#197 体脂肪も気になる日本人

2002/05/07

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 世界がもし100人の村だったら、という話がある。世界63億の人間を100人としたら、それぞれの人間がどのくらいいるかという話である。61人がアジア人だとか、10人が同性愛者だとか、大学教育を受けたのは1人だけだとか、さまざまな例を挙げることで、人口問題、宗教問題、食糧問題、人権問題などについて考えさせるといったものである。もともとは1通のメールが形を変えたり内容を付け加えたりされたりしながら人から人へ伝承されていったものだそうで、こういったものを「ネットロア」と言うのだそうだ。最近書籍にもなったらしく、書店に平積みされていたりする。

 その話によれば、衣食住に困らない人は25人つまり世界人口の1/4しかいないということであるが、今この文章を読んでいる大多数の日本人は、恐らくその25人に属する人であろう。そればかりかもしかしたら、食べ過ぎや運動不足で、体重が増えることを気にしている人も多いかも知れない。かくいう私や妻も、そういう人である。

 私はともかく妻の方は、贔屓目に見なくても、体重を気にするほど太っている方ではないし、ダイエットのためにつけている「てくてくエンジェル」も、毎日完璧にノルマをこなすために外出していない日でも夜23時から部屋の中を6000歩も歩いてしまうほど勤勉な人なのだが、最近、間食が減っているにもかかわらず体重が増えている、体重計がおかしいのではないか、と言ってきた。体重は一日のうちでもかなり変化するので、あまり細かい動きを気にしても仕方がないと思うのだが、確かに今使っている体重計は、水を飲んだ後に計ると増えるはずの体重が減ったりするなど、精度の面でちょっと問題があるかも知れないというのもまた事実である。というわけで、街に買い物に出た折りに、体重計を買い換えることにした。

 体重計と言っても、体重を計るだけのものはむしろ少なく、最近のものは体脂肪も計測できるものがむしろ主流になっているようだ。足を揃えて乗る部分に金属の電極があり、素足で乗ると体重とともに体脂肪率を計算して表示してくれると言ったものである。更に凝ったものになると、ハンドルのようなものがついており、体重計に乗るときに両手でハンドルを握ることで内臓脂肪の量を出したりするものや、一定期間の体重や体脂肪を自動的に記録して健康管理に役立てるといったものまである。そこまで凝った機能はいらないので、とりあえず体脂肪が計れるもののうち、一番安いものを選んで買った。税込み7014円也。

 体脂肪をより厳密に計算するには、水中体重法と言って、要するに水中での体重を計ることによって、体全体の密度から脂肪率を計算するという方法があるのだが、さすがにそんな手間のかかることはなかなかできないので、より簡単に計測するために、両足に接した電極の間のインピーダンスを計測することによって体脂肪を計算する方法が一般的なようである。これをBIA法と言うらしい。

 体重計を使ったBIA法での体脂肪率の測定には、体重のほか、身長や性別、大人か子供かを変数として入力する必要がある。計測のたびにこれらのデータをいちいち入れるのは手間がかかるため、あらかじめ入力しておいたデータを登録し、体重計の後部についているボタンをつま先で蹴ると、それらが呼び出されるようになっている。私と妻のデータを入力して、早速計測してみる。結果はここには書かないが、体重はやや標準より多めながら、体脂肪については幸いにして、標準よりもやや少な目の数字が出ている。

 BIA法による体脂肪測定は、体水分の分布によって変化するらしく、一日のうちでも測る時期によって変化するため、入浴後就寝前に計測するのがよいらしい。体重計メーカーのページを見てみると、ほかにも体脂肪に関するQ&Aがいろいろと載っている。

Q:同じBIA方式で、なぜメーカによって差があるのですか?
A:(いろいろな測定方法についての説明のあと)残念なことに、現在の技術では体脂肪を正確に測定する技術がありません。したがいまして、どちらが正確かという議論には決着がつきません。現状ではお客様にお決めいただくより他ありません(これはもう、どちらの測定結果が好きか嫌いかの議論のようなものです)。

 気にする人はえらく細かいことまで気になるらしく、なんだかメーカーの回答も半ば投げやりな感じがする。かくも体脂肪を気にする日本人は、ある意味やはり幸福な国民なのかも知れない。


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