山岳小説(国内)・詳細データ 〜わ行〜
 
 
 
作 品 名
「青春前期」(若杉 慧、1955年)
あらすじ
 高校3年生の河合奈津子が不良に襲われて体を汚された。奈津子は親の意向もあって、学校を休んで信州の叔父の家に預けられることとなった。奈津子が唯一信頼する教師・青戸閏子は、奈津子の気持ちを察し、教え子の椎ノ木武志に、奈津子の様子を見に行かせた。
 武志は自分ではそれと気付いていなかったが奈津子を愛していたし、奈津子もまた武志を愛していた。奈津子と無事出会えた武志は、彼女を八ヶ岳登山に連れだした。道に迷った揚句、二人は麓の宿で一緒に泊ることになった。
 そのことを職員会議で糾弾された武志は、奈津子の純潔を主張した。奈津子は自殺を心に決め、武志とともに再び山に向かった。奈津子の気持ちを察した武志は、一緒に死ぬつもりでついて行ったが、山頂で奈津子1人が薬を飲んだことを知り、奈津子を助けるために奔走した。
感 想 等
(評価 : D)
 青春期独特の微妙な心の動き、複雑な思いを描いた作品。時代背景の違いは如何ともしがたいが、若者の気持ちがうまく描かれている気がする。とはいえ、この手の小説は最近では流行らないだろうなぁ・・・。
山  度
(山度 : 5%)
 解説によると、「『氷壁』(井上靖)以前に書かれた山岳小説として記念すべき作品」と書いてあるが、山岳小説というにはあまりに山が脇役すぎる。山を登ってはいるものの、山の描写も少ない。

 
 
 
作 品 名
「アルプス魔の山殺人事件」(和久 峻三、1996年)
あらすじ
 行天燎子警部補と、赤かぶ検事こと柊茂検事の妻・春子は、休暇でスイス・マターホルンに来ていた。ところが、行天警部補が誘拐された。インド首相直属の諜報機関RAWとパキスタンの諜報機関ISIの紛争絡みとみて、赤かぶ検事と行天珍男子巡査部長が現地に出張することとなった。
 数日後犯人から3百万ドルの身代金の要求があった。事件は、ロシアの細菌兵器開発施設を撮影したフィルムを日本からスイスへ運ぼうとしたISIの運び屋ピーター・サトウが、同じトランクを持っていた行天警部補のトランクとすりかえ、それを取り返そうとしたために起こったのだった。ピーター・サトウがトランクを取り戻そうとしたときに行天警部補に気付かれ、たまたま日本での捜査でピーター・サトウのことを知っていたために、行天警部補が誘拐されたのだった。
感 想 等
(評価 : D)
 推理小説としては何のタネも仕掛けも面白みもない話で、赤かぶ検事らは一体何の為にスイスまで行ったのやら。文章にも無駄な会話や重複記述が多く、単に頁数を稼いでいるような感じ。
山  度
(山度 : 10%)
 はっきり言って「登山」ではなく、「観光」です(^^ゞ 。ただ、マターホルンの登山史に関する記述的な部分があったのでリストに入れた。

 
 
 
作 品 名
「岳 −ガク−」(涌井 学、2011年)
あらすじ
 海外での放浪山行から帰って来た山バカ・島崎三歩は、北アルプスで遭対協の山岳救助ボランティアとして遭難救助を行っていた。そんな三歩が暮らす北アルプスを管轄する北部警察山岳遭難救助隊に、椎名久美巡査が配属された。久美は山に関しては素人だったが、日々、救助隊や三歩と訓練を積んでいった。三歩の踏ん張りもむなしく横井ナオタの父を助けることができなかったこと、休日にクライミング事故に遭遇して久美の背中で青年が亡くなったこと、自らの不注意で遭難しかかり助けられたこと、いろいろな経験を重ねて、久美は少しずつ山岳救助隊員として成長していった。
 久美が配属されて1年近く経つ頃、バクダン低気圧が近づく冬の北アルプスで、3パーティ12名という多重遭難が発生した。梶一郎・陽子親子2名の救出に向かった久美は、崖の上まで2人を引っ張り上げたものの、悪天候のためヘリの飛行が安定せず、要救の収容は困難を極めた。梶一郎の収容を諦めざるを得ない状況に至り、久美は梶救出のためヘリから飛び降りた。バクダン低気圧の中、遭難者とともに山に取り残された久美。野田隊長が救助活動打ち切りを宣言したにも関わらず、一人山へと向かう三歩。悪天候が、雪崩が、彼らを襲う・・・。
感 想 等
(評価 : B)
 マンガ「岳」の映画化作品をノベライズした小説。映画でも使われたマンガ版の決めセリフや、映画化にあたって脚本家の吉田智子が書いたシナリオでのセリフなど、既に見聞きしたセリフやストーリーをベースに構成されているのだが、不思議と感動する。
 映画と比較してみると、映画には描かれていないエピソードなども入れ込まれており、それが話の奥行きを深めているという部分もあるようだ。個人的には、映画のシナリオだけでなく、ちゃんと原作を読んで書いているのだとわかり、なんだか嬉しかった。文字ならでは表現の強み、味わい、文字という手段の情報量の豊かさなどが、ノベライズ作品としての良さを引き出しているということだろう。原作マンガが好きな人、映画「岳」に感動した人も楽しめる作品に仕上がっている。
山  度
(山度 : 100%)
 日本には、こんなに大きなクレバスは存在しないと思うが、これは映画のための創作なのでご愛嬌。途中、「肺水腫」とか出てきて「ん?」と思ったが、まぁたいして気にならないのでOK。