外聯連絡士官『偽』業務日誌
gairen"PEKE"press April 

佐野[従軍楽士]高久

外聯規則【外聯例会の定義】

主席の列席しない外聯例会は、これを認めない。

「余のいないところでそんな楽しい事をやられては、余が寂しいではないか!」
外惑星聯合代表部主席 林[シャーロキアンローディスト]雅恵

 小官は仙台駐在事務所連絡士官 阿部 和司である。
 本日は、不本意ながら我が外惑星聯合の諜報機能の不備について報告しなければならない。

 

[甲紀弐拾壱年参月弐拾日]

 我々はあくまで慎重だった。所在を知られてはいけない。電話回線も二重三重にダミーを仕掛けた。
 そして夕刻、とある移動通信事業体の支店(実は小官が地下活動のために仕立たアジトである。他の外聯派閥にも、もちろん青年人外協力隊本部にも内緒で運営されている)に、サングラスにマスク姿で変装した見るからに怪しい中谷[従軍ハムスター]真理子氏が現れた。
 実は、先月、東京支部に潜入させた平野[人外協の〜中略〜走る漢]幸治氏が庶務の合間にその後の支部への工作状況の報告も兼ねてエリヌス仙台を訪れたため、これを歓待し親交を深めるのが今回の目的だ。あくまで非合法な例会であり、外部に漏れることは許されない。主席派を標榜しながら、実は次期主席の座を狙っている中谷氏も臨席しているのだ。 とにかく、待ち合わせは静かに行われた・・・筈だった。

 邂逅から1時間ほどは平和だった。まさか、いずことも知れず今回の計画が漏れているとは思いもよらなかった。情報漏洩がまず身内から始まるのは、これまでの歴史が教訓を残している。酒を酌み交わし(小官は後任直があるため控えていた)、談笑する我々は、突然の公開回線からの干渉に驚愕した。万が一、そのようなことがあるとすればアイツ以外にいないと予測はしていたものの、今回は特に機密に気を使って来た。よもや、個人の表の顔の方の家庭電話に連絡を入れ、家人を動かして緊急連絡回線を開かせるとは。しかも、敵はその緊急連絡回線にトラップを入れ、割り込んで来たのだった。
 それは悪夢のような出来事だった。通話中に入るノイズを鑑みれば、不正に回線を使用していることは明らかだ。ノイズに埋もれた聞き取りにくい通信機の受話器から、奴は言った。

 「もしもし、信州の佐野だが・・・。」

 こうして、我々のささやかな計画は齟齬をきたした。こっそり密会をし、後で主席を悔しがらせてやろうと思っていたのに、事前に密会は白日のもとに曝け出されてしまう運命となってしまった。
 しかし主席がなんと言おうと、我々は例会を渇望しているのだ。民意が反映されることのない外聯組織の中で、我々はあくまで戦いつづける。

 決意を新たに、我々は気を取り直して飲み直すことにしたのだった。


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