挿絵のページ

絵の勉強を始めてから約3年たったころ、初めて
仕事が舞い込んできた。

電話のなったところは事務所兼住宅で、私以外に
も絵描きがいたものだから当然そちらの仕事と思
っていた。ところが私を指名したからさあ大変。
6月にコスモスの絵が入った見開きの注文で、7
月中に仕上げてほしいとのことだったように記憶
している。

秋の花を梅雨の時期に描こうと言うのだから、コ
スモス探しに必死になった。以前から花のスケッ
チに行っていた、戸隠高原は7月下旬になるとコ
スモスが咲き始めるので、それまでの間イメージ
を膨らませたりして短期決戦で勝負した。結果は
まずまずで、平成5年秋の白泉社からのMOE別
冊カントリーノートの秋桜物語の見開きでデビュ
ーとなった。
今見るとはずかしくなるような絵な
のだが少しは上達したのだろうか?

コスモスの仕事が終わった直後、サンプルに渡し
てあった絵を貸してほしいと連絡があり、内容を
聞くと、表紙に使いたいとのことで思わずニヤリ
としたのを思い出す。その後連絡もなくしばらく
たったころ、とある通信教育の万葉集というもの
が届いた。ビデオと本が数冊あり、本の表紙すべ
てが以前長野県安曇野で私が描いた、なでしこの
花になっていた。原画もたいしたことはなかった
が、印刷のとき青が強すぎて冷たい感じになって
いた。
さあ、本も出たしあとは画料がいくらかな
と思っているといつまでたっても入金なし。担当
者に連絡してもはっきりせず、結局この絵はただ
で貸したという結果に終わった。小さな企画会社
などから下請けのような形で、駆け出しの絵描き
がこのようなことに会うのは決してめずらしくな
いそうだ。
この本は全部で20巻になる。
挿絵を入れることになったのだが、物や風景では
なく図形がメインになった。定規で線を引くので
はなくフリーハンドでまっすぐに引いていったり
円をかいたりした。ところが、楕円となるとコン
パスは使えず、結局方眼紙に関数の要領で点をう
って、それを結んで楕円を仕上げた。技術家庭の
授業であった、斜投影法や等角投影法などの製図
方法を利用して描き、中学校時代に戻ったように
いろいろと勉強をしたのを覚えている。

今思い出すととても懐かしく、楽しいもので自分
自身いい勉強になった。あの頃、あんなに嫌いだ
った数学が面白く思えたのは歳のせいだろうか?
アメ横まんじゅうの包装紙です。東京の御徒町の近くで
お買い求めになれます。(現在は不明)
この絵を描いた時はアメ横に行って、実際に人ごみを見
てから、透明水彩と不透明水彩とをおりまぜて描きあげ
た。原画とはかなり違う雰囲気になっている。
(株)オオノシルクで販売されているタイシルクのパッケージ
用のイラストです。都内量販店などで販売されております。
透明水彩と不透明水彩、下絵に墨を使用しております。





この絵は俵 万智作、安野光雅絵の『そこま
での空』(河出書房新社発行)という本に出
ている。私は以前、しろつめくさを描いてほ
しいといわれて、筑摩書房から出ている「恋
の歌」という本を渡された。その本の装丁に
はしろつめくさが描かれていて、このような
感じでといわれた。

私は、志賀高原で咲いていたしろつめくさを
絵にしてみた。絵を渡してから何の音沙汰も
ないので不採用だと思っていたら、ある知人
から「長嶺君の絵が出ているよ」といわれて
びっくり。本の最後のページが私の絵になっ
ていた。何人の方が最後のページの絵は違う
と思っただろうか。1枚だけが私のものにな
っていたので、前のページから開いても変に
感じなかった人もいるかもしれない。

この本の1番最後に絵の索引があり、安野光
雅氏の絵はすべてに題名がついているが、私
のものは作.長嶺太となっている。




私は野の花が好きで、雑草と呼ばれるようなもの
が一番いいと思っている。子供の頃はよく草で足
を切ったり、その草を利用して友達といろんな遊
びをしたりした。
今思うと、その頃は、子供より草の背が高かった
ので、草の中で生活しているような感じがした。
今でもその頃が懐かしく、これからも子供時代の
目線を大事にしたいと思っている。

この花は群馬県の赤城山麓で描いた。茎の根元は
意外と太いのだが先に行くにつれて細くなり、風
が吹くと体ごと倒れるような感じがする。この絵
を描いた日は風もなく元気に立っていてくれた。
しかし、時期が少し早かったのか花が満開ではな
かったのが残念だ。

キンポウゲ漢字で書くと「金鳳花」と書き、また
「ウマノアシガタ」ともいう。この絵は、群馬県
の赤城山麓で描いた。ちょうどゴールデンウィー
クを過ぎたころで、県道から一歩はいると人通り
も少なく、汗ばむほどの陽気でキンポウゲがあっ
ちこっちで満開になっていた。図鑑の写真で見る
ともっと大きいようにも思えるのだが実物は小さ
なもので、黄色い花がかわいらしく、また見に来
たいと思わせてくれるものだった。