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DECEMBER SPECIAL

阿部[在エリヌス郷土史研究家]和司
佐野[従軍楽士]高久

『これまでのあらすじ』
 甲紀20年7月。
「人外協に入隊しなければ、甲州ファンにあらず。」とまで云われ、その権勢を甲州宇宙に轟かし、我が世の春を謳歌していた谷甲州黙認ファンサークル青年人外協力隊に突然の危機が訪れた。
 オオサカから比較的遠くに居住する一部の反動的隊員が叛乱組織「外惑星聯合」を名乗り、オオサカの人外協本部に対し、宣戦を布告してきたのである。
 所謂「第一次外惑星動乱」の勃発である。
 開戦当初、その圧倒的戦力差を覆さんとする外聯は電撃作戦を敢行し、一時は人外協の本拠地であるオオサカ・シティまで肉薄するが、陸戦隊に託したギャグが滑ってしまい、結果として戦線は大きく後退してしまうのだった。
 が、現実世界で無理なら・・・とばかりに会報の一部頁を不法占拠した外聯は気が付けば、後戻りの出来ない修羅の道に踏み出してしまっていたのだった。(トホホ。)
 「第三勢力」の旗揚げ、謎の元老の暗躍、20周年パーティーでのテロ行為(嘘)、忘年会へのお誘い、毎月やってくる画報の締め切りなど、瞬く間に開戦から半年余りが過ぎようとしていたのだった・・・。

『これからのすじがき』
 さ〜て、これから何をしようかねぇ。

『外惑星聯合構成員〜名簿』甲紀20年12月1日現在(加盟順)
 ●代表部主席 林[シャーロキアン・ローディスト]雅恵 (愛媛県在住)
 ●仙台駐在事務所連絡士官 阿部[在エリヌス郷土史研究家]和司 (宮城県在住)
 ●佐久定点観測所所長 松村[従軍絵師補]武宏 (長野県在住)
 ●主席一等補佐官兼陸戦隊隊長 岡田[スイカ太郎]恭典 (大阪府在住)
 ●情報局狼煙係 平野[人外協の端くれ(中略)漢]幸治 (東京都在住)
 ●仮想”巡洋艦艦隊司令官飼育係 中谷[従軍ハムスター]真理子 (山形県在住)
 ●前後方トロヤ連合軍総司令官   村田[従五位下治部少輔]健治 (神奈川県在住)
 ●主席専属蕎麦打職人 要申請人間国宝 佐野[従軍楽士]高久 (長野県在住)

 ま、ウダウダやってないで、今月のぺけぷれすを始めましょうか。
 では・・・。
 え?何?村田前後方トロヤ連合軍司令官が無条件降伏?マジ?
 ええ、声明が発表されているようです。

 「久しぶりに安達さんに会ったら「反乱軍にいった裏切り者には東京支部例会の連絡はしない」と言われてしまった。東京支部を追放されてはたまらないので降伏することにします。外惑星聯合の皆様、1ヶ月という短い間でしたが、お世話になりました。東京支部万歳!!」

 ・・・。
 この件に関して阿部連絡士官の公式見解が発表された模様です。

 師走の足音が聞こえ出したある冬の朝の事だった。
 いつものように正門前で衛兵の誰何を受け、懐のIDカードを見せる。
 それに続くお定まりの入念なボディチェックを受けた私は、8時近くにやっと自分のオフィスに辿り着くことが出来た。
 まったく、非効率だ。
 あの嫌がらせとしか思えない入館審査さえなければ、毎朝の出勤時間を2時間は短縮できるというのに。
 まあ、それでも朝はまだ良い。何故、帰りのチェックは3時間も掛かるのだろう?
 都合5時間近くも毎日毎日ボディチェックを受けている計算だ。
 しかも、タイム・カードの記録機は、オフィスの前の廊下にあると来ている。
 朝はボディチェックの後にタイムカードを押し、帰りはタイム・カードを押してから、ボディチェックを受ける・・・。早朝出勤手当ても残業手当も無しだ。しかも、私は毎日、仙台市エリヌスから片道1時間30分も掛けて通勤しているのだ!そう! これも不思議に思っている事の一つだ。
 何故、「仙台駐在事務所」が「タイタン山形」の外聯ビルの中に有るのだ!
 それなら、山形駐在事務所で良いではないか!
 だいたい、このIDカードにしてもそうだ。結局、ここまで入念にボディチェックを受けるのなら、一体何の意味があるというのだろう?
 確かに、以前、間違えてパチモン・カードを出したのは私だ。あの時は挙動不審者として1週間近く山寺要塞の修行者お泊り小屋に拘束されたものだ。そう云えば、何だか警備が厳しくなったのは、あれ以来だったような気がしないでもない。だが、それにしてもだ。百歩譲って外部の者へのチェックが厳しいというなら判るが、関係者たる私まで同じ扱いというのは納得が行かない。
着替えを済ませた私は、オフィスに備え付けられたフード・リプリケイターで、人外協時代からの伝統である代用コーヒーを煎れながら、独りブツブツと悪態を吐いた。
 一口啜る。不味い。しかもぬるい。
 常々、このぬるくて不味い代用コーヒーについても、私は一言云いたいと思っていた。如何に戦 時とは云え、何故我々はこのような拷問としか言いようのないコーヒーに甘んじていなければならないのか?
 確かに叛乱組織とは云え、我々も甲州ファンの一人である事には変わり無い。だから、甲州谷産の大豆で作られた代用コーヒーを有り難がる傾向が一部に存在することも知っている。私だってファンになった最初の頃は、これを飲みながら、赤色灯の下で暖房を切って「あの本」を読んだりした事はある。
 しかし、それにしたって限度がある。
 私は声を大にして云いたい。
 代用コーヒーの大豆は庄内産に限る!と・・・。
 それにこのオフィスだ!何でこんなに狭いのだ!
 確か、この外聯ビルは聞くところによると、東京ドーム10個分に相当する広さだというではないか。だが、それだけの広さなのに何故、このオフィスは畳み一畳分もないのだ?立錐の余地無しとは正にこの事だ。
 しかも気のせいか、毎朝来るたびに少しずつ狭くなってきているような気もする。

ズズ・・・。

 ?何だ?今の音は・・・。
 沈思黙考を妨げられた私は、物音のした壁の方に目をやってみた。
 と、再び何かを引き摺るような音と共に壁がズイ!とせり出してくるではないか!
 何だ?何が起こったのだ?
 慌てて壁を押え込み、隣りのオフィスの主を補助記憶の中から検索する。
 多少バージョンの古い検索ソフトを使用しているせいかナカナカ思い出せない。
 しかも、所々セクタ不良を起こしている為、バチ!バチ!と耳障りなディスクを擦る音がする。(頭の中でそんな音がするのは決して愉快なものではない。)
 「誰だ!一体何をしている!」
 私は思わず大声で隣室に叫んだ。
 「こんな狭い割付でやってられるか!あんたの頁を少し貰うぞ!」
 隣室の男は開き直ったのか、更に壁を押し出してくる。
 私は、隣りの男が誰なのか思い出せないまま、身体を心張り棒のように固定しながら、テーブルの上に置かれたディスプレイに表示された未読のメールを見つめた。
 いつぞや、ここにやってきたトロヤ連合軍の男が東京支部に無条件降伏した旨を記した報告書だった。「回答後要回覧」と書いてある。
 だが、両手を壁に付き、両足を踏ん張っている私には、そのメールにチェックマークを付ける事など到底無理な話しだ。
 第一、今はこの壁の方が最重要懸案事項なのだ。そんなトロヤの男ごときが抜けるの抜けないのという話しは、後回しでも良いとさえ思った。
 それに、この件に蹴りが付いたら、大豆コーヒーの産地を換える申請書を提出し、例のボディチェックの時短を上申し、それが叶わないのであれば、せめてタイムカードは正門に置いてもらうよう会議に掛けなくてはならない・・・。
 私はまたしても今日一日が無駄になるのではないかと懸念しながら、一体この隣室の野郎が誰だったのかを只漠然と考え続け・・・。(頁を割り込む音)


 「しばらくお待ち下さい。頁はそのまま外聯Xぷれす。」


 内惑星ケーブルテレビジョンネットワークが臨時ニュースをお伝えします。
 地球‐月連邦保安部は、外惑星聯合星域での違法な軍事行動を確認したとのことです。緊急事態です。
 なぜかスポンサーのご厚意により事態の収拾がつくまでしつこくスタジオと現場を繋いでお送りいたします。

◆◆ この時間は―あなたの夢を叶えます、携行兵器のパイオニア―『サエキ平安工業株式会社』の提供でお送りいたします。

―ただいま入ったニュースによりますと、連邦暦二〇年一〇月一〇日(現地時間一〇月一一日夕)外惑星聯合軍所属と思われる一部隊が蜂起、イオ愛媛宙域に侵攻し市街地を制圧した模様です。
 なお、外聯主席は仙台エリヌス宙域における晩餐会出席のためイオ愛媛宙域を留守にしており、肌身離さず持っている印璽は無事とのことです。
 えー、あ、現場近傍、淡路ガリレオ支局の桝込さんとただいま繋がったようです。
 桝込さん、現場近傍宙域の様子はいかがですか?

桝込:ピィー・ガ・ガ・ガ・ガ……えーとですね、どうやら、蜂起したのは信濃フォボス皇国軍ですね。外惑星聯合の主権争いが、ついに軍事クーデターに発展した模様です。
 外聯主席が地元を離れている今が狙い目と、蜂起に至ったようです。信濃フォボス皇国軍の指揮官は、あ、今映像を捉えました、少し遠くて鮮明ではありませんが、確かに信濃フォボス皇国軍無官の司令官の佐野[従軍楽士]高久ですね。

―スタジオです。信濃フォボス皇国は地球‐月連邦シンパだったのではないでしょうか。なぜ、その信濃フォボス皇国国家主席の信任厚い「無官の司令官」が、外惑星聯合の勢力範囲内で叛乱を企てたのでしょうか。
 桝込さん、現場近域の桝込さん、何かそちらに動きはありますか?

桝込:現場近傍星域です。いきなりですが街頭インタビューをしてみましょう。常套手段すけど。 
 えー今回の武装蜂起についてどう思いますか。 
けばい女子高校生:えー、なーにー、ブソーホーキ? ってナニ?(…説明を聞く) やーだー、ヤバンよね、そんなのって。 
桝込:(聞いた相手が悪かったな。あ、今度は年輩の男性だ)すみませんちょっといいですか?  
初老の紳士:よくありません。 
桝込:(って、いや引き下がっちゃいかん)あの、お話しを伺いたいんですが……
初老の紳士:話したくありません。 
桝込:(困ったもんだな)今回の、信濃フォボス皇国軍によるですね、軍事蜂起についてですね、いかがお考えでしょうか? 
初老の紳士:考えてません。 
 [足早に立ち去ってしまう] 
 [襤褸布の塊が蠢きながら桝込に近づくと、隆起する] 
自由生活者:俺、知ってるよ。喋るから、なんか喰わせて。 
桝込:うわー、ビックリした。襤褸布が捨ててあるかと思ったら乞…ピィーッ 
 [福祉の行き届いた我が星系には「乞食」は存在しません。従って放送自粛] 
自由生活者:アレはねぇ、自分の星域では仲間に入れてもらえないもんで、外聯騒ぎにかこつけて自らの勢力を拡げようって魂胆なんだね。外聯主席が地元を留守にしたんで、これ幸いと行動に出たんだな。 
 まあ、馬鹿だね、その佐野って士官はさ。どんなに代表部を制圧したって、印璽がなけりゃ意味ないんだから。外聯代表部も、その辺はぬかりないね。印璽は主席が後生大事に抱えてんだから。 
 仮に主席がいる時に襲ってきても、親衛隊は主席の玉体よりは、印璽の方を守るだろうね。代表部だの主席だのつったって、所詮はエリヌスの傀儡[外聯代表部の検閲により以下削除]…。 

桝込:ということだそうです。乞…ピーッ…のくせに、よく事情を掴んでますね。 
 まあ、自分の町内じゃ爪弾きにされてるんで、隣り町の砂場で暴れてる餓鬼大将だってことでしょうか。スタジオにマイクをお返しします。 
 [自由生活者が財布を抜き取って逃げたんで必死に追いかけ始める。桝込、舞台下手に叫びながら走り去る]

―スタジオです。ええ、各界への電話によるインタビューでも、おそらく餓鬼大将的行動であろうという見解が多いですね。
 あ、最新のニュースです。実行部隊の指揮官から声明が出た模様です。では、犯行声明を読み上げます。

臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍

 ふふふふふ、外聯は俺が占拠した!
 信濃星系はあまり活発にやってないからこっちの方が面白そうだ。
 美人な飼育係もいるし、主席だってうら若き乙女だし……。

 とにかく、俺は面白ければ何でもいいんだ。例会だってやるぞ!
 支部報だってこまめに出すぞ!
 いいから、主導権は俺が貰った。これも、全青年人外協力隊のため
 なんだよ。

 俺は、俺は、SFが好きなんだよ〜。SFのためなら、女房子供だ
 ってどうでもいいんだよう〜っ
 
 信濃支部・無官の司令官

臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍臍

―それにウソで固めたように見えたんですけど、ヘソで固めてますしね。何か意味があるんでしょうか?
 え、見なかったことにしろ。読み上げておいてそれはないような……。
 

桝込:現場の桝込です。ちょっと初速をつけすぎてダイモスまで来てしまいました。ホーマン軌道にうまく乗れたのが不幸中の幸いでした。
 えーこちらにですね、信濃フォボス皇国軍の事情にお詳しい玉丘さんにおいでいただきました。無官の司令官とも古くからの友人であられるそうです。玉丘さん、今回の事件、どう思われますか?
玉丘:まーたアイツかよ。いい加減にして欲しいんだよな。それに、友人なんかじゃありません、私は。
桝込:と言いますと、以前にも叛乱を企てたことがあるんですか
玉丘:叛乱なんていってるけどね、そんな政治的に高度なもんじゃないんです。かまって欲しくて、気を引きたいだけなんですから。たまたま今回は「軍隊」って玩具があるだけで、深く考えてんじゃないんです。周りに迷惑かけるだけなんだから、本当に。
桝込:困ったちゃんなんですね。
玉丘:困ったちゃんです。それでも、言うこと聞いちゃう軍隊がいるから始末が悪いの。某人外協元老のお言葉を借りれば「ご人徳」だね。
桝込:元老…アノ方ですか?
玉丘:アノ方です。
桝込:で、叛乱軍司令官の普段はどんななんですか。
玉丘:口を開けば下らないことばかり言うし。皇国内務省の女性職員は嫌ってますよ。それに、請け合って引き受けた仕事はまていにやらないし…。このまま、木星でも土星でも好きなとこ行ってくれよ。
桝込:あっ、今叛乱軍が立てこもっている外聯主席官邸ビルから、爆弾が投下されたようです。破壊力はさほどないようですが、あまりの音の大きさに驚いた民間人が腰を抜かしました。
玉丘:ほうら、相手にされないとすぐにいじけて騒ぎ出すんだから。
[叛乱軍司令官、テラスに出てきて放送できないような恥ずかしいパフォーマンスを始める]
玉丘:あ〜あ、またお下劣なネタを…。
桝込:何を考えているんでしょうか?
玉丘:あの人はね、なぁんにも考えていないの。ただただ、刹那的に反応だけで生きてるんだから。

―スタジオです。玉丘さん、一つお訊きしたいんですが。その、またどうして今回、佐野司令官は、これほどまでに大騒ぎをするんでしょう。何か特別なことがあったんでしょうか?

玉丘:あるにはありましたけどね。前々から窘めていたんですけど、わかってないみたいで、ワガママだから。自分で事態を悪い方に持っていって、勝手にいじけてるんですよ。
桝込:具体的にどのようなことが?
玉丘:勘弁して下さいよ、そんなこと口にしたら、私が逆怨みされちゃいますよ。月のない晩に背後から正々堂々と闇討にされたくはありません。
桝込:正々堂々と闇討、なんか矛盾しているようですが、叛乱軍司令官の人格を適確に言い表わしているような気がしますね。

―ええとですね、内惑星系情報コンソーシアムの最新資料によりますとですね、佐野司令官は最近女性にふられて壊れているそうです。ふられたというより、最初から相手にされていなかったようです。惚れっぽくって平均年五回(当社比)はふられてる奴が、その度に武装蜂起していたんでは、保安当局もたまりません。

玉丘:まだ、グダグダやっとったんか。そんなんだから地元でつ*ぼ桟敷に置かれるんだよ。

―なんか信濃星域では複雑な事情が渦巻いているみたいです…。

桝込:現在は主席官邸ビルに立て籠っているだけですが、今後、民間に被害が出ることが危惧されます。
玉丘:心配ありませんよ  まあ、人を殺しいたいわけじゃないけど鉄砲を持ったら撃っちゃうようなところがありますけど、本物の鉄砲を持ったらビビる奴ですから。市民に向かって兵器を使用するようなことのできるタマじゃありません。小心者なんですよ、実は。
桝込:おお、纏と鳶口も勇ましく、イオ火消し組が主席官邸ビルに乗り込んでいきます。今、叛乱軍兵士に取りついています。火消しというのは、何の伏線なんでしょうねぇ。
玉丘:抛っておけばいいのに…。
桝込:てやんでえ、べらぼうめ。こうしちゃいらんねえや。グシッ(洟をすする)。 火事と喧嘩は江戸の花ですタイ…。
[桝込、太陽系外縁に向けて飛び立ってしまう]
玉丘:江戸っ子の人だったんか…?

―スタジオです。桝込さんは、パパラッチだったという先祖の習性に負けて、現場に向かった模様です。
 玉丘さん。今(って、タイムラグはどうなっているんだろう)、火消し組が事態収拾のために突入したわけですが、この後事態はどう進展するんでしょうか。佐野司令官の性格から、何か予想できますか?
玉丘:さあねぇ。まあ、まともな叛乱劇にはならないでしょうね。泰山鳴動して鼠一>匹ってなことになるんじゃないですか。遣り遂げるということを知らん人だから。龍頭蛇尾なんだよなぁ。

桝込:イオ愛媛の孫衛星軌道からお伝えします。

―スタジオです。桝込さん、いつの間に…?(火星から木星宙域までどうやって行ったんだろう?)

玉丘:江戸っ子はやることが早いねぇ。
桝込:現在、火消し組以外にも警務隊、都市警備隊、そしてタナトス戦闘団が、主席官邸ビルに侵入を開始しました。周辺の道路には見物客が詰めかけ、屋台が大繁盛しています。

―イオ愛媛の住民ってのは能天気というか、事態をわかってるんでしょうかねぇ。

桝込:今までの主席の言動から察するに、あまりわかっているとは思えません。好奇心の方が先走っているみたいです。
 おお、あれはラザルス焼きです。ラザルス焼きが飛ぶように売れている、と思ったら、ランス副隊長が買い占めています。なに考えてんだか…。
 今、タイニー・ヴァルキリーが主席官邸に突入。バルカン砲を乱射しています。阿鼻叫喚です。敵味方見境なく標的にしている模様です。
 どうしたんでしょう。タイニー・ヴァルキリーは高度な論理回路で自律行動することが可能なはずです。その判断力には定評があるはずですが、どうして味方まで襲っているんでしょう。

―スタジオです。連合警務隊の作戦本部からの情報をお伝えいたします。  どうやら、タイニー・ヴァルキリーは高度になり過ぎてしまったのではないかということです。あまりに高度に進化し過ぎて、事態の馬鹿らしさを悟ってしまい、滅茶苦茶な行動に出たのではないかとのことです。

玉丘:あ〜あ、やっぱりそういうことになるんだ。抛っときなさいって言ったのに…。
 私だってね、うちで猫がお腹空かせてまってるんだから、早く帰りたいんだけどなぁ。 
桝込:現場です。どうやら今、陸戦隊の生き残りが佐野司令官のガラを押さえたみたいです。厳重に拘束された佐野司令官が主席官邸から連行されて来ました。

―司令官の様子はいかがですか?

桝込:かなり、足元がフラついているようです。しかし、負傷はしていない模様です。タイニー・ヴァルキリーの銃撃の中、全く無傷です。かすり傷さえ負っていません。
玉丘:悪運だけは強いからなぁ…。
桝込:どうやらですね、足元がフラついている原因は、酒ですね。
 「臨時政権詰所」と叛乱軍が呼んでいた部屋に、大量の酒瓶が転がっていたそうです。酒瓶はすべて、地球産の銘柄だそうですが…。

―まあそれは、元々信濃フォボス皇国は地球‐月連邦寄りでしたから、地球産の酒を持っていても不思議はないのではないですか?

桝込:ところがですね、残された酒瓶は、地球でも極限られた特権階級しか入手できないものだそうです。

―と言うことは、佐野司令官が蜂起した陰には、地球側の意志が影響を与えていた可能性があるということでしょうか。

桝込:佐野司令官とある元老との間には黒い噂が囁かれていましたから、可能性はありますね。

―だとすると、これは圧力がかかってうやむやのうちに終わるかもしれません&nね。
 で、逮捕された佐野司令官の様子はどうでしょうか?

桝込:酔っぱらって、女性士官の尻を追いかけています。本性剥き出しですね。
玉丘:まあ、最近はことの外寂しがってましたからねぇ。日頃は盛り上がるだけなんですけど。

―結局今回の武装蜂起も、そういうことなんですね。

玉丘:酔ってクダンの如しです!

 内惑星ケーブルテレビジョンネットワークです。放送を続けるのが馬鹿らしくなったので、これで中継を終ります。
 一体何だったんだ、この騒ぎは。


 は!
 失礼致しました。回線が混乱していたようです。
 それでは改めてお送り致しましょう。外聯ぺけ・・・。え?もう頁がない?SIT!!

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