山岳小説(海外)・詳細データ 〜ヤ行〜
 
 
 
「ヴァーチャル クライマー」は、登山やクライミングを題材にした山岳小説・登山小説・山岳マンガ・登山漫画・山岳映画・クライミング映画など、アウトドア系のエンタメ作品の情報を紹介するサイトです。
作 品 名
「脱出山脈」 (トマス・W・ヤング、2010年)
あらすじ
 戦火のアフガニスタン上空。タリバンの聖職者ムッラーを乗せた捕虜輸送機が撃墜され、反政府軍が支配する高山地帯に不時着した。ムッラーを取り返すために敵が迫るなか、足を負傷して動けなくなったフィッシャー大佐は、パースン少佐と女性通訳のゴールド軍曹に、ムッラーを連れての脱出を命じた。パースンは空軍兵士であり陸戦には不慣れだったが、幼い頃にロッキー山脈で育ってあり、狩りの経験からライフルの腕前も一流だった。猛吹雪の高山地帯を舞台にした、捕虜を連れての脱出行が始まった。
 最新の兵器やサバイバルグッズをもってしても、自然の猛威は厳しい。途中、パースンらは、マルワン率いる反政府軍に捕まってしまった。マルワンはSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)で訓練を受けたという恐ろしい男だった。一度は捕えられてしまったパースンだったが、幸い警邏中の特殊部隊のキャントレル大尉と彼を支援するアフガニスタン政府軍のナジブ大尉らの部隊によりパースンは救い出されたものの、ゴールドは連れ去られたままだった。ムッラー生け捕りのためマルワンを追う本体と分かれ、パースンは一人ゴールド救出に向かった。厳しい自然の猛威のなか、パースンの闘いは続く。
感 想 等
( 評価 : C)
 アフガニスタンを舞台にしたサバイバル冒険小説。最初、時代設定はいつなのかと思ったが、米国911テロの話などが出てきて現代だとわかる。その辺の設定は、本が書かれてから年が経つほどわかりにくくなるので、明確に書いた方がいいかもしれない。
 内容はもう、これでもかというくらい敵軍や自然の猛威が襲ってきて、冒険小説らしいといえよう。負傷してもそれを堪えながら任務に就き、この人達はスーパーマンか!って感じである。最新の戦争ものなので、機器類も最新のものが登場しているようだが、厳しい自然の中では結局頼れるのは己のみということなのだろう。しかし、地理が全くわからないため、どこへどう向かっているのか、どうなればこのサバイバルが終わるのかピンと来ず、ただただもう凄いなぁという感想に終始してしまう。
山  度
( 山度 : 80% )
 アフガニスタンの山岳地帯を舞台にした戦闘アクションもの。登山ではないものの、サバイバル度は高い。
 
 
 
作 品 名
「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」(ユー・フェイ(余非)、2019年)
あらすじ
 世界最高峰エベレストを舞台に活躍する民間山岳救助隊「チーム・ウィングス」。隊長は日中ハーフの姜月昴(ジアン・ユエシュン)・55歳。かつて「ヒマラヤの鬼」と呼ばれた名クライマーは、娘を山で亡くして以来角がとれ、今は人命救助に命を掛けている。メンバーは、元山岳ガイドで隊長を尊敬するカナダ人のジェームズ、チーム最若手でイケメン・ヘリパイロットの韓(ハン)、元軍医で敬遠な仏教徒のタシ、エベレストで亡くなった恋人の遺体を探すためにチームに加入した紅一点の小袋子(シャオタイズ)。救助業務は、営業部長とも言えるネパール人のスヤが持ち込んでくるが、チームの財政は大赤字で、チームを維持するために姜隊長は自腹を切っていた。
 そんなとき、スヤが大きな依頼を持ってきた。依頼人は、インド情報部のヴィクター&マーカス・ホーク兄弟。内容は、インド情報部から盗まれた機密文書を積んだままエベレストのデスゾーンに墜落した飛行機から文書を回収するというもの。その文書が漏れると、3日後にカトマンズで開催されるヒマラヤ地区の平和会議が決裂してしまうかもしれないという。当初、人命救助ではない上に胡散臭い話に難色を示した姜隊長だったが、50万ドルという高額の報酬を提示され、チームのために渋々引き受けることにした。
 先日の救助でタシが怪我をしたため、隊長の命令を無視してチームを危険にさらした小袋子を呼び戻して出発となった。キャンプ1手前の5700m地点までヘリで上がり、そこからはチームの3人とホーク兄弟の5人でデスゾーンを目指した。雪崩による大きなクレバスなど難所を乗り越え、夕方には5人は標高7500mのキャンプ3に到着。
 ところが、隊長とジェームズがルート工作に出かけている間に、タシから小袋子に驚愕の事実がもたらされた。ホーク兄弟は偽物で、2人は武器商人の関係者で、探している文書はインド政府を脅して戦争を起こさせるためのものだというのだ。小袋子がヴィクターに突き落とされ、ジェームズがマーカスに襲われた。デスゾーンを舞台に、死闘が始まった。。
感 想 等
( 評価 : C)
 映画「オーバー・エベレスト」のノベライズ本。中国語版のノベライズ本を翻訳したわけではなく、映画から嶋中潤氏が書き起こしたものと思われるが、一応「原案・脚本 余非」となっているので、海外山岳小説の括りに入れた。
 映画を観る前に本の方を読んだせいもあるかもしれないが、クレバスジャンプのシーンは文字による描写だけでは何をしているのかよく分からない。嶋中氏は元々がミステリー作家なので文章は普通に上手いが、氏の登山やクライミングに関する知識はやや疑問。また、そもそもの原案の問題として、無理のある描写がいくつかある。例えばクレバスジャンプもそうだが、標高5700mまでヘリで上がり、その日のうちに7500mまで登っているにも関わらず、高山病もなければ、息苦しそうでもない。リアリティという点でいかがなものか。ドラマそのものは悪くないが、背景の甘さと登山関連描写の適当さで台無しの印象。
山  度
( 山度 : 90% )
 舞台はエベレストとの設定で、登山関連描写も多いが、エベレスト感は薄い。