『第壱號(通称アタックナンバー1)』作戦を敢行する「外聯軌道兵団」

撮影 外惑星聯合仙台駐在事務所連絡士官 阿部[在エリヌス郷土史研究家]和司

 

その時、外聯のキャパの手はふるえていた

 開戦時の劣勢を覆す為、オオサカへの衛星軌道から外聯軌道兵団による奇襲攻撃作戦が行われた。作戦名は『第壱號(通称アタックナンバー1)』

 動乱全体の流れより俯瞰すれば、結局はこの空前絶後の大作戦も戦局の流れを変えるには至らなかった。
 むしろ、外惑星聯合軍の方こそ多くを失ったとも言える。
 多くの中堅前線指揮官や実戦経験のある兵士をこの作戦で失った外惑星聯合軍は、ついにこの損失から立ち直ることができなかった。

 しかし、この作戦が人外協側に与えた精神的ショックは大きかった。
 外惑星聯合軍が、人外協本拠地を襲撃する技術力とノウハウを有していることを内外に証明したのだ。もはや地表は、オオサカは安全ではなかった。
 もっとも、一般兵士たちはそのような戦略的な見地からショックを受けたわけではなかった。
 彼らは、もっと即物的な恐怖、
「襲いくるピンクのクマ」の悪夢にうなされ続けたという。

 上の写真は、外惑星聯合仙台駐在事務所連絡士官 阿部和司氏により撮影されたものである。
 戦後ベストセラーとなった、氏の外惑星動乱時の仙台駐在事務所業務日誌にも「アタックナンバー1」作戦従軍の様子は詳しい。
 詳しくは「日誌」を読んでもらうとして、以下の点にのみ触れたい。
 まず、写真が突進する軌道兵団を前からとらえていること。阿部氏は兵士よりも前方にいたことを示す。
 写真はひどく「ピンぼけ」である。もちろん、戦場で結婚式の記念撮影のようなフォーカスも露出もばっちりな写真を期待する方が愚かであろう。おそらく、阿部氏は戦場のまっただ中でアドレナリンどばどばな状態にあったのだろう。手の一つや二つ、ふるえて当然と言うものである。
 そしてこの作戦の写真はこれ一枚である。これは、CFを受け取った士官が、世紀の特ダネに興奮してファイルを壊してしまい、復元できたのはこれのみだったためと伝えられる。
 そんなキャパのエピソードじゃあるまいし、簡単にファイルが壊れたり1つだけ無事だったりする訳がなかろうなどど、物わかりの悪いことを言ってもらってはこまる。その士官は余程の静電気体質であったか、サイキック能力者であったのだろう。そういう事にしておこう。

 付記
 単なるパソコン音痴だった可能性もあるとのご指摘を、山形市の樋口幸一氏より受けた。
 さらに、氏より貴重なCFの取扱説明書を見せていただき、ぬれた手で扱った可能性もあると考えた。
 興奮のあまり、手に汗をかく人はたまに見る。

 しかし、いつの世にも口の悪いへそ曲がりはいるようだ。
 阿部氏は実際は強襲艦から一歩も出ていず、上の写真はねつ造であるという「とんでもない」説もある。
 彼らにかかれば、前からとらえていることも1枚しかないということも「不自然」となり、ピンぼけは「シェアウェアのDOGAという3Dアニメ作成ソフトで作ったあまり精度が高くない画像をPhoto Shop のフィルター処理でごまかした」という事になってしまう。
 まことに、ものは言いようである。
 戦争に勝ちさえすれば、どんな事を言ってもいいと言うのだろうか?
 

(中谷2号 記)

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