血と水晶の寄せる波


 砲撃に崩れた町の中、瓦礫をかき分けて君を捜す。
 何処に居る、その下に埋まっているのか? 壁に挟まれて動けずに、気を失って俺を呼べないのか? かき分けて押し退けて、君の姿を捜す。
 人の生死を分けるのは何時間だった? 何日だった? 何度だった?
 君が、命を奪われていいはずが無い。
 それとも、さっき足もとに有った肉の塊が君だったのか?

 それでも、君を捜す。君を捜す。君を捜す。
 きっと見つけ出して、君に口付ける。生きていても死んでいても。君を愛してる。



 もう少し大人になったら、組み立て方を教えると言ってもらった。
 その時に、その前にでもすぐ憶えられるように、自分の仕事の合間に、組み立て方を見せてくれる。難しそうだけれど、きっと憶えられる。

 目の前で、その建物に砲弾が落ちた。燃え上がる。みんな燃えて、直に爆発する。
 「ここがやられたら、逃げろ。荷物を守って町に戻って、次の奴に渡せ。」
 ここに来た時に言われていた。
 荷物を運ぶのが仕事だ。荷物を守るのが、次に渡すのが、自分の仕事だ。

 荷物を抱えて走りながら、大人たちのように叫ぶ。
 愛す、愛す、祖国を愛す。生在ろうと無かろうと、我ら等しく、我が祖国を愛す。



 終焉は近いのかもしれないが、総てが無駄なのかもしれないが。
 それでも、奪われたものは取り戻さねばならない。失った痛みは返さねばならない。この手からもぎ取られた愛には、この手でその手からもぎ落さねば。この痛みを敵に知らすために。

 人と人の争いではない、それは承知だ。
 だが、愛する者を先住の地を奪われて、ただ待ち、従うわけにはいかない。されるままにはなれない。
 愛している。愛している。愛している。だから口付ける。そして己が、これで死のうが生きようが。
 
71◇血と水晶の寄せる波◇完◇
◇DC27('25).10◇