金属アレルギー

金属アレルギーの原因と症状

 金属アレルギーとは直接金属によってアレルギー反応が起きるのではなく、次のような作用によって症状が出ます。
 まず金属から溶け出た陽イオン(Mn+)が直接触れている部分や、あるいは唾液を介して経口的に血液中に溶け込み、体の他の部位へ運ばれます。

 皮膚や粘膜のタンパク質と金属イオンが結合し、体が本来もっていないタイプのタンパク質に変化します。このタンパク質に対して免疫細胞が過剰に反応するとアレルギーが起こります。

口の中に現れる症状

接触皮膚(粘膜)炎
 金属と直接触れる部分に現れる炎症を指します。舌、クチビル、歯ぐきなどが赤くなったり、ただれたりします。また、痛みやかゆみを伴うこともあります。現れる症状と部位により、口内びらん(こうないびらん ; 口の粘膜のただれ)、歯肉炎(しにくえん)、舌炎(ぜつえん)、舌痛症(ぜっつうしょう)などに分けられます。
扁平苔癬(へんぺいたいせん)
 平らよりもやや盛り上がった苔状の赤い斑点が粘膜や舌にできるものです。レース模様の白い斑点、かぶれ、あるいは出血を伴うこともあります。原因が特定できずにみられることもあります。

全身に現れる症状

全身性接触皮膚炎
 直接触れる部位ではなく、血液を介してなど直接金属が触れていない部位にも現れる皮膚炎を指します。湿疹様のかぶれがみられることや、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう ; 手のひらや足の裏に小さな水ぶくれがたくさんでき、赤くただれるもの。手のひらと足の裏に限局するのは、汗と関連があるともいわれています)が挙げられます。
蕁麻疹(じんましん)
 短時間で赤い斑点が現れたり消えたりするもの。

金属アレルギーの検査

 歯科用の合金には様々な金属が用いられています(後述)。それらの中で、どの金属がアレルギーの原因となっているかを調べます。
 一般的な方法はパッチテストと呼ばれるものです。これは専用の絆創膏に、それぞれ種類の異なる金属の試薬を別々に滴下または塗布してから背中の皮膚に貼り付けます。2日、3日、1週間後に判定します。アレルギーの原因になる金属があれば、試薬を貼っていた部分の皮膚が赤くなり、陽性と判定します。
 パッチテストで反応が現れた場合には、口の中に入っている合金や、使用を考えている合金の元素分析を行います。一応、主だった成分の規格は決められていますが、微量に含まれる成分はそれを作っている会社によって異なっています(いわゆる商品の差別化)。X線マイクロアナライザ、X線光電子分光分析、蛍光X線分析などがあり、X線照射によって発生する特性がそれぞれの元素で違うことを利用しています。

治療法

 もし、X線を利用した元素分析が可能な場合には、その元素を含まない合金を用いることで金属アレルギーをなくすことができます。また、すでに口の中に入っている合金がアレルギーの原因となる元素を含んでいる場合には除去する必要があります。
 しかし、特定が不可能な場合には、口の中に入っている金属を全て除去し、金属以外の材料(レジンやポーセレン、すなわちプラスチックやセトモノ)で詰め物や被せ物をやり直す必要があります。
 また皮膚科の先生と協力してアレルギーを抑える治療もしていきます。

 

歯科用合金

 歯科以外でも使用されている金属を含め、アレルギーの原因になりやすく、またアレルギーの頻度も多いものはクロムコバルトニッケル水銀です。
 アレルギーの原因になりやすいけれども、アレルギー頻度の少ないものはロジウムパラジウムです。
 アレルギー性が稀なものはアルミニウム、マンガン、鉄、亜鉛、カドミウム、スズ、イリジウム、鉛です。
 他の金属と交叉性(ある原子でアレルギーとなるとき、構造の似た別のものでもアレルギーになること。この場合、原子番号が近いもの)があるものは(29番。ニッケルが28番、亜鉛が30番)、白金(78番。イリジウムが77番)、(79番。80番が水銀)、です。
 特殊なアレルギー性を示すものはベリリウム、ジルコニウム、銀です。

歯科用合金に使用されている金属のアレルギー陽性率

 下の表は歯科で使用頻度の多い金属順に並べてあります。健常者は全身的な病気を持っていない人、有病者はアレルギー性皮膚疾患の疑いがある人で、それぞれパッチテストでの陽性率を示します。

金属

健常者

有病者

0.1%

0.1%

1.0%

4.0%

1.3%

6.8%

パラジウム

2.2%

12.4%

亜鉛

1.7%

7.3%

スズ

6.3%

13.3%

水銀

11.1%

19.3%

ニッケル

4.2%

18.3%

クロム

5.1%

14.5%

コバルト

5.4%

14.8%

白金

1.0%

5.3%

歯科用合金の成分

 主として詰め物や被せ物に使われている合金の成分を示します。ただし、細かい数値やその他に含まれるわずかな量の金属については、作っている会社ごとに違いがあります。また、金属アレルギーは微量にしか含まれていない金属によっても起こりえます(以下同様)。

 現時点(2002年2月)で保険の金属は金銀パラジウム合金、銀合金、アマルガム合金になります。自費の金属を使えばアレルギーは起こらないということはありませんので、ご注意ください。

 主として金属床義歯(きんぞくしょうぎし ; 金属の骨組みがある入れ歯)に使われている合金の成分を示します。

 金属アレルギーや、アレルギー性皮膚炎などのアレルギー症状を持っている方は、金属床義歯を避けたほうが無難であるといえます。

 

トラブルの原因に戻る    ホーム    ↑上へ戻る


E-mail to FUMI's Dental Office