サーメの人々
と雑学
  サーメの人々は氷河期にトナカイの群を追いつつ現在のフィンランド及び東カレリアに移り住んだと考えられており、現在はノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアのコラ半島にまたがる北極圏の地(サーメランド、かつてはラップランドとよばれた)に住んでいる。

サーメの人口は遺伝子、言語、本人の希望など様々な見地から分類・調査がなされているため公式な統計は定かではないが、約75000人といわれている。同化の過程が原因でサーメ人と認めなかったり公言しないものいるため、北欧のサーメ議会ではサーメ人の定義に関し客観、主観両要素を混ぜ合わせた独自の基準を設けている。

サーメ語はウラル語族・フィン-ウゴル語族に属し、フィンランド語やエストニア語、ハンガリー語などのバルト海フィンランド語と近い関係にある。サーメ語も幾種類かに分類することができるが、北サーメ語が最も多く使われている。各サーメ語が使用される地域の境は国境とは何ら関係がない。
サーメランドのいくつかの小学校ではサーメ語を選択科目として教えている。カウトケイノとカラショークには、サーメ人のための高等学校がある。また、北欧諸国の大学のなかにはサーメの語学や文化の講座を設けているところもある。

生活圏は広大な土地におよび、多種多様な文化・経済的背景を持つ社会を築いている。かつてのサーメ社会は、siidasと呼ばれる数家族が協力しながら生活をする集合体から構成され、主に自然の恵みや獲物を分け合い管理を行なっていた。各siidasはその領地内で狩猟や魚を獲る権利を所有し、自然や天然資源との直接的関わりを基盤に独自の経済を構築してきた。北極圏地域の資源や自然環境機能に適応しながらの生活は、トナカイの群を放牧し、農産物や魚を交換するくらしに垣間見ることができる。ノルウェーでは、特定の地区におけるサーメ人のトナカイ放牧に関する権利が土地の所有者が誰であるかに関係なく保証されている。

自然との共存は、サーメの人々の独自なシャーマニズム的かつアニミズム的特徴を持つ世界観を創り出した。かつてサーメの世界では自然界のすべてに魂が宿ると信じられていた。未来を予知したり狩猟運を言い当てることのできる者がおり、こうした才能をもつ者はサーメ社会の中でいわゆるシャーマンとして迎えられた。社会道徳の中のリーダー的立場にあるシャーマンは、独自の強い精神力と霊的能力とで様々な問題を解決した。シャーマンは同時に神霊治療家やソーシャルワーカー、ストーリーテラーといった存在でもあった。サーメ社会では動物や植物を用いた民間療法もあったが、そこで治療方法が得られない場合にはシャーマンの元へ赴き助けを求めた。シャーマンは一種のトランス状態に身を置き霊を呼び覚まし、病や死から人々を守ることができるとされていた。

「ヨイク」はサーメの伝統的な歌唱として一般に知られているが、実際には数ある歌唱スタイルのひとつにすぎない。ヨイクはアメリカンインディアンの詠唱と比較されることが多く、確かに聴く耳に共通したものを持つ。しかし、題材の本質を歌で表現しようとする試みがヨイクであり、単に人間や場所などの事象を歌で形容することではない。ヨイクの歌唱法は歌い手により大きく異なり、サーメの精神性がテーマとなっている。

サーメの人々は先住民族として、多様な文化が存在するノルウェーにおいて、確かな地位を築いてきているものの、法律をはじめ様々な場面における行政上の問題など、取り組むべき課題は残されている。必要に応じサーメの政策を取りいれていくことは将来的にも重要なことだ。サーメ議会はサーメ社会発展のためにもノルウェー社会において中心的役割を果たす地位を築かなければならない。現在のサーメ文化への関心の高まりと、政府のマイノリティー政策の取組みを見ると、独自の文化を持つスカンジナビアの少数民族としてサーメ社会の発展には大きな期待を寄せることができる。

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