山岳小説(海外)・詳細データ 〜ハ行〜
 
 
 
作 品 名
「高い砦」 (デズモンド・バグリイ、1965年)
あらすじ
 南米の航空会社AAの臨時便が共産主義者の副機長・グリバスにハイジャックされた。グリバスの命令でアンデス山中の廃鉱に強制着陸し、その時の衝撃で乗客のカウリン夫妻とグリバスが死んだ。グリバスの狙いは、コルディヤラ国の軍事政権を倒すために帰国した元大統領アギヤルを殺すことだった。
 機長のオハラ、アギヤル、アギヤルの姪・ベネデッタら10名はアンデスの高地から脱出するために下山を開始した。高山病に苦しめられながら下山した一行は、壊れた橋の所で立ち往生していた共産主義の軍隊に出くわしてしまった。ライフルで射撃してくる敵に対して、オハラらの武器は、アギヤルのボディーガードであるローデの持っていた拳銃、中世歴史学者アームストロングのアイディアで作った石弓と投石器しかなく、形勢不利は否めなかった。
 救援を求めるため、ローデとフォレスターらがアンデスの山越えを敢行することとなった。高山病、氷雪や寒さといった自然の猛威と闘いながら山越えを目指す2人。救援隊を待ちながら、壊れた橋を挟んで闘い続けるオハラやベネデッタ・・・。
感 想 等
( 評価 : A )
 30年以上も前に書かれたとは思えないほど、新鮮で迫力のあるストーリー。厳しい自然との闘い、共産主義者たちとのかけひき、…。山の描写はそう多くはないものの、迫力は満点だ。また、生い立ちや思想まで含めて、人物描写のうまさも光っている。
 余談ではあるが、プレステのゲーム「アコンカグア」は、この小説をベースに作られたのではなかろうか。
山  度
( 山度 : 20% )
 アンデスの高地ゆえに苦しめられる高山病に関する描写はリアル。ローデとフォレスターによるアンデスの山越えシーンもいい。山はおまけに過ぎないが、それを抜きにしても読み応えのある作品と言えよう。

 
 
 
作 品 名
「ジャラナスの顔」 (ロナルド・ハーディ、1973年)
あらすじ
 英国軍人で登山家としても有名なリチャード・ファラン大尉は、ペトリー准将の命令でインドの雪上・山岳戦研修所に行くことになった。そこではアメリカやドイツ、ベルギーなどNATO諸国から集められた精鋭が訓練を受けていた。
 ファランは登山家6人を集めたチームのリーダーに任命された。耐久スキーや重荷を背負っての岩壁登攀などの訓練を終えた彼らに下された命令は死を賭した冒険だった。
 側壁が人の顔に見え、見る者の心次第でその顔が変化して見えるという山・ジャラナス。国境を越えてジャラナスに登攀、水爆をしかけて、その爆破でジャラナスの顔を崩落させる。崩落によって下にあるジャラナス湖をあふれさせ、下流の中国原子力研究施設のある町、スー・トカイを水没させることが彼からの使命だった。待ち受けるのは、カラコルムの厳しいと中国国境警備隊。過酷な条件のなか、6人は決死の覚悟で出発した。
感 想 等
( 評価 : B )
 前半は全体の展開が見えないこともあり、やや冗長との感があった。しかし、後半で一行がジャラナスに向かってからは、いかにも冒険小説らしいスリリングな展開で読む者を飽きさせない。ラストもなかなかで、個人的にはとても好みのエンディングだ。
 ファランの回想シーンにより描かれるメンバーのキャクター描写は秀逸。
山  度
( 山度 : 80% )
 インド雪上山岳戦研修所でのスキー練習、登攀訓練。カラコルムの自然との対峙、アイスクライミング、・・・。神々の山を舞台にした冒険小説は、山岳小説としても読み応え満点。

 
 
 
作 品 名
「死の渦」 (デイヴィッド・ハリス、1995年)
あらすじ
 アメリカとカナダ国境付近の山を登攀中のゴードンとアレクスは、小型飛行機が墜落するのを目撃した。2人が墜落現場に向かってみると、パイロットは死んでいたが、マシスンという男がまだ生きていた。飛行機はコカイン15kgを密輸するところで、ゴードンの提案で2人はマシスンを助け、コカインを担いで山越えすることで、5万ドルの報酬を受け取った。
 2人はその金を持ってヨセミテへ向かい、クライミング三昧で過ごした。アレクスにはリンダという恋人もできた。ところがそこへ、マシスンの手下でカールという男が金を狙って現れ、ゴードンが殺されてしまった。おまけに、アレクスは警察に目をつけられてしまうこととなった。
 最後に大取引をして海外へ逃げる予定のマシスンは、再度アレクスに運び屋を依頼する。いやいや引き受けたアレクスは恋人のリンダとともに安全に逃げ延びる算段をして山へ向かったが・・・。
感 想 等
( 評価 : B)
 1980年代に実際に起きた事件をヒントに書かれた作品で、同じ事件をテーマに書かれた「復讐渓谷」(ジェフ・ロング)よりも本作品の方が出来が良い。
 リアルなクライミング描写ととスリリングなストーリー展開は十分楽しめるが、終わり方がちょっと中途半端な点がと気になる。
山  度
( 山度 : 30% )
 所々に出てくるクライミングシーンは、ストーリーからするとが実はちょっとおまけという感じがしないでもないが、実際のクライマーの筆からなるだけあってなかなかリアルで読み応えがある。
 
 
 
 
作 品 名
「汝、鉤十字を背負いて頂を奪え」 (ハリー・ファージング、2018年)
あらすじ
(注:詳しめのあらすじです)
 2009年5月、ニール・クインはノー・ホライゾンズ社のツアーガイドとして16才のネルソン・テイト・ジュニアをエベレスト山頂まで連れていったものの、落石のアクシデントによりセカンドステップでジュニアは死亡。クイーンも死にかけたところを、シェルパのダワとペンバに助けられた。
 1938年、ドイツ第99山岳猟兵部隊のヨーゼフ・ベッカーは、同じ部隊所属で登山仲間のギュンター、クルトとともに、ユダヤ人に国境の山越えをさせてスイスに逃がし、帰りに密輸品を運び込んでは小遣い稼ぎをしていた。しかし、10月のとある夜、幼いイルザら9人のユダヤ人を運ぶ途中にヒムラー率いるドイツ軍親衛隊に見つかり、捕まってしまった。死を覚悟した3人は知らないうちにオーディションを受けさせられ、それに受かったヨーゼフただ一人が生き残った。
 辛うじて生きて帰ったクインを、重い現実が待っていた。ジュニアの父親は大富豪で、登山に成功した暁には莫大な報奨金が支払われることになっていた。その金で会社を立て直そうとしていたノー・ホライゾンズ社のサロンは、クインに対して怒り狂っていた。サロンが雇ったならず者に襲われて、ダワは瀕死の重傷、クインも怪我を負わされてシャモニへと逃げた。
 ヨーゼフは、親衛隊から驚愕のミッションを言い渡された。それは、未踏峰のエベレストに登頂し、イギリスの鼻をあかすというものだった。母と姉妹を人質に取られたヨーゼフに断るすべはなかったが、ヨーゼフ自身エベレストに登ってみたいという誘惑を否定できなかった。その日から、エベレストに向けた過酷な訓練が始まった。
 クインは、セカンドステップで偶然古いピッケルを拾っていた。そのピッケルには、なぜか鉤十字のマークが付いていた。その意味を調べ始めたクインは、戦前にナチス・ドイツがエベレストに挑戦し、登頂したかもしれない可能性に気付いた。その事実解明に向け、様々な思惑を持った人たちが動き始めた。一攫千金を目論むサロン、ドイツ人骨董品商のグラフ、エベレストの専門家でイギリス人女性のヘンリエッタ・リチャーズ、極右思想を復活させようとネオナチの地下組織支援などを行っている大富豪ステファン・フォルメール…。
 ヨーゼフは、地質と動物相の調査のためシッキムに向かうシュミット教授の遠征隊に紛れこんでチベットを目指した。その途中の船上でユダヤ人のマクタと恋に落ちたヨーゼフは、家族とマクタのためにも、エベレストに登頂して、山で死ぬ覚悟を決めていた。
 2010年、クインはナチス・ドイツの痕跡を求めて、エベレストに戻ってきた。そして、クインへの復讐と大金を狙って、サロンらも後を追ってきた。1939年、ヨーゼフはイギリス嫌いのシェルパ、アング・ノルと2人でエベレスト山頂を目指す。一方、遠征隊の監視役として同行していたイギリス軍のマクファーレン中尉は、ナチスの陰謀に気付き、ヨーゼフの後を追った。
感 想 等
( 評価 : A )
 現在と戦前を行き来しながら、絶妙に交錯した2つの物語が同時進行的に語られていく。冒険小説的様子を盛り込みつつ、徐々に真実を明らかにしていくミステリータッチの展開もうまい。
 正直に言えば、洋書ということもあり登場人物の多さとそれぞれの背景の複雑さにちょっと付いて行けてない部分もあったし、特に現在の部分に関してはここまで細かく描かなくても良いんじゃないかとも思った。それでも、読後の感動と爽やかさは素晴らしい。それは、本作に込められた主題の崇高さと、意外な結末の上手さ、発想の面白さがゆえだろう。「北壁の死闘」(ボブ・ラングレー)と並ぶ、海外山岳小説の名作と言っても過言ではない。登山好きにも、ミステリー好きにもお勧めしたい一冊。
 なお、日本語のタイトルは微妙。内容を伝えて興味を惹きたいとの意図はよく分かるが、読み終えてみると、原題の“SUMMIT”(登頂)の方がしっくりくる。
山  度
( 山度 : 70% )
 舞台はもちろんエベレスト。登山シーンのほか、戦前のキャラヤバンの場面や建物のクライミングシーンなどもある。作者自身、かつてエベレストを目指した登山家だったようで、登山史にも詳しい。登山シーン以外にも、山に係る描写は多い。

 
 
 
作 品 名
「死の雪山サバイバル」 (フィリップ・フィンチ、1987年)
あらすじ
 私とトラビス、ホレンベックの3人はコンピュータ会社に勤める同僚だったが、ある日社長に誘われて、雪山登山のサバイバル訓練に参加することになった。噂では、新設される部署の重要なポストを、その訓練の中で決めようとしているとのことだった。
 我々3人と社長のポーグ、ガイドのギャリーとアンドリア、麻薬常習犯で判事から訓練参加を言われた17歳の少年ドニー、優秀だが内気なチャールズ、亭主と別居中で妹に勧められて参加したエラナーの9人は、ベアツース連山へと出かけた。
 訓練はきつく過酷で、ポーグが体調を崩しアンドリアに連れられて途中で帰った。私達3人もそこで止めるが可能だったが、意地の張り合いから続行することとなった。そして、岩場でギャリーが転落死してからさらなる試練が始まった。
 残された6人は折悪しく降り始めた雪に閉じ込められてしまった。単独で帰路を探しに行って、雪崩に巻き込まれたトラビス、生水を飲んで動けなくなったドニー…、ドニーを看病すると言ってテントから動かないエラナー、決死の脱出を図るホレンベック、チャールズ、私の3人・・・。
感 想 等
( 評価 : D )
 主人公に魅力がない小説、主人公を好きになれない小説、主人公の気持ちにに共感できない小説、そんものが読んでいて面白いわけがないというのが正直な感想。解説によると、作者は主人公をダメ人間の典型として描いたと言う。その意味で作者の腕は確かだ。でもその試みは大失敗に終わったと言えるだろう。
山  度
( 山度 : 80% )
 雪山でのサバイバル訓練、登攀、遭難、雪崩・・・。舞台はずっと山。確かに山岳小説だ。ただ何か違う。どうも山への愛情が感じられない。気のせいだろうか。


 
 
作 品 名
「氷雪のゼルヴォス」 (コリン・フォーブス、1970年)
あらすじ
 英国スパイ、イアン・マコーマーは、ドイツ人に扮しハンガリーやトルコで破壊活動を行っていたが、正体がばれそうになりギリシャ経由で帰国するところだった。マコーマーはイスタンブールからゼルヴォスへ向かう連絡船に乗るが、船がドイツ軍に乗っ取られた。マコーマーはドイツ情報部のディートリッヒに扮して危機を乗り切り、船は嵐の間隙をついてカティーラに到着した。
 マコーマーは捕虜となっていた英国兵士のプレンティス、フォードを助け、ギリシャ人のグラポスとともにゼルヴォス山へ向かった。ゼルヴォスは連合軍の補給路が見渡せる場所で、そこにある修道院をドイツ軍に押さえられたら、連合軍は大打撃を蒙ってしまうのだ。
 セルヴォスを巡るマコーマーらとドイツ軍の争いが始まった・・・。
感 想 等
( 評価 : C )
 まず申し上げておくならば、本作は山岳小説ではない。山が出てくる冒険小説として「北壁の死闘」のあとがきでも紹介されているので取り上げたが、山が舞台というだけで、山岳小説とは言わないのだろう。
 「ゼルヴォス」というのは架空の地名らしいが、その名前を小説のタイトルにも使ってしまうのはいかがなものか。小説自体もまぁそこそこという程度で、どうも描写が細かすぎるのか、今ひとつ想像がついていかない部分が多い。
山  度
( 山度 : 5% )
山が舞台だが、登山シーンはない。

 

 
 
作 品 名
「復讐の山河」 (クリストファー・フランクリン、1990年)
あらすじ
 コロラド州キューポラ盆地にダムを建設する計画があり、自然保護団体のメンバーであるベスとラウリー親子は、建設工事を妨害するために盆地で木にスパイクを打ち込んでいた。そこで、連邦議会出馬を目指すレイモンド・クエラーとジョゼフ・ウェアらに出会い、ラウリー親子が殺された。何がなんだかわからないベスはひたすら逃げ出し、危ういところを登山家エステバン・サンチアゴ(スティーブン・ジェームズ)に救われ、2人はキューポラにある洞窟に逃げ込んだ。
 クエラーらは埋蔵された金貨を探していた。その金貨はエステバンの祖父らが埋めたもので、祖父や彼の家族は、クエラーらによって殺されたのだった。その復讐の思いで、エステバンはこれまで生きてきており、チャーリー・ペリケーンなど一味の何人かを既に殺していた。
 ベスを助けたことによって逆に追い詰められたエステバンは、深夜、豪雨の中キューポラを登攀して脱出するが、ウェアに読まれて捕まってしまう。
感 想 等
( 評価 : C )
 とりあえず、良い点は前半の登攀シーンの迫力とラストにかけての迫真の展開。ハッピーなエンディング。これらは評価できる。一方で、結局はたんなる復讐物語で、長いわりには中身が薄いこと、フラッシュバックを多用しているせいか(?)状況がわかりにくいこと、残虐なシーンが多過ぎることなど不満な点もかなりある。
 冒頭に作者注として、「二つの文化と二つの言語の物語」とあるが、日本人だからか米国とメキシコという対比の話も、今ひとつピンとこない。
山  度
( 山度 : 10% )
 著者は登山家とのこと。上述の通り前半の登攀シーンは迫力満点。

 
 
 
作 品 名
「危険なザイル・パートナー」 (エチエヌ・ブリュル、1977年)
あらすじ
 外国生活から帰国し、久しぶりにアルプスの岩壁へ向かう途中の電車の中で、私はダニエル・クチュールに出会った。私は忘れていだが、以前ザイルを組んだことがあったようで、彼はその時のことや私の山仲間のことを話してきた。シャモニに着いて10日ほど過ぎたある日、翌日のベルト山群登攀の買い出しをしている時に、クチュールと再会した。クチュールは私の話を聞いて同行したそうな顔をしていたが、ブリュやジルベール兄弟を一緒に行く予定だったので、勝手に誘うのはまずいと思っていた。しかし、クチュールが明日日本人とモンブランに行く予定があると聞いて、私は「一緒に来たらどうかと思っていたんだが・・・」と残念そうな顔をした。
 その晩、仲間5人とシャルプアの小屋にいると、クチュールがやってきた。日本人がモンブラン行きを延期してきたというのだ。そこで私は、ザイルパーティを組み直すことにした。ところが、突然ジルベール兄弟がベルトではなく、サン・ノンに行くと言い出した。さらに翌朝登り始めると、リュシエヌが体調が悪いから止めると言い、ブリュが付き添って降りてしまった。6人のパーティは、とうとう私とクチュールだけになってしまった。そのクチュールさえもが、過去の登攀で仲間が死んだ時の話をして、怖気付いているようだった。私は仕方なく降りることにした。
 シャモニに戻った私は、仲間から意外な事実を聞かされた。次々とパートナーを死なせたクチュールは、「危険なザイルパートナー」と呼ばれ、誰もザイルを組みたがらないというのだ。それで皆の行動に合点がいった。しかしよく聞いて見ると、クチュールがマッターホルンのツムット稜にいた時に、イタリア稜にいたイタリア人の死までクチュールのせいにされていた。私は皆の話を聞いてイライラし、クチュールと2人で登る決心をした。クチュールに会ってみると、先日怖気づいたように見えたのは、私が噂について知っているかどうかを確かめたかったからだったのだそうだ。私はクチュールを説き伏せ、明日登攀する約束をした。(表題作のあらすじ)
感 想 等
( 評価 : B )
 表題を始め、6編の短編が収められているが、どれもハズレはない。エチエヌ・ブリュレはアルプスでの初登攀なども持つアルピニストだそうだが、登攀シーンそのものよりも登場人物の心理描写の巧さが光る。クライマーたちの、純粋でありながらどこか自分勝手なところのある微妙な心情、機微がうまく描かれている。フランス版新田次郎といったところか。残念ながら、アイロニカルな感じの結末が多く、爽やかな読後感とは言いがたいが、思わず感心させられてしまう。『ラ・メイジュ遭難事件』などの長編作品もあるそうだが、邦訳は未刊の模様。是非読んでみたいものだ。
 翻訳本の出版は1977年だが、書かれたのは1950年頃の模様。表題作のほかに、「空中ケーブルカー始末記」「ザイルの両はじ」「イギリス人のバリエーション・ルート」「黒い矢」「あるめぐりあい」の計作品を収録。
山  度
( 山度 : 100% )
 作者は、モンブラン山群モアヌ針峰南陵の初登攀記録などを持つアルピニストだそう。山度たっぷりの名作短編集です。

 
 
 
作 品 名
「白い季節」 (ジルベール・プルートオ、1950年)
あらすじ
 フランス、モンブラン山群の麓で開催されていたスキージャンプ大会の見物に来た僕は、そこでかつて体育専門学校で一緒だったロランスと再会した。ローランスは、かつて数々の大会で優勝するほどのスキー選手だったが、ブラジル人の作家フランシスコと突然結婚して、スキーを辞めてブラジルへと行ってしまったのだった。その後、ローランスが離婚したことは聞いていたが、その理由は定かではなかった。
 スキー大会で負傷したジェルマンの見舞いにローランスと出かけた僕は、2人の会話を聞きながらローランスという女性の不思議な魅力について考えていた。僕はブラジルにいる知り合いで作家のドミニク・ブラーガから、フランシスコの「白い季節」という小説を送ってもらい、それを読んでローランスの結婚生活がどんなものだったかを悟った。
 そして僕はローランスと2人でソーの山小屋まで出かけることになり、遭難しそうになりながら避難小屋へとに辿り着いた。
感 想 等
( 評価 : D )
 ローランスという1人の魅力的な女性を巡る物語、なのだがなんだかよくわからない。この小説は何が言いたいのだろう?もやもやしているうちに終わってしまったというのが正直なところ。
山  度
( 山度 : 20% )
 山に関する話としては、ジェルマンが語るザイル事件や遭難話、ローランスとの雪山行など所々に出てくる。

 
 
 
作 品 名
「ガイドの星」 (ギー・ベルザック、1958年)
あらすじ
 少年の父はガイドだった。しかし、未踏のグランド・ファース(大岩壁)を登ろうとして死んだ。村人は岩から手を離したからだと言うが、少年は信じていなかった。少年の名はジェロームと言った。
 ある日、ジェロームが山の方へ散歩に出かけると、グランド・ファースに登るという老人と出会った。ジェロームは老人に父の話をして、一緒にグランド・ファースを登ってくれるよう頼んだ。2人は翌春一緒にグランド・ファースに登る約束をし、老人は山麓の小屋に住みついた。
 翌春、2人が山へ行く前に、イタリア人とオーストリア人がグランド・ファースをやりに村にやって来た。それをいち早く知った2人は、ザイルを結んで岩壁へと向かった。ジェロームの岩登りは老人が考えるよりもずっと達者だった。2人は快調に高度を稼いでいった。
 ずっと老人がトップで登って来たが、核心のオーバーハングで老人はジェロームにトップを任せた。ピトンを打ち込む場所もない岩だった。ジェロームは両手、両足、肘、手の平、指その全てを使って岩にはりつき、そしてついに登り切った。岩壁はもう手中にしたかに思えたが・・・。
感 想 等
( 評価 : C )
 フランスのガイド小説の流れを汲む王道山岳小説。物語の背景をもう少し描き込んでもいいとは思うし、前半は物足りない。しかし、登攀シーンが始まってからは秀逸だ。さすが現役登山家の作品。読み応えがある。
 本筋ではないが、少年の口調がやや気になる。これは翻訳のせいなのか、元々のトーンなのか・・・。
山  度
( 山度 : 70% )
 架空ながら未踏の大岩壁を登るという話で、登攀シーンの緊迫感は読ませるものがある。

 
 
 
作 品 名
「冬山の追撃」 (デイヴィッド・ポイヤー、1988年)
あらすじ
 狩猟を嫌い、銃など手にしたことのない17歳の少年アーロン・マイケルソンが、ヘムロック郡の雪深い森の中で猟銃で撃たれて死体で発見された。狩猟監督官ラルフ・スウィートは事故として簡単に片付けてしまった。
 アーロンの父親で大学教授のポール・マイケルソンは、息子の死因を確かめるためにヘムロック郡まで来た。しかし、スウィートのいい加減な対応に腹を立てたマイケルソンは、ハンター全員に対して怒りを覚え、狩猟を根絶やしにするためにハンター殺しを始めた。
 スウィートの祖父でアーロンの死体の第一発見者、かつては名ハンターとしてならしたハルヴァーセンは、連続殺人事件の発生場所からマイケルソンが犯人であることを見抜いた。山奥深くへと逃げ脱出を図るマイケルソン、追いかけるハルヴァーセン。山を熟知し追跡にも手馴れたハルヴァーセンは、次第にマイケルソンを追い詰めるが、銃弾を無くしてしまい逆に追われる立場になってしまった。
感 想 等
( 評価 : D )
 山岳小説というより、アドベンチャー、サバイバルと言った感じ。雪山での死闘は凄まじいが、今ひとつマイケルソンのあまりに短絡的な行動が、読み手の同調・同情を引かないため、物語に入りこめない。冬山の描写やサバイバル術的な部分についても、もっと深みが欲しい。舞台はずっと人里離れた雪山の奥地だが、今いち自然の猛威とか、厳しさというものが描ききれていない。全体的に今ひとつか。
山  度
( 山度 : 30% )