アンデルセンの5選
作者の自伝的要素も
アンデルセン(1805〜75)は、生涯で150編以上もの童話を書いた。主人公は、小さな動物や草花、おもちゃ、人間でも、貧しい人々やいたいけな子供などが殆どである。お話の内容は、ユーモラスで楽しいものから、切なく悲しいもの、幻想的なもの、とさまざまだが、いずれも、アンデルセンらしい美しい抒情が流れている。ここでは、アンデルセンの代表作のうちから5編を紹介する。
裸の王様
  1837年に執筆された。「ばかな人にはみえないが、かしこい人にはちゃんと見ることができる服を王様のために作りましょう」と、ペテン師が服を作るふりをした。
  本当は服など影も形もないのだが、王様も家来たちも、賢い人にみられたいために服が見えるふりをした。
  こうして「新しい服を着た」王様は町をねり歩くが、正直な子どもの目には、やっぱり王様は裸にしか見えなかった。
大人のごまかしを子どもが暴く
「裸の王様」のイラスト
マッチ売りの少女
  雪の降りしきる大みそかの晩、みすぼらしいなりをしたマッチ売りの少女が、はだしで町をあるいていた。家々の窓からは明かりがもれ、ガチョウの焼き肉のにおいがしてくる。マッチが売れなかったので、家に帰ったら、お父さんにぶたれるだろう……。少女は通りにならぶ家のあいだに身を寄せてうずくまって、こごえる手をあたためようと、エプロンのポケットからマッチの束を出してすりはじめた。
  1本目−少女はいつのまにかストーブの前にいるような気がした。2本目−目の前の壁がすきとおり、ガチョウの焼き肉がのったテーブルがあらわれた。3本目−少女は何千というろうそくが飾られたクリスマスツリーの下にいた。でも、マッチの火が消える瞬間、明るい星になり、そのうちのひとつが流れた。4本目−あたりがパッと明るくなったと思ったら、その光の中におばあちゃんが立っていた。「おばあちゃん、わたしを連れてって!」と少女は叫んで、残りのマッチを全部すった。火が消えるとおばあちゃんが行ってしまうと思ったからだ。すると、おばあちゃんは少女をだきあげ、高く高く天上へ昇っていった。
 あくる朝、人々は、マッチを手にしたまま死んでいる少女を発見したが、この少女が前の晩どんなに美しいものを見たか、おばあさんといっしょにどんなに楽しい新年をむかえたかは、だれも知らなかった。→薄幸の少女に天上での安らぎを用意=自伝でもある

みにくいアヒルの子
  ある夏の日に、1羽のアヒルのお母さんが,ひなをかえしたが、なかなか割れなかった最後の卵からかえったひなだけは、なりが大きく、みばがあまりよくなかったので、他のひなから、いじめられた。だれからも相手にされないので、みんな自分がみにくいからだと思いこみ、生け垣を越えて外の世界へと飛び出してゆく。
 秋の終わりの夕方、暖かな国へ旅立とうとする白鳥の群れに出会う。その美しい姿に感心して、あの鳥の仲間に入れたらどんなに幸せだろうと思いながら、きびしい冬の間、多くの苦労や悲しみを耐え忍ばなければならなかった。
  春を迎える日、アヒルの子はふと羽ばたいてみると、からだがふわっと空に浮かび、とある庭にやってきた。すると堀から2、3羽の白鳥があらわれた。見覚えのあるその美しい鳥を見て、アヒルの子は悲しくなった。「みにくいぼくが近づいたら、殺されるかもしれない。 みんなからひどい目にあうより、いくらましだかしれない」と思いながら白鳥の方へ泳いでいくと、白鳥たちも近づいてきた。「さあ、殺して!」と、あわれなアヒルの子は頭を水の上に垂れると、そこには1羽の白鳥の姿が映っていた。やがて、大きな白鳥たちが回りにやってきて、新参の若い白鳥を仲間にいれてくれた。人々は、「新しい白鳥が一番きれいだ」と言ってくれるようになり、かつてのみにくいアヒルの子は、とても幸せな、美しい白鳥になった。→アンデルセンの分身

すずの兵隊(原題「しっかり者の錫の兵隊」
  ある小さな男の子が、誕生日にすずの兵隊のおもちゃをもらった。1本のスプーンを溶かして作ったもので25人揃っていたが、1人だけは足が1本しかなかった。この兵隊が一番おしまいに型に流しこまれ、すずが足りなくなったからだ。それでもこの兵隊は、一本足のまま、しっかり立っていた。
  男の子は、ほかに、紙でできたお城のおもちゃももらった。そのお城の入り口には、ひとりの踊り子が片足を思いきり上げて踊っていた。一本足の兵隊は、その踊り子が自分と同じように一本足で立っているので、お嫁さんにちょうどいいと思い、その夜は踊り子から目をはなさずに過ごした。
  あくる朝、窓辺に置かれた一本足の兵隊は、すきま風で窓があいたひょうしに、4階から下の往来に落ちてしまった。それを、通りかかったわんぱく小僧が見つけて、新聞紙で作った船に乗せて溝に流した。掘割に落ちたすずの兵隊は水の中に沈んで、魚に飲みこまれた。やがてその魚は釣られ、市場である家に買われて、そこのお手伝いさんに包丁で腹を切り開かれるはめになった。
  すずの兵隊が現れてびっくりしたお手伝いさんは、それを見せようと家の人たちのところにもっていったが、そこにいたのはもとの持ち主の男の子たちだった。テーブルには、あのお城も乗っていて、踊り子はあいかわらず足を高く上げていた。一本足の兵隊がじっと踊り子を見つめていると、とつぜん小さい子供のひとりが兵隊をつかんでストーブの中にほうりこんだ。兵隊は自分の身体が溶けていくのを感じたが、それでも、鉄砲をかついでじっと立っていた。そのとき、ふいに窓が開いて風が吹きこみ、踊り子がひらひらとストーブの中の兵隊のところへとんできて、めらめらと燃えあがった。やがて、すずの兵隊もすっかり溶けて、ハート型の小さなかたまりになった。かたわらには、踊り子の金モールだけが黒こげで残っていた。→おもちゃの兵隊のせつない恋の物語
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