山岳小説(海外)・詳細データ 〜マ行〜
 
 
 
作 品 名
「ナヴァロンの要塞」 (アリステア・マクリーン、1957年)
あらすじ
 エーゲ海ナヴァロン島。ナチスが支配するその島の巨砲に連合国軍は苦しめられ続けていたが、巨砲は天然の要塞に守られており、空からの攻撃も海からの攻撃も結局失敗に終わっていた。
 ナヴァロン島の北部、ケロス島に残る連合国軍1200名の命が危機にさらされる中、最後に残った切り札として召集されたのが、世界的な登山家キース・マロリー大尉だった。ナヴァロン島南部にある、人を寄せ付けない断崖絶壁を攀じ登って侵入し、砲台を爆破しようというのだ。メンバーに選ばれたのはマロリーの他4名。一流の登山家アンディー・スティーブンズ大尉、天才的な破壊工作員・フケツのミラー伍長、機関士兼電信兵曹のケイシー・ブラウン、そしてマロリーの長年の戦友アンドレアだった。
 1200名の命を救うため、生死を賭した5人の戦いが始まった。
感 想 等
( 評価 : C)
 映画でもお馴染みの「ナヴァロンの要塞」。二次世界大戦を題材にした冒険小説だ。日本語訳の問題もあるのかもしれないが、ストーリー・展開はやや想像を逞しくして行間を読み込まなければいけない部分がある。とはいうものの、次々と襲い来る敵・危機の連続はドキドキものだ。
 山のシーンはあまりないものの、単純に冒険小説として楽しめる。
山  度
( 山度 : 5% )
 冒険小説に付き物の“自然の猛威”という難関は、本作品では最初の断崖絶壁しかなく、山度という意味ではあまり高くない。

 
 
 
作 品 名
「絶壁の死角」 (クリントン・マッキンジー、2002年)
あらすじ
 ワイオミング州の特別捜査官アントニオ・バーンズは、クライミング中に転落死した女性の事件捜査のためにララミーにやってきた。折しも、強姦殺人事件で逮捕されたナップ兄弟の裁判が行われていた。
 バーンズは、18ヶ月前までこの町に住みクライミングを楽しんでいたが、自らのギャング射殺事件をきっかけに町を離れ、クライミングも止めていたのだった。
 女性クライマー、ケイト・ダニングが墜死した時に一緒にいたのは、町の若いクライマーに崇拝されているビリー・ヘラー、そして次期州知事候補である検察官ネイサン・カージの息子で、ビリーの手下のブラッド・カージだった。事件を調べていくうちに、バーンズはあまりにずさんな捜査が行われていることに驚き、背後に政治の力が働いていることに気付いた。さらに捜査を進めると、裁判中のナップ兄弟の事件との繋がりも浮かび上がってきた。
 ところが、真相解明が進むに連れ、バーンズが接触した事件の参考人が、次々と殺され始めた。
感 想 等
( 評価 : D)
 どうにも洋モノは、名前が覚えにくいとか、州ごとの組織が出てきてわかりにくいとかいろいろあって、物語に入り込むまでに時間がかかる。
 それはさておき、ストーリーはどう見たってコイツらが犯人だろうというという感じで、興味はどうやってその犯人を追い詰めるかという、古畑任三郎的な面白さとなる。しかし、その辺のミステリー的な精緻さやトリックなどは今ひとつ。
 では冒険小説的にはどうかというと、政治的に追い詰められるシーンは何度も出てくるが、いわゆる自らの肉体だけで窮地を乗り切っていくという展開は、一部のクライミングシーンくらい。これといったどんでん返しもない。
 全体的にいうと、こんなにページ数をかける必要があるのか、というのが正直な感想。
山  度
( 山度 : 20% )
 作者自身ロッククライミングをやるらしいので、随所にクライミングシーンが出てくるが、あまり盛り上がるという感じがしない。

 

 
作 品 名
「ザイルの三人」 (エドウィン・ミュラー、1932年)
あらすじ
 優れた登山家であるX伯爵は指導者としてはあまり優れているとは言えなかった。幼馴染のマイケルとジェーン、ジェーンの友人キャロラインは、パリで伯爵と知り合いツェルマットへやってきた。キャロラインは一度で山を止めてしまったが、ジェーンは山のスリルを面白がるような種類の女性だった。マイケルは山はこりごりといった感じだったが、ジェーンが行くので渋々付いて行っている感じだった。
 3人は度々山へ登り、そのうちテッシュホルン南壁へ行くことになった。伯爵はマイケルには無理なのでジェーンだけ連れて行くつもりだったが、2人を気にしたマイケルが追いかけて来たために結局3人で登ることになった。難所を苦労して越えていったものの、あと200mというところのスラブで行き詰まってしまった。そこで、伯爵はまず1人で上がり、次にジェーンを引き上げることにした。ところが、途中でジェーンが滑落し・・・。
感 想 等
( 評価 : D)
 上記は「ザイルの三人」のあらすじ。本書は、表題作など13編の海外短編山岳小説を収めた1冊。いずれも時代がかなり古く、実際いつ書かれた作品かわからないものもある。読んでみても時代を感じさせる作品が多く、また短編ということもあって内容的には今ひとつか。特に、「山」(アーヴィン)や「メークトラインの岩場」(ボイル)などは何だかよくわからない。
 そうしたなか、ジェームス・アルマンの書いた「形見のピッケル」と「二人の若いドイツ人」の2作品は際立っている。登攀描写も素晴らしく、文章のテンポも良く、内容もしっかりしている。
山  度
( 山度 : 100% )
 上記は表題作の山度。本作に限らず全般的に山度は高いが、昔の文章ということもあり、読み手を惹きつけるリアリティとか読ませる文章力などには欠けており、山度が高さからといって山を感じられるとは限らない。