「宇宙海賊とヒミツの星」プロローグ２ 「宇宙海賊とヒミツの星」プロローグ２トップページ > ページシアター > 宇宙海賊とヒミツの星 > プロローグ２ 【公演データ】
字幕「１６９８年」またザッピングし、音楽がかかる。
字幕「１８３７年 １１月 スコットランド エディンバラ」
明転。音楽が消え、屋敷の中。この家の夫人、アリシア・スコットが部屋をウロウロしながら思考を
巡らせている。手には一枚の紙。何か閃き部屋の端(上手)のピアノへ。鼻歌混じりに鍵盤を鳴らしてみるが、首を振りため息。再び部屋をウロウロ。そこへ下手から夫のジョンと女中のエイミーが入って来る。
ジョン 「アリシア。」
アリシア気づかない。ジョン、エイミーに
ジョン 「ずっとあんな感じ？」
エイミー 「はい、一日中でございます。」
ジョン、少し大きな声で
ジョン 「アリシア。」
アリシアやっと気づく
アリシア 「ジョン！お帰りなさい。いやだわ気づかなかった。」
ジョン 「馬車の音にも？」
アリシア 「ごめんなさい、つい夢中になってしまって。」
エイミー 「旦那様、お帽子と上着を。」
ジョン 「ありがとう。」
エイミー、ジョンの帽子と上着を受け取りながら。
エイミー 「お紅茶でも？」
ジョン 「いいね、頼む。アリシアは？」
アリシア 「私もお願い、エイミー。」
エイミー 「かしこまりました。」
エイミー、下手にハケる。
アリシア 「議会の様子はいかがでした？」
ジョン 「中々落ち着かないよ。ヴィクトリア女王がご即位されてまだ半年だ。無理もない。」
アリシア 「どんな時代になるのでしょうね。」
ジョン 「これからの時代は産業だ。世界を牽引しようと国中が躍起になっている。」
アリシア 「また戦争が？」
ジョン 「…恐らくは…だが明るい兆しもある。」
アリシア 「明るい兆し？」
ジョン 「君の様に女性の作曲家が認められる世の中になって来た。」
アリシア 「それはあなたの力も大きいわ。」
ジョン 「いや女性がもっと活躍できる時代が必ず来る。」
アリシア 「男顔負けの？」
ジョン 「顔負けは…ちょっと困るが。」
二人クスっと笑う。
ジョン 「そうそう、リットン卿にお会いしたんだが、君の曲をたいそう気に入っていたよ。」
アリシア 「まあ！」
ジョン 「ご夫人に一曲作って欲しいそうだ。」
アリシア 「それは光栄だわ！尚更この曲を早く完成させないと。」
ジョン 「いつになく難航している様だね。」
アリシア 「ええ。彼のこの詩、心の奥まで響くのに、見合うメロディーがどうしても…」
ジョン、アリシアから詩の書かれた紙を拝借し目を通す。
ジョン 「ウイリアム・ダグラス。」
照明、上手と下手が別明かりに。アリシアとジョンは上手明かり、下手明かりにはウイリアム。
アリシア 「彼がどれだけ愛しい人を想っていたのか、この詩を読めば容易に想像できるわ。その想いと、そして…彼女と引き裂かれた悲しみと。」
ウイリアム 「どうして…どうしてこんな事に…アニー…アニー…」
ウイリアム、両手で頭を抱え膝をつく。
アリシア 「あぁ…彼に話が聞けたら…」
ジョン 「確かにそれができれば一番だが…１００年も前の人じゃ、どうにも…」
アリシア 「ええ…」
下手の明かりが消え、ウイリアムがハケる。
アリシア 「この詩が書かれてから１４０年。もっと彼の想いに近づけたら…」
ジョン 「彼の想いか…。そうか、それなら…」
部屋明かりに戻る。
ジョン 「行ってみたらどうだ？」
アリシア 「え？」
ジョン 「詩の中に出て来るマクスウェルトンの丘。あそこは確か…」
アリシア 「カークランド。」
ジョン 「馬車と汽車で 丸一日かかるが…」
アリシア 「ジョン！名案よ！」
ジョン 「今から手配すれば週末には。」
アリシア 「すぐに準備するわ。エイミー！」
ジョン 「アリシア。」
アリシア 「わかってます。あなたはお仕事。」
ジョン 「いつもすまない。」
アリシア 「大丈夫。うってつけの付き人がいるわ。」
エイミーが戻って来る。
エイミー 「奥様、まだお紅茶は…」
アリシア 「エイミー。週末、一緒にカークランドに行きましょう。」
エイミー 「カ…カークランドでございますか？！」
ジョン 「そうか、確かエイミーの故郷は…」
エイミー 「カークランドでございます！」
アリシア 「これ以上頼もしい案内人はいないわ。」
ジョン 「私の代わりに頼む。」
エイミー 「かしこまりました。」
ジョン 「他にも付き人を？女性だけでは…」
アリシア 「大丈夫。そういう時代が来てますから。」
ジョン、頷く。中央サス。アリシアが入る。
アリシア 「ウィリアム。あなたの想いに、会いに行きます。」
（作：松本じんや／写真：はらでぃ）
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