#111 ビデオデッキを買った

2000/03/31

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 週末に久しぶりにビデオでも見ようかと思ったら、ビデオが全く映らなくなっていた。どのテープを入れても、灰色の砂嵐しか映らないようになってしまった。前に見た時は何もおかしいところはなかったのに、全く突然のことである。

 私の家にあるビデオデッキは、正確にはビデオ付のテレビである。4年と少し前に3万円ほどで買ったものである。それまでは実家のお古のビデオを使っていたのだが、さすがに長年使ってきたせいかあちこち調子が悪く、あるときビデオテープを巻き込んで昇天してしまった。その当時使っていたテレビの方も、リモコンのない14インチのテレビで、映像はビデオ経由にしてビデオのリモコンでチャンネルを操作していたのだが、電源だけはどうしようもなかったので、コンセントに手元スイッチをかませて、それを使ってオンオフをしていたという乱暴かつ情けない使い方をしていた。というわけで、ビデオデッキの故障と同時にテレビの更新も兼ねてビデオ付テレビを購入したのである。

 ビデオ付テレビはビデオデッキとテレビが分離している場合よりも場所をとらない点ではスマートなのだが、使ってみると色々不便なことも多い。モノにもよるが、私の持っているタイプのそれはチューナーがテレビとビデオと共通で一つしかないので、テレビを見ながらビデオの方で裏番組を録画するということができない。何よりビデオを巻戻すにもいちいちテレビをつけなくてはならないというのも煩わしい。

 そんなビデオ付テレビも5年目にしてついに壊れてしまった。幸いテレビの機能の方は引続き問題なく使えるのだが、修理するには時間もお金もかかりそうである。妻も「折角の週末だからゆっくりビデオを見たかったのに」と催促する。そんなわけで、早速にもビデオデッキを単独で購入することにしたのである。

 週末の新聞にはさまっている大量の広告から電気店の広告を選んで眺めて、商品を物色する。と言っても妻も私もビデオデッキについてはあまりうるさいことは言わず「録画と再生ができればいい」程度の要望しかない。その程度であれば今は2万円もしないで売っていたりする。巻戻しが速いとか、3倍モードでも綺麗だとか、Gコードだとか、あるに越したことはない便利な機能も確かにあるけれど、なければないで特別困ることもない。

 というわけで、妻が食料品の買物に出ている間に、私は電気屋をあちこち回ってみる。あれこれ比較検討した結果、A社の製品で13,800円という安さで上記の機能をすべて満たすものを見つけたので、早速購入することに決めた。今の日本、パソコン以外の家電は驚くほど安く買えるものだなあと思う。

 今まではビデオがテレビに内蔵されていたので、今度はビデオを置く場所を考えなくてはならない。しかし買ってきたビデオは機能もそれほど多くないせいか、大きさもすこぶる小さい。隣に置いてあるカセットラックの上にちょうど納まりよく置くことができた。

 ケーブル類の接続についても難しいことは何もない。今までビデオ付テレビに直接繋がっていたアンテナからの同軸ケーブルをビデオの入力に挿し、同梱の同軸ケーブルでビデオデッキからの出力とテレビへの入力を繋ぎ、コンセントを挿せばとりあえずOKである。

 ただちょっと困ったことに、せっかくビデオの音声がステレオ対応なのに、実はテレビの方はモノラルなのである。従ってそのままではステレオの音声を楽しむことはできない。まあ今までもそうだったのだから別に構わないのだが、ちょっとした工夫をすれば、音声をステレオで出せることに気がついた。

 まずビデオの映像出力端子とテレビの映像入力端子を結び、テレビは外部入力モードにしてビデオの映像を映すようにする。そしてビデオの音声出力端子は隣にあるステレオコンポの入力端子に繋ぎ、コンポをやはり外部入力モードにして、コンポから音を流すのである。かくしてビデオとテレビとコンポをフルに使えば、ステレオの音声も楽しめると言うわけである。まあこれはあくまで裏技的なものであり、今度テレビを更新する時には、普通にステレオで音が出るテレビを買うことにしよう。

 そんな次第で、週末は新しいビデオデッキで映画のビデオを二人で見て過ごした。大林宣彦監督の「異人たちとの夏」。両親との別れのシーンでは、あまつさえ二人して感動して泣いてしまったのであった。こんな週末も悪くないもんである。


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