一つ眼巨人キュクロプス
「オデッセイア」から
歴史家トゥキディデスは、一つ眼の巨人キュクロプス(丸い目という意味)をシチリアの最も古い先住民として挙げている。伝説によれば、彼らの一部はエトナの地下にあるヘファイストスの鍛冶工房で働き、他は洞窟住まいの粗野な羊飼いであった。(*7)
アーチ・トレツツァ、キュクロプスの岩
アーチ・トレツツァ、キュクロプスの岩
  ホメロスの叙事詩『オデッセイア』によれば、トロイア戦争に参加し、木馬作戦など、英雄的活躍をし、10年に及んだ戦の後もさらに10年間、地中海各地で流浪の旅を続けたオデツセウス(英名はユリシーズ)が、一つ眼の巨人に食べられそうになった危機を機略によって脱するエピソードもこの付近が舞台?
  ある浜に上陸したオデッセウスの一行は留守の岩屋に入り、うまそうなチーズを見つけた。好奇心から主の帰りを待ち受けたが、帰って来た巨人ポリュフェモスは洞窟の入口を塞ぐと、オデッセウスの部下二人を食べてしまう。
  オデツセウスはある晩、手持ちのぶどう酒を彼にすすめて酔わせ、名前を聞かれると「ウーティス」(誰でもないという代名詞)だと答えた。そして酔って寝入った彼の一つ眼に、先を尖らせて真っ赤に焼いたオリーヴの木を突き刺した。悲鳴を聞いた巨人族の仲間が駆けつけたが、誰の仕業かと尋ねても、彼が「ウーティス」と答えるだけなので仕方がないと引きあげていった。
  翌朝、羊を岩屋から出すとき、ポリュフェモスは眼の痛みをこらえつつ、憎い「ウーティス」らをとり逃がすまいと、羊の背を手でまさぐりながら一頭一頭送り出したが、オデッセウスらは羊の腹にしがみついてうまく脱出に成功した。そして、勝ち誇ったようにタンカを切って一つ眼巨人を逆上させる。
  「おぬしの一つ眼をつぶせし者は、オデッセウスなり!」それを耳にしたポリュフェモスは、岩を海に向かって力任せに投げつけた。それらの岩々は、今日でもなおアーチ・トレツツァの浅瀬に点々としている。
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