バクテリオファージ

村田[従五位下治部少輔]健治

 バクテリオファージは起死回生を目論む外惑星聯合軍によって、動乱末期に試作生産された、作業体KENSAN専用機で、機動爆雷のエンジンに二十本もの補助ブースタを組んで、弾頭がわりに馬鹿でかい衝角をつけた試作機であり、小惑星帯の作戦宙域で待機し、攻撃圏内に侵入した敵艦にラム戦をしかけた上で、突入後には衝角の中から作業用アームが展開し、作業体KENSANが直接敵艦に乗り込みメインコンピューターを改竄、自動操艦で敵基地に帰投させ自爆させるという、対基地攻撃用の兵器である。
 バクテリオファージの外壁は可視光線やレーダー波の反射を低く押さえるよう吸収剤で塗りかためられ、機体は極度の低温に保たれているため、赤外線を放射することもなく、もし敵のレーダー観測網に捕捉されたとしても、附近をめぐる小惑星と識別することは、困難となっている。
 また戦闘時には、巨大な衝角が機体の全てを覆い隠す鉄壁の防御盾となり、軌道前方からの攻撃に対しては完全な防御力を誇る反面、爆発的な加速力を実現するため、徹底的な質量軽減が行われ、二次加速時には外壁さえも補助ブースターごと切り離してしまうため、腹背からの攻撃に対しては極端な脆弱さも見せている。

撮影 外惑星聯合仙台駐在事務所連絡士官 阿部[在エリヌス郷土史研究家]和司

■■ 外聯”×”ぷれす。四月号もくじに戻る ■■
■■
TOP ■■