山岳小説(海外)・詳細データ 〜サ行〜
 
 
 
作 品 名
「カナカレデスとK2に登る」 (ダン・シモンズ、2002年)
あらすじ
 ゲイリー、ポール、そして私ジェイクの3人は、K2登山に向けて体を慣らすために、許可も取らずないでエベレストサウスコルに来ていた。ザウスコルは、1世紀にもわたる登山隊の排泄物や酸素ボンベなどのゴミで溢れていた。突然、国連の黒いCMGが現れ、我々3人は密登山の罪で捕まってしまった。エベレスト山頂にあるレストランに連れて行かれた我々は、ブライトムーン国務長官から意外なことを告げられた。カマキリ型の宇宙人と一緒に、K2に登って欲しいというのだ。
 カマキリ型の"虫"は10年前に現れ、人類にCMGをもたらしてくれたが、それ以外の技術については一切口を閉ざしていた。国連は、虫のアドゥラダケ代表の息子・カナカレデスを無事に登山させるという目的と同時に、虫からの初めての要求という機会を使って、虫と仲良くなって情報を聞き出すという狙いを持っていたのだった。我々3人への報酬は、火星オリュンポス山登山だった。
 こうして、3人と虫のK2登山が始まった。20世紀に較べて用具や登山法が進歩したとはいえ、K2は8000m峰の中でも飛び抜けて難しい山だ。我々は、クレバスや雪崩、悪天候、高山病に苦しめられながら高みを目指していった。
感 想 等
( 評価 : B )
 SFと登山という不思議な組み合わせ。しかも異形の異星人とK2に登るという設定。違和感を感じるかと思いきや、SFの要素をたっぷりと出しつつも、高所登山の雰囲気、過酷さも存分に味わえる絶妙なバランス。うまいです。ラストシーンは、読んでいるうちに次第に想像がついてしまうのに、最後のセリフを読んだ瞬間、思わずニヤリとしてしまう。この辺もなんだか嬉しい。
 SFと言えば、H・G・ウェルズやジュール・ベルヌ、J・P・ホーガンなど古典しか読んだことがない私が評しても、あまり信憑性のある評価ができるとも思えませんが、翻訳ものにもかかわらず、山好きもSF好きも納得できる作品ではないかと思う。
山  度
( 山度 : 100% )
 実際のK2登山をしたことがないので何とも言えないが、著者は山の本を読んでちゃんと調べた上で書いているようで、その辺の描写に違和感はない。唯一、訳者の登山知識に多少不安を感じる。著者の前書きで、「アルペン・スタイル」と訳したり(やはりアルパイン・スタイルと訳して欲しい)、「ピラミッド・スタイル」と書いたりしている(たぶん英文自体がそうなっているのでしょうが、ここは「極地法」と訳してもらった方がしっくりきます)。そこを除けば、山度たっぷりで堪能できます。

 
 
 
作 品 名
「この死すべき山」 (ロジャー・ゼラズニイ、1967年)
あらすじ
 登山家ジャック・サマーズは、23歳でエベレストを登り、31歳の時には標高9万フィート弱の宇宙一の最高峰リタン星カスラ山を征服した唯一の男だった。ジャックは新しく見つかった宇宙最高峰に来ていた。それは、グレイ・シスターという標高40マイル(約64万メートル)もある、もはや山とは呼べないほどの代物だった。
 ジャックは、彼のパートナーたちに召集をかけ、仲間6人とともにグレイ・シスターへと挑んだ。その山では不可思議な現象が起こった。エネルギー生物のような鳥が襲ってきて、剣を持った男が現れ、キラキラ光る蛇どもがやってきた。だが、いくら検査をしてもそれが一体何なのか、結果は得られなかった。果して幻覚か、超常現象か。
 数々の妨害にもめげずジャックら一行は頂上へと向った。そこで、ジャックが目にしたものは…。
感 想 等
( 評価 : D )
 SF山岳小説とでもいうべきジャンル。未知の高峰を登場させるには宇宙はもってこいではあるが、64万メートルという標高はいくらなんでもねぇ。そこまでいくと空気もないし、重力もなくてクライミングが楽なのでは、とどうでもいいことを考えてしまう。ストーリー自体は悪くないし、ラストも意外感があるが、どうも???のまま終わってしまった。やはりSFと登山という組み合わせは今いちか。
山  度
( 山度 : 80% )
 舞台は宇宙ではあるものの、始終登山に絡んだ話として進んでいる。もっともSFなので、登山技術や装備が進んでいるという想定?なのか、作者の登山経験がないせいなのか、今ひとつ登山としてのリアリティには欠ける。

 
 
 
作 品 名
「メイジュの北壁」 (ジョルジュ・ソニエ、1952年)
あらすじ
 ジョゼフ・アンドレアは、メイジュの北壁に挑戦しようとしていた。これまで9人の男たちの挑戦をはねのけ、うち2人の命を奪った絶壁だ。パートナーは英国きっての登山家ランダールとワルターだった。2人と山行を共にしたのは1回しかなかったが、彼らはお互いを信頼しきっていた。
 3人は順調に高度を稼いでいった。主に、アンドレアとランダールがトップに立って1メートル1メートルと勝ち取ってゆき、午後3時にはあと250mで頂上という場所まで辿り着いた。しかし、頂上までの最後の直線コースというところでランダールが滑落し、アンドレアとワルターも巻き込まれた。ランダールは墜死してしまったものの、アンドレアら2人は奇跡的に途中の岩棚で止まっていた。が、2人とも怪我で身動きができなかった。
 アンドレアは麓で待っている妻・ジュヌビエーヴに向けて救難信号を送った。それを見つけた地元のガイドたちが、夜中から救出に向けて準備を始めた。しかし、天候が悪化し始めていた。
感 想 等
( 評価 : B)
 未踏の北壁における遭難救助物語。あたかも本物の山行記を読んでいるかのような登攀シーンは、それだけで迫力がある。しかし本書はノンフィクションではない。
 クライマー・アンドレアを主人公に物語は始まるが、時には自らの危険も顧みずに救出に向かうガイドの立場で、時には愛する夫の身を心配する妻の視点から語られる。遭難者はお互いを気遣い、ガイドは見知らぬ遭難者のために全力を尽くし、妻はガイドに全幅の信頼を寄せる。そうした心の有り様が素晴らしい。古き良きフランスの香り漂う名作である。
山  度
( 山度 : 100% )
 文句なし。山度100%の純山岳小説です。