ヤガーばあさん
ロシア民話
民語は、たとえそれが作り語であっても、現実とまったく無関係のものではない。ここでは、民話の世界から、ロシア人の人間性を形作る要素を探ってみることにしよう。(*7)
臼に乗り杵を振り箒で足跡を消しながらやってくるヤガーばあさん
臼に乗り杵を振り箒で足跡を消しながらやってくるヤガーばあさん (*6)
  まずは、民話の舞台となる風景。ロシアの民話の主な舞台となるのは、昔からロシア人の生活に欠かせないもの「深い森」である。ロシアの森は平らな大地の上にどこまでも広がる。「森のそばに住めば、飢え知らず」とか「森の中を歩くことは鼻先に死を見ること」など、森に関することわざがロシアにはたくさんある。森のほかには、小麦畑、大麦畑、湖なども多く登場する。そして、ロシア人の「山」のイメージは、たいてい異世界への境界線といった意味を持ち、そこには木は生えておらず、切り立った崖で行く人の進路を阻むものなのだ。
定番の登場人物:
  ロシアの民話にもパターンがある。まず、これは世界共通なのかもしれないが、「昔々あるところに」で始まる。次に主人公が旅に出る。目的は、命の水、若返りのリンゴ、火の馬嫁とりとさまざまだ。主人公は幾多の試練を乗り越えて、最後は目的のものを手に入れてハッピーエンド。こんな筋立てに登場するアイテムは身につける服から始まって、武器、入れ物、動物の体の一部、楽器など。主人公が助けた動物とか、道で出会った老人やバーバ・ヤガー(ヤガーばあさん)が不思議なアイテムをくれたり、アドバイスをしてくれたりするというストーリーだ。
バーバ・ヤガーの家
バーバ・ヤガーの家
バーバ・ヤガーというのは、ロシア民話の中によく出てくる妖婆だ。
  日本の鬼婆と同じように、小さい子どもをさらって食べたりする。だが、善玉を演ずることもある。主人公を肋け、役に立つアイテムを渡したりするのである。
  バーバ・ヤガーの住む家はいつも同じで、必ず深い森の奥の空き地にあり、鶏の足の上に建つ小さな小屋で、くるくると回っている。そして、「小屋よ、森に背を向け、こちらを前にして止まれ」と言わないと、戸が開かない。
  バーバ・ヤガーが森の中から登場するときは、臼に乗って杵でこぎ、ほうきで跡を消しながら現れる。ヤガーばあさんは異世界との境界を守る番人だという説もある。ちなみに、ムソルグスキーの『展覧会の絵』の中に、「鶏の足の上に建つ小屋」という曲があるが、これはバーバ・ヤガーの家のことだ。
top