ショーンガウ
「鞭打たれるキリスト」
アルプスの山並みを前方に望む風光明媚なショーンガウは、「聖職者の土地」と呼ばれたこーの一帯の中心地だった。中世、多くの聖職者が清らかな白然に恵まれたこの地に移り住み、町には現在も当時の教会や修道院、礼拝堂が数多く見られる。
  中でも、マリア昇天教会と聖霊教会は、多くの芸術家を輩出した近郊のヴェッソブルン出身の建築家や画家たちの手によるもので、内部は繊細なスタッコ装飾で華麗に彩られている。町はまた、古代ローマの、グラウディア街道が通っていたことから、中世には交易都市としても繁栄した。人口約1万1000、酪農が中心の静かな町に、教会の荘厳な鐘がいっせいに鳴り響くと、キリスト教に無縁な者も、敬度な気持ちにさせられる。「聖職者の土地」は旅人をそんな気分にさせる不思議な魅力に溢れている。
教会の美しい外壁
教会の美しい外壁(1725年)
外からは想像できない内部
外からは想像できない内部
ヴィース教会全景
ヴィース教会全景          top .

  アウクスブルクから南へ80キロ、シュタインガーデンで、ロマンチック街道から外れて東南方に入ると、緑の牧草地の中にヴィース教会の優雅な姿が現れる。正式の名は「ヴィースにある鞭打たれるキリストの巡礼教会」である。ヴィースとは牧草地という意味。
  1738年のこと、当地の農家の婦人が、シュタインガーデンの修道院で挨をかぷったままになっていた「鞭打たれるキリスト」の木像をもらい受けて来た。その像は、8年前に制作されたまま放置されていた。その像を牧草地の中にあった小さな礼拝堂に安置したところ、朝な朝な木像の頗に水滴があふれ出ているという不思議なことが起こった。それは奇跡だ、鞭打たれるキリスト様が泣いていらっしゃるのだというわけで、うわさは広まり、人々が病気平癒などを祈願しにやって来るようになった。
  ショックを受けたシュタインガーデンの修道院長は、尊い御像に対し恐れ多いことをしてしまったと後悔し、野中の小さな礼拝堂の代わりに立派な巡礼教会を建てようと発願する。そして先頭に立って一般から浄財を集め、建築資金を造りだした。
  かくしてヴィース巡礼教会は1754年に献堂式が、オルガンを設置するなどの内部工事が進められて、1757年に完成した。(*6)