山岳小説(海外)・詳細データ 〜カ行〜
 
 
 
作 品 名
「マッターホルンの殺人」 (グリン・カー、1951年)
あらすじ
 仏スポーツ界の英雄で、政治の世界でも大きな力を持ち始めていたレオン・ジャコが、マッターホルン登頂の途中で滑落死した。ジャコと旧知の間柄で、イギリス秘密情報部から彼の政見を聞き出すように依頼されていた、シェイクスピア劇団の俳優兼監督のアバ−クロンビー・リューカーは、ジャコの遺体回収に同行した時に、事故死ではなく殺人だと気付く。警察本部長から協力を依頼されたリューカーは捜査に乗り出す。
 ジャコの妻で、必ずしも良い妻ではなかったと自ら言うデボラ・ジャコ。その双子の兄、ジョン・ウェイヴニー。ジャコの政敵と思われる団体の一員のフレイ。ジャコと不倫しているドゥルサック伯爵婦人とその夫ポル・ドゥ・グルサック。ジャコと同行した山行で友人を死なせたグレイトレックス。ジャコが自分の娘に言い寄ったためにジャコを良く思っていないガイド・タウグワルダー。小説家ブライス。彼に思いを寄せるマーガレットとそのおばベアトリス。
 動機がありアリバイのないタウグワルダーが疑われたが、いつも彼にガイドを頼んでいたリューカーはその人柄を知っていた。犯人は誰なのか。
感 想 等
( 評価 : C )
 トリックはよく練られており、最後の種明かしまでうまく引っぱていく手法はある意味オーソドックスではあるが楽しめる。複雑な人間関係、真実を闇に隠す容疑者の嘘、それらを解きほぐしていく探偵役の活躍が見せ場。
 文中に何度も出てくるシェークスピアの引用と、警察本部長の変な英語の言い間違いは、鬱陶しいだけで何の役にも立たない。イギリス人はこういう会話を楽しむのだろうか。
山  度
( 山度 : 20% )
 マッターホルンの山中、山麓で展開されるドラマ。かつ著者はヒマラヤ遠征や北極探検の経験もある登山家とのこと。


 
作 品 名
「黒い壁の秘密」 (グリン・カー、1952年)
あらすじ
 8月の終わり、俳優兼舞台監督のリューカーは、夫婦でバーカーデイルに旅行に来ていた。2人がホテルに着くや否や、ヴェラ・クランプとテッド・サマセットというカップルが飛び込んできた。ロッククライミングに出かけた友人が昨日から帰ってこないので助けて欲しいというのだ。2人は、ゴールド・ムーアにあるユースホステルに友人と4人で泊まっており、ゲイ・ジョンソンが恋人の男性・レナード・ブライと喧嘩したまま、難壁ブラック・クラッグ(黒い壁)にクライミングに出かけて戻らないというのだ。
 急いで救助に出かけたリューカーらは、リンギ滝の滝壺でジョンソンの遺体を発見した。遺体は、後頭部が無惨に陥没していたものの、それ以外は無傷だった。しかも、同じ場所、同じ死に方で、聖霊降臨節にロバート・ピールという青年が亡くなったばかりだった。2つの事件に関係性は見られなかったが、奇妙な死に方が続いたことから、州警察のサー・ウォルター副本部長は事件について調べることにした。副本部長やグリメット警部の友人だったリューカーは、以前にいくつかの事件解決に協力した実績と、自らもクライマーであることを買われて、事件解明に力を貸すことになった。
 リューカーは、偶然を装ってユースホステルに宿を移した。ユースホステルには、死んだミス・ジョンソンの仲間3人の他に、ヘイミッシュとジャネットのマクレイ兄妹、ジョーンズという中年男性、そして管理人のメイリオンがいた。また、麓にはベン・トゥルービーという羊飼いもいた。リューカーは、ユースホステルで皆の様子を探り、ヘイミッシュと一緒にブラック・クラッグを登り、また検察審問会に参加して、事件の真相を探っていった。
感 想 等
( 評価 : C )
 う〜ん・・・。結構広げた謎を最後にはきっちり回収しているし、謎解決に向けたヒントはそれなりに提供しているし、ラストにはドンデン返しもある。一見、ミステリーの王道通りの出来のようなのだが、散りばめたヒントが小さいので、正解に辿り着ける読者はいないのではないかと思う。
 前半の怪しい状況と、真相との乖離が大き過ぎて、死んだ女性の元婚約者の存在とか、直前に彼氏と喧嘩したとか、そういう設定がわざとらしく見えてきてしまう。ちなみに、本作でもグリン・カー得意のシェイクスピア舞台のセリフが随所で引用されている。英国人にとってどうなのかは分からないが、日本人が読むと全然ピンと来ないし、単に邪魔なだけ。
山  度
( 山度 : 10% )
 事件のキーとして、ブラック・クラッグという難壁が登場し、そこを登攀するシーンも描かれている。山に囲まれた自然豊かな田舎町が舞台だが、山度はさほど高くない。


 
 
作 品 名
「エサウ 封印された神の子」 (フィリップ・カー、1998年)
あらすじ
 登山家ジャックはディディエと共にアンナプルナ保護区のマチャプチャレ登攀中に雪崩に襲われ、運良く彼だけがベルクシュントに捕まり助かった。彼はそこで頭蓋骨の化石を見つけた。無事帰国して、古人類学者であり恋人であるスウィフトに頭蓋骨を渡すと、その化石は類人猿でありながら非常に新しいものだった。スウィフトはそれがイエティの頭蓋骨ではないかと考え、ジャックら仲間を連れてヒマラヤへイエティ捕獲へ出かけた。
 出発前にボイドという地質調査員が自費参加を申し出たが、実は彼はCIAの工作員だった。ジャックらはヒマラヤの悪天候に苦しめられたが、ついにイエティを発見し、その足跡を追ってクレバスの中を進んで行くと、そこには木の茂った森があった。そこがイエティの棲家だったのだ。彼らはイエティの捕獲にも成功し、出産にまで立ち会った。ところが、そのイエティから放射線反応が出た。
 CIAのボイドの目的は、実はヒマラヤ山中に墜落したアメリカのスパイ衛星の残骸探しだったのだが、放射線反応からそれがイエティの棲家にあると気付いたボイドは、破壊工作に出かけた。衛星の残骸を破壊すると放射能に汚染されてイエティが全滅するのは確実だった。スウィフトは破壊工作を阻止すべくボイドの後を追いかけた。
感 想 等
( 評価 : B )
 ミステリーというべきか、冒険小説というべきか微妙な位置付けになるが、話自体は非常に面白く興味深いものに仕上がっている。ただ、人類のルーツを探ると言うSF的な面白みと冒険小説的な面白さの二兎を追ったがゆえに散漫になった部分があるように思われるのが残念。
山  度
( 山度 : 60% )
 いわゆる登山・登攀のシーンは、冒頭のマチャプチャレ登攀などに限られそう多くはないものの、ヒマラヤ山中を舞台に展開されるスペクタクルであり、雰囲気はたっぷり味わえる。

 
 
 
作 品 名
「諜報作戦/D13峰登頂」 (アンドルー・ガーヴ、1969年)
あらすじ
 NATOの新兵器実験中に実験機がソ連のスパイにハイジャックされた。機はソ連上空でパイロットのクレイルにより奪還されたが、ソ連から抜け出す前に追撃されてしまった。秘密兵器を乗せた飛行機は、ソ連とトルコの国境線上にある無名の未踏峰に墜落した。生憎の悪天でヘリは近づけず、ソ連より先に秘密兵器を破壊するためには、困難な岩場を登って行かざるを得ない。たまたまトルコを訪れていた著名な登山家ウィリアム・ロイスは軍隊に乞われ、ブローガン大尉とともにD13峰へと向かった。
 途中2度の墜落を味わいながらも無事2人は飛行機落下地点に到着したが、墜落機は今にも崩れそうな雪庇の上にあった。天候の悪化もあって破壊工作を見合わせていると、翌朝ソ連の工作員3人が登頂し、雪庇に気付かぬ3人のうち2人が雪庇を踏み抜いて転落死してしまった。その時に一緒に落ちた実験機が途中の崖に引っかかっていたことから、ブローガン大尉は飛行機の破壊に向かう。が、爆破時に起きた雪崩に巻き込まれ大尉は死んでしまった。
 無事降りるためには協力せざるを得ないと考えたロイスは、生き残ったソ連の工作員で女流登山家のヴァーリャを説得して一緒に降りることにした。
感 想 等
( 評価 : C )
 重大な秘密を握った飛行機の高山墜落、ヘリで向かおうにも天候が悪く人間が登って行かざるを得ない状況、同じ目的の敵対国の存在。山岳冒険小説の舞台は十二分に揃っている。かつ、登攀シーンなどそれなりの見せ場もあるものの、格別に盛りあがっている印象を受けないのは描写力の問題か。
山  度
( 山度 : 60% )

 
 
 
作 品 名
「無慈悲な空」 (アーサー・C・クラーク、1966年)
あらすじ
 時は21世紀(本作品が書かれたのは1966年)。エベレストの標高一万八千フィート地点にホテルもでき、毎年数千人がそのホテルを訪れた。さらにその4分の1が山頂を極めていた。
 天才的科学者であるエルウィン博士とハーパーは、このホテルに滞在していた。エルウィン教授は生まれついての不具者だったが、今回は彼が発明したレヴィテイターという空中浮遊機の試作機を密かに持ち込み、その実験を行っていたのだ。
 2人はレヴィテイターを使うことにより難なくエベレストを征服したが、下山途中に突風に見舞われ、空中へと放り出されてしまった。レヴィテイターの緊急浮上により落下はまぬがれたものの、問題は下降・着陸にあった。
感 想 等
( 評価 : C )
 「2001年宇宙の旅」を書いたアーサー・C・クラークによる短編集。本作品が書かれた1966年といえば、科学的には月への宇宙船着陸などが実験されていた時代である。そう考えると、着想自体は荒唐無稽と言うほどではないのかもしれない。むしろ、酸素ボンベの替わりに分子フィルターなるものが登場している方が興味深い。むろん、それとても理論上は可能として、昔から研究されているものなのであろうが。
 そうしたSFとしてのおもしろさはさすが第一人者。加えて、ストーリーの方も短編ながらよくできている。
山  度
( 山度 : 50% )
 「山」という観点から見ると、単なるSFの舞台としてエベレストを登場させただけではなく、それなりの知識・調査に基づいて描かれている感じがする。

 
 
 
作 品 名
「大岩壁」 (ハインリッヒ・クリーア、1958年)
あらすじ
 ハンスとヘラはお互い愛し合っていたが、いつもすれ違ってばかりだった。その日もそうだった。ヘラは朝からハンスの電話を待っていたが、ハンスは山へ出掛けていた。ハンスは、山から降りたらヘラに結婚を申し込もうと思っていたが、ヘラはハンスを待ちわびて、ヘラに想いを寄せていたオットーの誘いに乗って映画を見に行ってしまったのだった。
 そんなハンスの元に、親友のベネディクトがやって来た。一緒にマッターホルン北壁をやろうというのだ。ヘラのことが気になったが、ハンスは2つ返事でOKした。ベネディクトは農家の息子で、ハンスは洋品店の跡取りだったが、2人とも家業に興味がなく、父親からは文句を言われてばかりだった。それでも2人は山をやめられなかった。
 ツェルマットに来たハンスとベネディクトは、アメリカから来たというパットという娘に出会った。パットはデザイナーとして成功し、その褒美としてもらったお金でヨーロッパに来ていたのだった。手始めにツィナールロートホルン東壁を登攀したハンスとベネディクトは、マッターホルン北壁第6登に向けて出発した。
感 想 等
( 評価 : C )
 山のシーンはなかなかいいし、途中まではなかなか盛り上がったのだが、読後感が今ひとつだ。海外作品なので一概には言えないのであろうが、親子間の問題や職業観というものを考えるには、時代背景や国柄への理解も必要なのかもしれない。
 また、いろいろな登場人物が無駄に登場しすぎる。折角、背景まで語ったパットは何のために登場しているのか、ベネディクトの妹ユリアは要るのか、などなど。冒頭と最後にわたしが出てきて、昔話のように展開させる意味もよくわからない。
山  度
( 山度 : 70% )
 マッターホルン北壁登攀シーンが描かれており、山度も結構高い。

 
 
 
作 品 名
「マッターホルンの十字架」 (シャルル・ゴス、1919年)
あらすじ
 密輸入者ジャン・ジョセフは、氷河を横切っている時に突然税関吏に銃で撃たれて死んだ。国境の番人である税関吏は密輸入者から嫌われており、誰かが復讐するのではないかと思われたが、税関吏ロマンは正当防衛だと主張し、皆にそれを信じさせることに成功した。
 ジョセフの復讐に立つと見られていた仲間アントアンヌとダニエルは、復讐を断念したのか、ロマンに篭絡され、3人はすっかり仲良くなってしまった。
 そんな9月のある日、アントアンヌとダニエルは、ロマンをマッターホルン登山に誘った。3人は途中で偶然出会ったアンジュを加えて、4人のパーティでマッターホルンに登った。無事登頂した4人は山頂で酒を酌み交わした。音に聞こえたマッターホルンを征服したロマンは有頂天になって、ジョセフを撃ったのが正当防衛ではなかったことをばらしてしまった。
 ところが、一緒にいたアンジュはジョセフの息子だった。真相を聞いたアンジュ、アントアンヌ、ダニエルの3人は…。
感 想 等
( 評価 : C )
 ヨーロッパアルプスを舞台に、山岳ガイドや密輸入者、登山家などを描く短編集。今一つテーマというか、筆者の主張がよくわからないという部分はあるものの、古き時代のヨーロッパのあり様、登山の様子などがわかっておもしろい。
 本書は1919年に書かれた年代物。邦訳版は1956年出版。
山  度
( 山度 : 40% )
 山岳ガイドの出てくる山岳小説というのは、いかにも近世ヨーロッパらしい香りがする。当時の小説全般にそうだが、登攀シーンなどをあまり克明に描写したりしないのは残念。
 
 
 
 
作 品 名
「夢でも会えたら」 (ルーシ―・ゴードン、2010年)
あらすじ
 マンディ・ジェンキンズは、モンブラン登山ツアーでシャモニに来ていた。ツアーガイドのレンゾ・ルフィー二とマンディは最悪の出会い方をし、何かというとケンカばかりしていたが、お互いどこか惹かれるものを感じていた。ツアーメンバーの中には、わがままで自分勝手なヘンリーという青年もいたが、ツアーは総じて順調で、一行は山小屋に泊まりながら着実に高度を稼いでいった。しかし、数日目の晩に雪が降り始め、レンゾは登頂を諦めて引き返すことを決めた。 ところが翌朝、ヘンリーが単独で山頂に向かったことが判明し、彼を連れ戻しに行くというレンゾと一緒に、マンディとジョーン、ピーターが上へと向かった。午後になってようやくヘンリーに追い付いた時に雪崩が発生し、全員が巻き込まれてしまった。
 マンディとレンゾは辛うじて難を逃れ、近くの山小屋に避難したものの、その山小屋は地滑りで壊れかけ、崖の際に立つ山小屋だった。2人は小屋に残されていたわずかな食糧で食いつないで救助を待った。その間、明日の命も知れない状態で2人だけで過ごすうちに、彼らはお互いの気持ちを確かめ、永遠の愛を誓った。レンゾは、救助のヘリコプターを見逃さないように、時々、崖にせり出した窓際から外を見ていたが、ある時、彼の足下の下の床が抜け、レンゾは奈落の底へと落ちて行った。
 それから2年。マンディは失意の中、レンゾの忘れ形見であるダニーを産み、育てていた。そんな時、新聞記事で実はレンゾが生きていたことを知り、彼に会いにミラノまでやってきた。しかしレンゾは、事故の影響で身体を悪くしていたばかりか、自己のショックで当時の記憶を失い、猜疑心の強い男になっていた。マンディは、レンゾに当時を思い出してもらおうと彼に近づいた・・・。
感 想 等
( 評価 : C )
 ある意味、ハーレークインらしいということかもしれないが、まるで少女マンガのような甘い恋愛物語で、実際マンガ化もされている。
 内容的には、女性が読んだらどう感じるのかわからないが、正直、この男性のどこに魅かれたのか分からない。再会したあとのレンゾに至っては単なる嫌なやつで、こんな男とまた付き合ったところで、とてもこれから幸せに暮らしていけるとは思えないという人物の造詣。甘ったるい恋愛物語が好きな人は読んでも良いと思うが、個人的にはあまりお勧めできない。
山  度
( 山度 : 10% )
 登山描写は前半に集中しており、2年後の話に移ってからは山の話はほぼない。全体を通して見ると10%程度だろうか。モンブラン登山の話だが、モンブランを特定させるような内容・描写はなく(むしろ、モンブランを登るのにこんなに何泊も山小屋に泊まる必要があるのか疑問)、作者の山の知識もやや怪しい。
 
 
 
 
作 品 名
「帰れない山」 (パオロ・コニェッティ、2018年)
あらすじ
 山登りを愛する頑固で気難しい父と、社交的で世話好きな母。ミラノに住む僕たち家族は、夏の間、山の近くにあるグラーナ村に家を借りて過ごしていた。父は近くの山に登り、母は村人と仲良くなって世話を焼き、僕は沢を探検した。僕は大家さんの甥で同い年のブルーノと仲良くなり、毎日のように一緒に遊んだ。1984年、僕が11歳の時に父に連れられてモンテ・ローザに登って以来、父と僕は、毎年一座ずつ4000m峰を制覇した。時にはブルーノも一緒だった。しかし、16歳の時、僕は父に反抗して一緒に登山に行くのを辞め、やがてブルーノともしばらく会わなくなった。
 2004年に父が亡くなった時、僕は独身の売れないドキュメンタリー作家で、大学を中退して家を出て以来、父とは会っていなかった。僕が家を出た後も、父や母と会っていたというブルーノに案内され、父がグラーナ村に買ったという土地へ行くと、そこは湖が眼前に広がる山の上だった。そこに家を建てるのが父の夢だったと聞いた僕は、石積職人になっていたブルーノと一緒にひと夏かけて手造りの家を作った。山の家は僕にとって生活の中心になり、トリノの友人やブルーノが始終やって来るようになった。ブルーノは、叔父の高原牧場を買い取って改築する計画を立てていた。
 2007年、付き合って2か月の恋人ラーラを山の家に連れて行ったものの、僕らの関係はもう終わりを迎えていた。ブルーノはラーラに魅了され、ラーラは高原牧場での生活に憧れていたようだった。ちょうどネパールでの仕事が入っていた僕はその後しばらくイタリアを離れたが、戻った頃にはラーラはブルーノの高原牧場で働くようになっていた。2人の間にアニータが生まれた時、僕はイタリアにいなかったが、2010年、久しぶりに帰国し、友とラーラ、1歳になったアニータのいる高原牧場を訪れた。しかし牧場の経営は厳しく、ブルーノとラーラの間には亀裂が入り始めていた。そして2013年、ブルーノが破産宣告を受け、ラーラがアニータを連れて実家に帰ったことを知った僕は、帰国しブルーノに会いに行った。
感 想 等
( 評価 : C )
 11歳の時に両親と一緒に過ごした山麓の村で知り合い、親友になったピエトロとブルーノ。それから30年近くに及ぶ、つかず離れずの2人の友情を描く物語。登場人物が極めて限られており、会話も少ない分、主人公ピエトロの独白調に話が進むが、不思議と退屈という感じはしない。
 舞台は現代のイタリアなのだが、読んでいると100年くらい前の物語のように感じるのはなぜなのだろう。場所が田舎だからというのも大きいが、やはり親子関係や友情など普遍的なテーマを描いているからだろう。とはいえ、個人的な感想で言えば、ピエトロとブルーノの友情については羨ましく思うものの、父親への思いは自分にはしっくりこなかった。
 本作はイタリアで大ヒット、賞を受賞、映画化も決まり、世界40ヶ国近くで翻訳されたというが、正直淡々としていてさほど感動はなかった。
山  度
( 山度 : 30% )
 主人公ピエトロと父のモンテ・ローザ登山、地元の子供とのクライミング、ブルーノとの登山シーンなどが出てくるが、舞台としての山という印象の方が強い。