルーズ船ではないので、暇つぶしのショーなどはやっていませんが、観光案内、現地ガイドレクチャーによるスライド上映のほか、無料のパンフレット類も豊富で、船内散策も楽しめます。
 夕陽を見てから4階レストランで夕食。メニューは13種類ほどで思っていたより豊富。豚の生姜焼き定食1350円を頂きました。食堂は結構な列が出来ていて20分以上並びましたが、これは席数が足りなかったがわけではなく、作り手が足りていないだけだったようです。まぁ、人手を増やして値段が上がっても仕方ないでやむ無しとしましょう。
 その後は、自室でビールを飲みながら読書や音楽鑑賞。24時間あっても暇を持て余すことはありません。22時過ぎ、早々に就寝。
 
 第2日目(2024/3/9 Sat) 父島:三日月山→旭山→夜明山→中央山
 朝7時、レストラン営業開始と同時に朝食。朝定食は和洋それぞれ500円と1000円の計4種類ありますが、折角の旅行なので贅沢にも1000円の洋定食を頂きました。荷物整理などをしているうちに、聟島列島に近づいた9時から、6階・7階デッキでガイドさんによる自然解説タイム。見える島々の名前、ホエールウォッチングでのコツ、クジラの生態などなど・・・。やっぱり聞かないと分からないこと・知らないことって多いですね。24時間なんてあっという間。
 下船してすぐ小笠原観光協会で原チャリをレンタル。6時間2,300円なり。これまで「海抜0mからの島登山」シリーズで海から山頂まで歩いて登っていましたが、今回はレンタルして大正解。限られた時間内であちこち回るには機動力は大切です。
 父島初日のタイムスケジュールは以下の通りです。
11:15 二見港→11:25 ウェザーステーション→11:45 三日月山→12:40 旭山登山口→13:00 旭山山頂→13:25 旭山南峰→13:40 登山口→14:00 夜明山登山口→14:00 山頂→14:20 登山口→14:30 中央山登山口→見晴台・山頂→15:10 登山口
 どの山も登山口から山頂まで20〜30分程度なのであっという間に着いてしまいます。天気は生憎の曇り空ながら、どこも景色が素晴らしいですし、登山道はしっかりと整備されているので迷う心配もありません。タコノキやオガサワラビロウなどが生い茂っており、南国の様相です。
 山々を巡った後は、小笠原海洋センターでアオウミガメを見て、世界遺産センターも見学。なんだかんだで結構歩きました。宿は扇浦海岸にあるので、村営バスで宿へ。島ならではの食事が美味しいです。

三日月山

夜明山から長崎

中央山より二見湾
 父島の道路を原チャリで走っていて気付くのは特徴的な道路標識。半分は観光客向けの遊び心だと思いますが、いちいち停まって撮影してしまいました。余談ですが、原チャリに乗るのが数十年ぶりだったので、前半に一度コケてしまいました。左手中指を軽く痛めただけでなく、車体に傷が付き修理費として1000円取られてしまいました。クスン(;;)

野山羊による落石

オカヤドカリ

アカガシラカラスバト

タコノキの実注意?

野山羊注意
 
 第3日目(2024/3/10 Sun) 母島:小富士・南崎
 宿の車で二見港まで送って頂き、7時半のははじま丸で2時間かけて母島へ。天候にもよりますが、思ったほど揺れません。父島を出てすぐにクジラと遭遇。ラッキー。
 9時半に母島沖港到着。今は母島観光協会が人がいないそうで荷物を預けられないのですが、協会の横の棚に勝手に荷物を置いて南崎へ向けて出発。
 こちらもまず、タイムスケジュールを記載します。
9:50 沖港→10:40 万年青橋横・遊歩道入口→11:15 蓬莱根海岸→11:25 すり鉢→11:55 小富士→12:20 南崎ビーチ→12:35 ワイビーチ→12:55 すり鉢→13:20 都道最南端→14:20 沖港
 沖港から遊歩道入口まで4Km程度とのことだったので計画段階から歩くことにしていた次第ですが、実際歩いてみると、基本的にすべて坂道で地味にきついです。1時間弱かけて万年青(おもと)橋に達し、その手前から遊歩道へ入ります。道沿いは熱帯雨林さながらの植相。異国情緒満点です。銀杏くらいの緑の種(オガサワラビロウの種)と、モモタマナの実がそこら中に落ちています(ちなみに、こうした情報は翌日乳房山を案内して頂いたガイドさんに聞きました)。
 小富士は標高わずか86mながら景色は抜群。姪島、妹島、鰹鳥島、平島、姉島、向島と母島列島の島々を見渡せ、眼下には水の色がきれいな南崎が見えます。振り返れば乳房山もよく見えます。ここでしばし休憩。景色を堪能。

小富士から南崎

南崎ビーチから小富士

ははじま丸から見る乳房山
 小富士の後は、南崎ビーチ、ワイビーチ、蓬来根海岸と都度浜辺に降りてみましたが、狭い入り江という感じで小舟しか入れなさそうです。帰り道は都道最南端を見てから1時間かけて沖港へ。
父島に比べ小ぢんまりとしている母島は、港付近を歩いてもあっという間。ロース館、スーパーを兼ねている漁協などを見て、この日は終了です。時間の余裕があれば母島北部の石門などにも行きたかったのですが、今回は乳房山登山もあるので北部はまた今度。
 
 第4日目(2024/3/11 Mon) 母島:乳房山
 小笠原もいよいよ4日目。今回のメインイベント、乳房山登山です。ただ登るだけなら1人でも3時間あれば行けると思うのですが、折角ここまで来て登って眺めるだけではもったいない。ということで、ガイドさんに案内をお願いしました。ラッキーなことに、マンツーマンという贅沢登山です。
 ガイドさんは地元で農園を営みながらの兼業ガイドで、元々は神奈川出身の方(というか、ガイドさんはほぼ全員本土出身らしいです)。タイムスケジュールは簡単ながら以下の通り。マイマイを始め小笠原の固有種たちを探しながらの登山でしたので、かなりゆっくりとしたペースです。でも、非常に満足度の高いガイド山行でした。
8:10 乳房山登山口→10:20 山頂→東側ルート通行留区間前 11:00→13:00 登山口
 母島の豊かな自然を守るため、登山口で靴の裏やズボン・服を入念に清掃してから入山。登り始めてすぐにハハジマメグロがお出迎え。ヘゴ、オガサワラビロウ、マルハチ、ガジュマルなどを眺めながら、ゆっくりと登っていきます。マンツーマンガイドなのを良いことに、ガイドさんに質問攻め。小笠原の自然や歴史はもちろんのこと、ガイドさんが母島に来るまでの遍歴や今の生活など立ち入ったことまで聞いてすみません。でも、ガイドブックで読んだ情報が、生の知識として頭に入り、理解が深まりました。現在、崖崩れの危険があるということで東側ルートが通行禁止なのは残念ですが、乳房山山頂からの景色は、西側も東側も文句なしの美しさ。見に来る甲斐があります。

乳房山より(東側・石門崎)

乳房山より(東側・東崎)

乳房山より(西側)
 乳房山の景色もなることながら、動植物の魅力は言わずもがな。ガイドさんにオガサワラオカモノアラガイを見たいとお伝えしていたこともあり、標高300mを越えた辺りからは、2人で葉を裏返しながら歩きました。お陰様で、2匹見られました。また、3月だというのにオガサワラチビクワガタは歩いているし、オガサワラトカゲもにょろにょろ。カタマイマイは種類が多くて皆似ているので、正直区別が付きません。非常に個性的な小笠原の生き物たち。出会った動植物の一部だけですが、写真でご紹介します。

オガサワラオカモノアラガイ

オガサワラチビクワガタ

オガサワラトカゲ

ハハジマメグロ

マルハチ

ムニンシガラゴケ

オトメカタマイマイ?

グリーンアノール(外来種)
 乳房山から下山した後は、14時発のははじま丸で父島に帰島。そのまま宿に直行しましたが、夕暮れ時のイベントはオガサワラオオコウモリの観察。「なかなか飛ばないなぁ」と思っていたら、私が飛び方を知らないだけでした。普通のコウモリのイメージで変則的な飛び方を想像していたのですが、オガサワラオオコウモリは身体が大きいせいか直線的に飛行。さすが、デカイねぇ。
 
 第5〜6日目(2024/3/12Tue〜13Wed) 父島:ホエールウォチング
 朝一、宿の周辺を散策し、小笠原神社などを見学。朝食後、宿に送って頂き青灯台へ。最終日、おがさわら丸の出航時間に合わせて南島上陸ツアーを申し込んでいたのですが、生憎の低気圧の影響で午後から雨予報。午前中も風が強まっており、残念ながら南島上陸は不可との連絡。急遽、ホエールウォッチングツアーに参加しましたが、正直なめてました。
 行きのおがさわら丸の中で、ガイドさんが「2,3月のツアーなら、ほぼ100%クジラに会える」と言っているのを聞いた時は「そんな馬鹿な」と思いましたが本当でした。二見湾を出た辺りで最初に遭遇して以降、2時間ほどの間に数十回は遭遇。100m以内接近禁止だそうなので、間近では見られるわけではないものの(偶然近くで見れることはあるそうです)、遠めながらブリーチングと言われる大ジャンプも見れ、個体識別方法も学びました。荒波の中、上陸できなかった南島のすぐ近くまで行って下さいましたし、ホエールウォッチングの満足度は高いです。

尾びれ

背びれ

胸びれ

潮吹き

親子クジラ
 おがさわら丸出航は15時。それまでの間、ランチを頂き、お土産を購入。そして、世界遺産センター再訪、小笠原ビジターセンターも見学。もう島を離れるとは、名残惜しいです。
 最後は、父島名物のお見送り。「いってらっしゃ〜い」「いってきま〜す」の大声。この時期、高校卒業と同時に本土に向かう若者もいるそうで、ちょっと感動。

南島

境浦の沈没船

おがさわら丸名物お見送り
 あとは船に揺られて帰るだけですが、おまけの情報です。この日は低気圧の影響で、おがさわら丸が揺れること揺れること。夜中からずっと揺れまくりで、ちょっと気持ち悪くなりました。立ち入り禁止となった6,7階デッキを窓から覗くと、波しぶきに洗われまくっていました。船もスピードが出せないのか3時間遅れ。個人的には24時間が27時間になっても大して変わらないのですが、東京からさらに飛行機で帰る方が間に合わなくなって困っておられました。
 そんなアクシデントはありましたが、とにかく素敵な島。早くも、また行きたくなってます。