終着の浜辺


目覚めるたび彼は穴をでて浜辺を歩く。
そのたびに波は死体をうち寄せている。

 水に膨れてどこかを魚に食われている。
 日にさらされ乾けば鳥が来てついばみ、
 波と砂に揉まれやがて体を崩していく。

骨が白く砕け風がその最後を運ぶまでを、
彼は満ちひく波際に立ちつくして眺める。

 ずっと、彼はそうしてきた。
 そしてふたたび穴にもどり、
 闇の底に顔をむけて眠る。


           終着の、浜辺。


 ある日運ばれた死体はまだ生きていて、
 それは顔をあげて彼を見そして死んだ。
 彼の全身を映す目が焦点をひらく様を、

つねと変わらずに見おろしながら、
彼はそれにとらえられたまま居た。
魚と日と鳥と波と砂と風と彼とが、
つねと変わらずに死体を消しさる、
彼はそれにとらえられたまま立つ。


          終着の、浜辺。
          死体は同じ顔。
          どれも同じ彼の姿。 
           
17◇終着の浜辺◇完◇
◇BD10('89).8◇LOVE FRIGHT◇(懸軍万里Project)