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菊地敏之 クライミングスクール&ガイド

Hot Rocks 2011
クライミング&etc 私的レポート

Hot Rocks 
クライミング&etc 私的レポート

Toshiyuki Kikuchi Climbing School& Guide


2011年1月10日

 あらもう10日? 成人式? なんだそりゃ?
 って感じの日々が、ますます加速しつつ足早に過ぎ去っていく初春ですが、皆さんいかがお過ごし?

 というわけで、この暮れから正月は、幕岩、城山、城ヶ崎、鷲頭を、1日ほとんど1人ずつ(トホホ)のお客さんお連れしながら、ぐるぐると回ってきました。
 しかしその間、タカをよく見たなあ、今年は。
 幕岩にノスリが出没することは前にも書いたけど、城ヶ崎のシーサイドにも、こいつはいますね。3日だったかなあ、サンライズで講習してたらジョーズアップの上あたりからでっかいのが飛び立って、かなりな低空飛行でみんなのいる磯の上をかすめて行きました。でも気づいた人いたかなあ。トンビが飛んできたくらいにしか思わなかったんじゃないかな、ほとんどの人は。

 そのノスリ、鷲頭にもいました。ちょうど岩場の真上を、つがい(?)で舞っていました。このタカは、ほんと岩場のそばに多いです。下から見ると白くてデブだから、すぐわかると思います。
 城山ではいつも通り、ハヤブサが、ちょろっ、ちょろっと姿を見せてました。壁を登っていてこいつが現れると、おっ、いたなあ、って感じで、なんか嬉しくなるよね。瑞牆でもそうだけど。

 で、昨日、城ヶ崎のなみだちに行ったら、こいつがきわめつけ。ジャストタイミングでミサゴがでっかい魚捕まえて海から飛んでくるのに遭遇して、感激してしまいました。
 しかも面白かったのは、この鳥、いつも断崖の枯れ木の上なんかで落ち着いてその魚を食うそうなんだけど、この時は魚を、モズの早にえみたく、枝に刺してキープしつつ食ってたんだよね。モズも人によっちゃあ猛禽の仲間に入れるくらいだから、こうした習慣が受け継がれているのかな? なんていたく感動してしまいました。
 ちなみにこのミサゴ、英名はオスプレイっていうんだよ。下から見ると真っ白で、羽が長くて、超カッコイイです。昔、エルキャピタンの頂上でこいつのうんとでっかいのに逢って、それもめちゃ感動したなあ。
 えっ? クライミング? そういえばそんなこともちらっとしたかな。お客さんも頑張ってましたよ、あんま見てなかったけど。
鷲頭の下の漁村で見た、トンビの鈴なり。今年はタカ年? 枯れ木に魚を刺して食うミサゴ。この習性は珍しい目撃例だと思うよ なんとか飛んでるのを捉えましたが・・・。いいカメラが欲しい!


2月某日

 またまた早くも2月。もういつだったか忘れちゃいましたが、久々に鷹取山、行ってきました。
 天気はぼちぼち。晴れているのにミョーに寒い、いかにも今年の冬って感じの日で、クライマーもいつになく少ない日曜でした。

 で、例によって南面フランケやら竹本フェースやらを何本か登ったんだけど、その時ビビッと来たものが。
 っていうのは、タカトリって、足(フットホールド)、めちゃ悪いじゃん。おまけにダラっとしたスメアリングばっかで、だから昔、池田功君に「タカトリ行くと足使いヘタになる」なんて言われて、それが私の長年のコンプレックスになっていたんだけど、でもこういうフットホールドを使う時って、体全体の押し引くのバランスを上手くとって、腰で捩じ込むように足を押し付けていかなければならない。

 前に平山君が言ってた「体全体で足を使うから、小さいフットホールドでも柔らかい靴で充分だ」という言葉が、急によみがえってきました。プラス、そういえばタカトリ・クライマーって、いわゆる「ベタ足置き」が多くて半分バカにされてはいるんだけど、逆にこういう体使いは、確かに上手いよな。杉野保とか。ってことにも、ビビッ!
 さらに、ここって垂壁ばかりでルーフとかは弱いはずなのに、みなさんそういう傾斜になっても足が離れず、深いフットホールドで登る人が多い。大王とか遠藤孝さんとか。ということにも、ビビビビッ!

 で、そういうことを意識してここの激悪フットホールド使ってみると、これがまた絶妙なんだ。「フットホールドに乗せてもらう」って感じのジムとはまた違った、懐かしくも体に染みついた足の使い方を強制されるルートの数々に、喜びさえ感じてしまいました。

 なあんだ、タカトリで、良かったんじゃん。
 ということに、ここに通い始めて40年。初めて納得ができた1日でした。

 さて、ということでこれから改めて、頑張るかな。


2月20日

 城ヶ崎はシーサイドに行ってきました。
 ま、そこであったコマゴマ、見たアレコレは、この際書くのはやめましょう。シーサイドが上級者向けの岩場ではなく、初心者向けのそれになってしまった今(とは書いても、それを認めているわけではないよ)、昔だったら「ええっ?」って思った危なっかしいことに、いちいち口とんがらせてもしょうがないでしょう。

 しかし、それでも気になるのは、行き帰りの、例の懸垂&登り返しですな。
 あそこの順番待ちはもうシーサイドの風物詩になってしまっているとはいえ、やはりハタから見ていると、もうちょっとなんとかならないかと思います。
 その「なんとか」とは、もっと早く、という意味で、実際、見ていると、なんでそんな時間がかかるやり方するんだ? とか、なんでもっと考えて来ないんだ? と、つくづく思ってしまう。また岩場の皆さんを敵に回すつもりではないんですけど、要するに、「トロい!」。しかも暗くなったら、いかにヘッドランプがあるとはいえ、危険性は格段に増しますよ。それが皆さん、どうもわかってないように感じられてならない。

 ということで、ちったあ早くしてもらえないかな、という意図で今回は書くんだけれど、まず最初の懸垂では、上にいる時にロープの真ん中を出しておいて、それを備え付けのカラビナにカチャっとかければすぐ完了、というふうにしておくべきでしょう。それが現場に行ってからロープ解いたり、絡まらせたり、末端からいちいち滑り下ろしていたりと、見ちゃらんない場面が多い。

 最後の登り返しに関しては、まず遅い原因の一つに、ロープで確保する際、そのロープを、端と端で1本まるごと使っているということがありますね。
 この登り返しは15m程度しかないんだけれど、そこで60mロープなんかフルに使った日には、上でのロープ余り分の引き上げに、馬鹿馬鹿しいくらいの時間がかかる。そして皆さん、このあたりの作業が、実にトロい。
 こんなの、片方は輪っか結び+カラビナでいいでしょうに。それでロープ半分(60mロープなら1/3でもいい)だけ使って登れば時間はだいぶ節約できる。余ったロープは邪魔になるからザックの中にでも押し込んどけばいい。

 それと、仲間が数人いた場合、1人1人、いちいちロープの末端結ばせて、そのために1人が登り終わるごとにいちいちロープを外して下に投げてやったりしてるけど、これがまたえらく時間がかかる。
 こんなのも、下図のようにセカンド以下は3〜4m間隔で直列につなげ、一気に登らせてしまえば早い。誰かが落ちても最終的に上のビレイが効いているので問題ないです。これはガイドさんが山でよくやる手段で、一般の人も知っておいて損はないと思います。

 さらに、上でのビレイも、半マスト(イタリアンフリクションヒッチ、ムンターヒッチともいう。下図右)使えば、早いし、やりやすいし、確実です。グリップビレイだって、しっかりやればまず大丈夫でしょう。なにせ皆さん、あのシーサイドに登りに来るような人たちですからね!(って、また敵を作るか?)

 というわけで、なにしろここは、時間をかけることは罪悪だ、マナー違反だ、まわりの者に迷惑だ、という意識をみんなが持つことが大切なんじゃないですかね。今は皆さん、ほんとに品が良くて、おっとりしてて、「急ぐ」なんて観念がないみたいだけど、昔だったらきっと、罵声の嵐になっているよ。

←← 3人以上のパーティの時はこれが早い。ロープはカラビナで連結

← 半マスト。日頃練習していおくと良いですよ


2月23日

 またまた城ヶ崎、シーサイド。
 一応、講習会で行ったんだけど、お客さん、ちょっとお疲れ気味だったもので、午後、わたくしめも珍しく登らせてもらいました。

 つっても、ゲスト参加で連れてった子がトライしてるパン2とアイロンヘッドを、ヌンチャク掛けで登った、というだけでしたが、いやいや、久々に(パン2は3年ぶり、アイロンは5年ぶりくらいかな)登ると、これが辛いこと。
 いや〜、アイロンヘッドなんて、ここにしょっちゅう来てる頃はウォーミングアップでも物足りないくらいで、正直11aくらいにしか感じなかったんだけどなあ・・・。
 いや、これは私、自慢しているわけじゃなくて、その頃(80年代末〜90年代最初))ここにたむろっていた皆さん、だいたいそんな感じだったんじゃないかな。なんせコロッサスやっていた頃は、まずアイロンヘッド、パン2、虎の穴、シンデレラボーイあたりでウォーミングアップして、それからトライ、なんてこと、何人かと一緒にやってましたからね。
 で、例のむかつくランジでさんざん落ちまくった後、仕上げにパン2立て続けに何回、なんてやってた。5回連続、なんて人もいたんじゃないかな。

 いやほんと、これは私が自慢話をしたいわけじゃなくて、あの頃のクライマーって、おしなべて皆さん、密度がほんとに濃かった、ってことを改めて感じ、また言いたいわけです。
 まあ、ジムがなかったってこともありますけれどね。だいたいシーサイドに来るような人というのは、ファミリーはじめ他のエリアはほぼ登り尽くして、それからというのが原則だった。で、こにに来てからもイントロダクション、アーリータイムスから1本1本全部潰して、それから12。これも全部潰して、シンデレラや虎、最後にコロッサス、というパターンだった。

 ところが今は・・・という話題に持っていくのは、まあしかし今回はやめましょう。
 むしろ問題は自分。
 パン2、アイロンで、さすがに落ちはしなかったけど、あれ? っていうくらい、腕が張っちゃって、おまけに翌日、パン2(こちらはジムの方)でもボロボロ。ありゃー、どうしちゃったんだろ、オレ? なんてガッカリしてしまいました。
 以前は、シーサイドはワンパタだからダメだ、あそこいくら登っても何の役にも立たない、なんて馬鹿にして、それがためにだんだん近寄らないようにもなっていったんですが、やっぱそれ、良くないね。こういうのも、登ってないとダメだな。と、つくづく感じました。
 それに、久々にこの暑く潮っぽい日差しの中で登ると、体も生き返る気がするしね。ああ、家に帰ってきたな、という感慨が,ちょっと湧いてきました。
 お父さん、お母さんに、ただいまを言って、またしばらく飯を食わせてもらいますか。

←あー、いいね、潮風を浴びてのパン2(写真、私じゃないけど)。
 この筋肉使いの感覚は、いつまでも維持していたいものだね。


3月28日

 いやいや、たいへんなことになりました。
 まずは被災された方々への意を述べるのが通例なんでしょうが、まあしかし、そういうこと、ここでわざとらしく書くのもかえって失礼な気がするので、とりあえずはやめときましょう。

 私はといえば、その時、ちょうどパンプ2のボルダー階にいて、揺られました。
 最後、胸ぐらを掴まれて脅された時のようにゆっさゆっさと来た時は「ついに来たか」と思いましたが、自分のことよりそこの窓からまさに見える我が家の薄っぺらいマンションが今にも倒れるんじゃないかと、避難指示も無視して凝視し続けてしまいました。

 ま、そんなB級映画みたいなことは実際にはありませんでしたけどね。
 でも家に帰ったら自分の部屋の本棚が倒れ、思いのほかたいへんなことになっていました。おまけにその夜くらいから風邪をこじらせ、ますますたいへんだったのですが、しかしその後の2週間ほど、この際だからいらない本を捨て、この際だから本棚をより強固に作り直すなど、今までできなかったことをやることができました。ま、仕事がほとんどなくなってヒマだったこともあるけどね。あ〜あ。

 とはいえ、いつまでもそうしてはいられないので、この土日、珍しくジム講習をやりました。
 土日にジム、ってのも不本意っちゃ不本意なんだけど、あれこれ考えると、まあ仕方ない。
 それにジム講習って、動きや何やらをけっこうシムテマティックに教えられますからね。『ベーシック・フリークライミング』を書いた私としては(ちょっと宣伝)、実は嫌いじゃない(混んでる中でやるのは、やはり苦手ですが)。

 で、今回は特に「フォームを正す」ということを主眼に、みなさんに登ってもらいました。
 「フォームを正す」って、私自身、日頃ジムで登ったり講習会で人に教えたりする時に常に重きを置いていることではあるんだけれど、しかしまわりの人たちを見ると、どうもこれを気にしている人は非常に少ない。登れるか登れないかばかりに目が行って、その解決策は結局「力」というふうになってしまっている。人ばかりのように感じるわけです。
 そりゃあもちろん「力」も、大切な要素ではあるでしょう。でもそれ以上に「フォーム」ってのは、もっと気遣っていい。というか、これこそ正さなきゃならないもののように、私は強く思うんですよ。それは筋肉の使い方、もっと正しく言うと、出力の仕方に関してもそうで、なにしろこれらはひっくるめて、今後のフリークライミング研究の、ほとんど主流にすらなるもののように、個人的には思ってるわけなんですが・・・。

 で、それらを、この際だからみなさんに基礎から徹底的にやってもらう。そして、この際だから、私サイドでもそれをどう指導したらいいか研究させてもらう。そして、この際(って、これは私の、風邪で2週間寝込んだってこと)だから、自分もまた例のリハビリから規則正しく始める。
 ってわけで、この「この際だから」って言葉、なかなかいいと思いません?
 被災地の復興も、他人事のようでちょっと悪い気もするんだけれど、「この際だから」っていう発想、案外役に立つんじゃないかな。
約30年分の岩雪、10年分のクライミングジャーナル、ロクスノ、岳人、その他ターザンだのブルータスだのクロスビートだのハイウィンド(古い)だので埋まった我が家。これでもずいぶん片づけた後です


3月30日

 湯河原幕岩、行ってきました。
 梅祭りも終わり、平日、またそれ以上に地震の影響もあってか、駐車場は比較的閑散で、久々にのんびりした、いい雰囲気でした。
 広場脇にはコブシなども咲きかけていて、なんか、ほ〜っと見入ってしまいました。

 そういえば幕岩って、今は梅ばかりがわざとらしく有名だけれど、昔(私がまだ高校生で、山岳会の先輩に連れて来られていた頃)は、むしろ知る人ぞ知る、桜の名所だったんですよ。
 岩場もその頃は、今のいわゆる正面壁のみで、あれが麓から見ると幕を引いたように見えるから幕岩、それがあるから幕山っていうんだけど、そういうの、今の人たち、知っているのかな?
 ルートもハーケン主体のオリジナル性の高いものばかりで、それがまた面白く、河原で宴会したりしながら楽しく登ったものでした。

 そうした昔の、のんびりした自然のままの幕岩を知っている身にすれば、今のこの人工的な雰囲気は、やはりちょっと・・・ね。
 山ばかりでなくクライミング社会もやたら人工的になっちゃって、正面壁は禁止だとか、地震があったから自粛しましょうとか、なんかちょっと違うように、私には思えて仕方がない。
 正面壁禁止って、まあそう言われているから私も行かないようにはしているけれど、そもそも何でですかね?
 岩が落ちてきて危ないというのなら、観光客だって近づいちゃいけないことになる。というのに、案内所には表面壁行く道や岩の名前などが地図で張り出されたりしていて、危険を告知しているわけではない。ボルダラーに聞いたら、その下のボルダーもやらないようにと言われているらしいけど、壁からの落石が危いということなら、ボルダーは別に関係ないでしょう。

 地震によるクライミングの自粛も、確かにわからないではないけれど、そもそも岩場というのは地震があろうとなかろうと危ない場所なのだから(このあたりでは数年前の伊豆群発地震の方がもっとひどかったと思うけど・・・)、いつもそれなりに注意していればいいだけの話であって、あえて「自粛してください」と言うようなものではない気がする。
 まあ、それでも社会的責任というのもはあるだろうから、例えばガイド協会あたりが講習会を自粛しろというのはわかる。これはやはり責任者が責任を負うた「引率登山」ですからね。
 しかし一般クライマーという、自己責任原則の人たちに「しなさい」っていうのは、どうなんだろう?
 逆に言うと、これに対して、いつ、誰が、どういう責任で「自粛解除」と言えるんだろうか?
 本来は「自粛しなさい」じゃなくて、「注意しましょう」だよね。で、その前にある「注意すべき」対象は、我々が自然な自己責任意識で近づくべきところの、自然の岩場であって、人工的、人為的なそれじゃあない。

 なんかモンスター○○ばりに文句ばかり言っているようだけれど、何にしても、誰それが言ったから、っていうの、どうもクライマーっぽくないよなあ。いつもその「言う」側に立っている私が言うのもなんですけど・・・。
こうしたのんびりした幕岩見てると、ここも「自然の山」なんだなあと実感します。このコブシは人工的に植えられたものだけれどね


6月4日

 あらま! もうこんな日付?
 地震騒ぎとG・W、さらに続く台風、やけに早い梅雨入りなどであたふたしているうちに、前回の更新から3つも数字が飛んでしまいました。しかもその間、実はギックリ腰、腸閉塞などもやっちまって、まさに死に体でした。
 で、もうほんとに梅雨かよ、あ〜あ。
 毎年G・W明けの1ヶ月はクライミングに最高の時期としてあれこれ皮算用してるのに、またまた何もできませんでした。ガッカリ。こうやって、人は歳をとっていくものなんですよね、きっと。

 さて、その間のことはこの際忘れて(というより、ほぼ覚えてない)、近々の報告をしますと。先週、梅雨の晴れ間を縫って、錫杖岳、行ってきました。
 久々の左方カンテガイドだったんだけど、登ってビックリ。
 支点がほとんど、抜かれてました。
 まあ、このルート、昔登った時はもうどこもかしこもボルトだらけで、おそらく日本で一番汚れたアルパインルートじゃないかと思ったほどだったんだけど、それが数年前から徐々に減り出し、こないだは5p目のチムニー上のフェースに2本ボルトがある以外、ハーケンもほぼ無い、実にきれいな状態になっていました。カム(エイリアン3つ)持ってって、良かった。

 誰がやったか知らないし、きっと文句言う人も出てくるだろうけど、でもこういう動きって、私自身はとてもいいことだと思いますね。
 支点が無いと言ったってカムなどで充分とれるし、全然危険ではない。おまけにこれからのアルパインには絶対必要な、ナチュプロの練習もできる。
 我々が例えば瑞牆山とかでこういうことやるとなんか押し付けがましくて、当然文句も言われて、やりづらいんだけど、こういう、一般アルパインルートのごく目立たないレベルでそれが行なわれるのって、むしろ説得力があると思います。
 これを機に、日本中の岩場が“正しく”(なんて言うと、また反発喰らうかな?)再生されれば、とても素晴らしい。

 で、錫杖の左方カンテでこういうことが許されるのなら、瑞牆のルートもそろそろいらないリングボルト、抜いちゃってもいいんじゃないかな? あの岩場、せっかくフリー化しても、「アブミで登る人のために」意外と気を使ってボルト、残してあるケースが多いんだよね。でもそれって、本当は良くないことだと私は思います。
 ボルトラダー・アブミクライミングが、本当のクライミングではない(もちろん場所によっては「つなぎ」のために許容される場合もありますが)ということを、そろそろ強く言ってもいいんじゃないのかな。
山はすごい残雪でした。穂高もこのとおり。錫杖も沢筋には雪がベッタリです。


6月9日

 連休明けにギックリ腰やり、これは久々ではあったのですが、またも痛めつけられてしまいました。
 しかもそのあとパンプで登ったら、内股の筋肉がバリバリ。
 どうも私、この部分から腰に来ているような気がして、その話を遠藤由加さんにしたところ、彼女が前にやっていたピラティスではまさにその部分をインナーマッスルから強化するのが課題だとか。
 つってもこのオレがピラティスっつうのもなあ・・・と思っていたら、彼女が今働いてるボルダージム「プロジェクト」に、そういうのが専門のスポーツトレーナーが来ているとの話。しかもその人、千葉さんっていうんだけど、これから独立してその手のトレーナーをしていきたいとか。
 こりゃ渡りに舟、って感じで、さっそくコンタクトを取ってもらい、会いに行ってきました。

 なんせ私、クライマーズ・ボディの著者にして名うてのクライシス・ボディの持ち主ですからね。実はこういう人、探していたんですわ。

 で、やったのは、ストレッチ・ポールを使っての「コア・リセット」。
 これは前から気になっていてポール買ったり、本買ったりしてたんだけど、やはりやり方がいまひとつよくわからなかったやつです(だいたい、本なんてものじゃあたいていのことがわからないよね。技術本の著者が言うのもなんですが・・・)。
 しかし千葉さんにわかりやすく説明してもらって、おお、こりゃ使えるんじゃね? と改めて再認識した上、さらに千葉さんの「クライマーはクライミングした後に関節をリセットすることが大切。それによって筋肉の余計な緊張を解き、次のパフォーマンスにつなげることができる」という言葉に、いたく納得。

 そしてまあ、30分ほどのエクササイズやったあとの気持ちよさっつったら・・・。
 なんていかにも宣伝してるもたいですが、でも実際、こういうのって、私に限らずみなさん必要なんじゃないかな?
 というわけで、とりあえずここはきっちり仕事にしてもらって、しばらくクリニックを受けようかと思うちょります。きっとこれ、クライマーの間で流行ると思うんですけどね。


7月20日

 やー、やっと終わったっす。
 っていきなり言っても「?」だろうけど、何あろう、もう10年近く、わたくしめの、ほとんどライフワークとして取り組んでいた仕事、
 『日本マルチピッチ・フリークライミング・ルート図集』でごわす。

 思えば戸田直樹さんのフリークライミング・ショックから早30年。岩雪72号の戸田さんの厳しくも魅惑的な言葉を、私自身は単なるショートルート・スポーツクライミング(その頃はそんな言葉はなかったね。“ハード・フリー”なんてこっぱずかしい言葉で呼んでた)に向ってだけではなく、いわゆるアルパインクライミングに向ったものとして受け止めていて、それで自分も瑞牆やらヨセミテやらにしゃかりきになって通ったわけなんだけれども・・・。

 ま、時間はかかりましたわね。
 それは単に数あるマルチピッチルートを自分で登るという作業だけでなく、一般クライミング社会への認知度という意味合いも含めてということです。
 なんつったって、このジャンルでは、セレクションにアブミ持って来る人、フリー用にボルト打ち替えると湧き上がる批判、城山や小川山でも特定の人気ルートのみに集中して5.11クラスになると途端にクライマーがいなくなる現実、などなど、なかなか難しいものがありましたからね。
 それが突然、錫杖やら屏風やら瑞牆やらに、ものすごいメンバーによってものすごいルートが作られ始め、それをまたリピートしようとするクライマーが、まだまだ少数ではあるけれど現れて、お? お? お? となったのがまさにこないだ。

 Now’s the Time って、こういうことを言うんでしょうか。
 幸いロクスノでも連載で取り上げてくれて(単にネタがなかったからかな)、それをまとめ、さらにプラスαして、一冊の本にまとめることができました。
 今回何から何までうちでやったもんで(イラストも、私書いたのよ)、この1ヶ月、ひさびさに「ぎうぎう」だったけど、やりがいありましたわ。
 刊行は、(データの不具合さえなければ)8月下旬〜9月上旬になる予定です。
 みんさん買ってね。

最後の取材になった戸台の岩場。「戸台同盟」、難しかったす。落ちまくりでした。ん〜、世の中、厳しい。改めて、また頑張らなくては! 核心のピッチ(12cはあるだろ!、ここ)をリードするクロヒゲ。あちこちほんとにお世話になりました。


7月30日

 ルート図集の仕事もようやく終わり(って最後にダメ押しの赤入れがあって、プラスアルファへたばったけど)、久々に小川山でプライベートクライミング、してきました。
 なんと! 開拓です。
 というより、この場合は「初登」と言った方が良いのかな。
 というのは、ものがクラック、しかもまったくのサラで、長さがなんと、70m! という代物だからです。
 場所は烏帽子本峰西面という、数年前に大岩さんたちか開拓したエリアで、その中の「森の天使」というボルトルートのすぐ左にあります。
 去年その「森の天使」を登りに行った時に見つけ、その時は全面岩茸に覆われていたのですが、その後1人でシコシコ掃除して掘り起こし、今年、ようやく初登にこぎつけました。

 付き合ってくれたのは、またもクロヒゲとコビッキー。
 クラックは高差80mのこの岩場の上から下まで一気に切れ込むもので、出だしがブッシュで手がつけられないのですが、ここは右のフェースから入って、解決。ちょっと怖かったけど、2ピッチ全ルート、ノンボルトで登ることができました。
 グレードは1p目が10a、2p目が10cで、ちょっとやさしいけど、各ピッチ40m近い長さをオールナチュラルだし(ビレイ点は木)、ヨセミテチックなレイバックがずっと続いたりで、とてもスバラシイです。
 ルート名は「ザ・ラスト・リゾート」。
 ギアはナッツ〜キャメ4番まで2セットほど。
 頂上からの眺めもすばらしおまっせ。
←烏帽子本峰西面全景。ルートは左のカンテラインのすぐ右のクラック

2p目をフォローするコビッキー(田中彩奈)。ヨセミテみたいでっしゃろ→




8月1日

 ひゃー、もう8月。今年もどこも登ってないじゃん、っていう感じで無慈悲に月日は過ぎて行きますが、6月に始めた「コア・リセット(チバトレ)」、なんとか続けています。つっても夜ビール飲んだ後に半分意識失いながらやっているから、真面目に、とは言えませんけどね。でもそれでできる(ほんとはできていないか)ってとこが、続けられる秘訣かな、なんて勝手に解釈しつつ、まあ、やってます。

 で、この「コアトレ」、長期的な計画では
1.関節をリセットする。同時に筋膜も緩める。
2、センタリング。→体の芯を安定させ、これをぶらさずに動作を行なえるようにする。そうするとある動きの時に他の場所に負担をかけないようになる。
3、コア・トレーニング。→体の芯周辺の筋肉(主にインナーマッスルと呼ばれる筋肉群)をしっかりさせる。で、体幹を使った動きが上手くできるようになる。

って感じで進めていく予定なんですが、いや〜しかし、こうやってちゃんとした人に見て(診て、って言った方が正解かな)もらうと、自分の体がいかに思うように動いていかないかがわかりますわ。
 特に私、股関節の前傾・後傾と、胸椎の動きがきわめて弱いようでして、結果、上半身の捩りや、手に足ムーブがまるでダメ、挙句、他の力で強引にねじ伏せる、ということになっちゃっているようです。
 いつも講習会では「もっと力を抜いて」とか、「不必要な所に力を入れない!」なんて人に指示してるくせに、自分はどうもね、ちょっとヤバイですね。

 でもまあ、こうして地道にやっていればそのうち私もヒールフックなんかしちゃって、いつかは今時のボルダラーの仲間入り、なんて思ってたら、最近この講習受けてる人、結構いんのね。なんか有名なNさんとか、オヤジボルダラーの鑑Yさんとか。
 チッ! オレだけ上手くなれると思ってたのに。


8月8日

 先週金曜日(5日)、小川山で、「気仙沼の中学生にクライミングを」企画に参加してきました。
 これはまったくひょんなことから個人的に話が来たもので、要は「この震災で被災した気仙沼の中学生を小川山に招いて、ハイキングやバードウォッチング、キャンプ、釣りなどアウトドアスポーツを楽しんでもらう。その中でクライミングもやる」というもので、ちょうど今年発足した(社)日本山岳ガイド協会フリークライミング・インストラクター委員会に持ち込んで、協力者を募り、実施してまいりました。

 手伝ってくれたのは、大岩あき子さんと、柴田朋宏さん。
 最初相手側の参加人数がわからず、どうしたものかと思っていたのですが、直前になって33人とわかり、大慌て。
 ロストアローに行ってハーネスとシューズを借りたものの、私、「今時の中学生って、足でかいよな」という頭しかなくてでかいのしか借りず、その後聞いたら女の子が20人近くいるということで、急遽ビッグロックからも小さいサイズの靴たくさん持って来てもらってなんとかしのぎ、マガスラブの3ルートを皆さんに楽しく(?)登っていただきました。

 みんな、初めてのクライミングということで最初は緊張&敬遠していたけれど、やってみればそこは中学生、最後はうるせえっ!ってくらいにはしゃいでいただき、心配された雨もこの日は降らずで、楽しい半日を過ごすことができました。
 当日マガスラブに来たのに、場所をあけてくださったクライマーの皆さん、すみませんでした&ありがとうございました。

 まあ、被災した子たちだから社会貢献で、なんて考えるのもどうかと思うんだけど、実際ああやって子供たちにクライミングさせるのって、正直面白いね。
 ひょっとして精神年齢がたいして違わないのかな、意外と私自身も楽しく過ごさせていただきました。「よし、行け!」なんてえらそうに指示できるの、こんな時だけだしね。
 子供達も「久々に体動かした」ということで(校庭が、ずっと閉鎖されたままなんだって)、思った以上に楽しかったんじゃないかな。すごく上手い子もいましたよ。引率の先生も「よし、おまえはレスキュー隊員になって気仙沼のためになれ」なんて冗談を言ってました。いろいろ大変だろうけど、遊ぶ、って、やっぱ大切だよね。

 今回以下の方々にご協力いただきました。ありがとうございました。
川上村振興公社、(社)日本山岳ガイド協会フリークライミング・インストラクター委員会、ロストアロー、クライミングジム・ビッグロック、クライミングジム・ミストラル、セブンエー、岡村千恵子さん


(写真提供:金峰山荘 山中茂)


8月20日

 既にご存じの方も多いと思いますが、先日(8月5日)、マラ岩で大きな事故がありました。
 ブルースパワーの核心で落ちたところヌンチャクからロープが外れ、その下にセットしたカムも外してしまっていたため、取付のテラスにぶつかりつつ下まで大フォールしまったというものだそうです。

 私はその話を人から聞き、「なんであのカム外しちゃうかな? そいつ頭おかしいんじゃないの?」と軽口をたたいたのですが、翌日廻り目平で知り合いのMくんに会い、その時のビレイヤーが彼だったと聞いて、ビックリ。
 Mくんって、もともと安全的なことにはうるさい方なので、「なんであんな・・・」と問い詰めると、自分はあそこのカムは外したことはないし、落ちた人もそういうところは比較的しっかりしている(いた)、しかしあそこは最近外してトライしている人が多いので、ついつい外してしまった、とのことでした。

 う〜ん、何となく状況は見える気がするけど・・・。でもこういう風潮って、良くないよね。実に、良くない。
 前に城ヶ崎のシンデレラボーイでも出だしのクラックにカムをかけずに行ってグランドフォールしたという人がいたし、ピエロなんかじゃ核心手前のヌンチャク全部はずしてトライしててボルトが抜けて同じくグランドしたなんて馬鹿げたことがあったけど、なんかそういう話、このところ、多くなってないか?
 私もクラックなどでドランナウトしながら登ってしまうことが多いので文句言われるかもしれないけど、それはでも、わかってやってる、わかってないの違いがあるよね。
 そこで落ちるような人が、なんで安全面よりも登ること(これらをかけるとムーブの邪魔になる? ならないだろ。オレらはみんな、かけたままで登ってきたんだから)を上に置いて、それで良しとしちゃうんだろ? しかもたった1本のボルトに、あそこまで絶大な信頼を置けちゃうんだろ?
 死人に鞭打つようなことは言いたくないんだけど、こういう風潮って、即刻、改めた方がいい。それはこの際、声を大にして言いたいよね。

 また、このブルースパワーの件でヌンチャクからロープが外れたのは逆クリップをしたせいだと思っていたら、そうじゃないんですと。普通に正しくかけて、それで外れてしまったというのも驚きでした。
 しかも他の人の話では、そういうこと、このルートでは過去にもあったんだそうです。
 岩の形状などのせいで、ここはロープがカラビナにまつわりやすいんでしょう。
 しかしこれはそのボルトやルートが悪いんじゃなく(その下にカムが効くわけだしね)、それなりの安全策が必要ということでしょう。具体的にはこういう所では、ヌンチャクは安全環付きカラビナを使うなどということもありだと思います。
 ええ〜?そこまで・・・と思う人もいるかもしれないけど、ヨーロッパ、特に核心部が際どいドイツなんかじゃ、その手前のカラビナに安全環付きを使ってる人、多いですよ。日本でもこうした風潮は広めた方がいいと思います(でもだからといって例のカムを外してもいいというわけではない。ボルトが折れる可能性だってあるし、岩が壊れることだって、ないわけじゃないからね)。

 それにしても可哀そうなのは(もちろん一番可哀そうなのは事故った本人だけど)、Mくんでした。根がまじめなだけにえらく落ち込んじゃって、「なんであの時もう少し強く注意しなかったんだろう」と、それは傍目で見ていても気の毒になるくらいでした。きっと彼はその思いをこれからずっと持ち続けることになるでしょう。
 でもそれは仕方がない。
 起こったことは起こっちゃったわけだし、私のようにオヤジになって何もかも忘れてしまうようになるまで、人生に後悔は付き物です。

 しかし私は、そのようなMくんにこそ、自分が登る時はビレイをしてもらいたい。
 ビレイヤーとクライマーの関係が希薄になり、ジムなどでも私はビレイを規定通りにしてるだけ、リードしている人が危ない目にあっているのはその人の責任で私のせいじゃない、なんて感じの人たちばかりになっている昨今、Mくんのような感覚は貴重(というより、私に言わせりゃ「まとも」}です。そしてそれこそが「ビレイヤー」の条件であると、私は思います。
厳しいことがあったマラ岩


9月11日

 世界を震撼させた同時多発テロから10年、厳しい試練となった東日本大震災から半年、の、この日、わたくし、51になりました。
 日曜だったもので、ガイドでベルジュエールへ行ってきました。

 いや〜、久々に登ると、難しかったですわ。
 だぶだぶの靴だったせいもあるけど、1p目の11b、2p目の10aとも、ヤバヤバ! って感じでした。
 でもまあ、なんとか落ちずに登れたし、天気も良かったし、ハヤブサの声も聞けたし(姿も、ちらっとだけ見えました)、楽しい1日でした。

 誕生日にこのルート登るのって、前にもあったけど、なかなかいいよね。
 でもこの年になるとつくづく感じるのは、いつまでこのルート、こうして登れるだろう? ってことです。
 昔、「トップで登れなくなったら山をやめる」って言ってたアルパインクライマーがいたけど、今ならさしずめ、ベルジュエール登れなくなったら・・・ってとこかな。

 いつまでもこのルート、こうして登りに来たいものですわ。
最後の10bセクションを抜けて肩に出る所。いつまでこの景色、楽しめるだろうか 頂上着いた時は残念ながらガスがかかってしまいました。この後すぐ晴れたけどね 日本マルチピッチフリーフリールート図集、出ました。2000円。買ってね



11月24日

 いや〜、またまた時間、空いてしまいました。
 前回の書き込みが9月11日の誕生日で、気がついたらもう11月も終わり。歳取った途端、仕事やる気が失せたか、と思った人もいたかとは思いますが、う〜ん、当たらずとも遠からず・・・。
 いやいや、実は今年から始まった山岳ガイド協会のフリークライミング・インストラクター資格制度の、研修会やらテキスト作りやらで、結構忙しい毎日を送っていたのですよ。

 という「フリークライミング・インストラクター資格制度」って、いったい何かと言いますと、ロクスノ51号にちっらとだけ出たんですが、要はプロとして人にフリークライミングを教えるにあたって必要な技術やら安全管理の方法、意識やらを、みんなで集まって大系化しよう、それでそれらをしっかり持った人を有資格者として、社会的に位置付けようというものです。
 なんといってもこのところのフリークライミングの大衆化、膨張の度合いは猛烈ですからね。その中で「指導者」と言われる人たちにもそれなりの基準と資格をそろそろ設けないと・・・というのがその発端です。

 まあ、「みんなで」といっても、狭い世界(今のところはね。しかしもうすぐそうではなくなる)のこと。その中核になった面々は、杉野保君、保科君、山下君、大岩さん、寺島君、などなど。なんだ昔たむろってたメンツと全然変わってないじゃんて感じではあるんだけど、こうして振り返ってみると、でかくなったのは腹と尻だけじゃなくて、影響力もそこそこ、ね。
 というわけで皆さん、老体に鞭打ち、何とかもうひと息、最後のご奉公をすべく頑張っています。
 今年はそれに全国の主要若手(?も多少つくなあ)インストラクターの方々を招いて研修会も行ない、技術大系のさらなる精査とともに、資格制度の形も整えつつあります。
 乞うご期待。
つっても、みんな歳とっちゃったなあ これはイジメじゃないです。あくまで研修です


12月末日近く

 今年ももうすぐ終わり、という時節になってしまいました。
 なんか今年は、全然調子あがんなかったなあ。このページも、ぜんぜん書き込まなかったし・・・。

 というのも今年後半は例のフリークライミング・インストラクター制度のテキスト作りに手いっぱいになっていたからでもあるんですが、そんな中でも唯一(?)の息抜き、風呂入る時に読む本(私、そういう習慣あるんです)に、最近いいのがありました。

 
伊藤進著『ほめるな』(講談社現代新書)。

 実は私、中島義道とか小浜逸郎とか勢古浩爾とか、その手の本読むの意外と好きでして、これもその系列でずいぶん前にブックオフで105円で見つけて買っておいたものでした。
 なんせ題名が素晴らしい(前の3人もなかなかキャッチーな題名つけまっせ)。

 で、その話を講習会の生徒さんにすると、「先生、頼むからそんな本読まないで」などと泣いて懇願する人もいたほどだったんですが、しかし私の知的好奇心はとどまるところを知りません。
 いよいよ他に読む本がなくなったある晩、風呂の中で開いてみると、いやあ、なかなかいいことが書いてありました。といっても私の例の「クライミング的に」という目でしかすべてのものを見られないという悪癖のもとでではあるのですが、それでも「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の項は良かった。これこそまさにクライミングの真理に当てはまるものだなどと、湯船の中で股ぐら掻きながら感動してしまいました。
 最後の方のちょっと臭めの教育論はどうでも良かったですけどね。お勧めですよ。