生後6ヵ月くらいに下の前歯が生え始めます。この時期にはガーゼや綿棒で拭く程度で十分です。7ヵ月の後半頃に上の前歯が生え始めます。この時期から歯ブラシに切り替えるようにします。ひざまくらに仰向けにした状態で磨くと良いでしょう。何本もまとめて磨くのではなく、1本ずつ磨くようにします。時間をかけると嫌がりますので、手早く磨いていきます。歯磨き粉は無理につける必要はありません。歯磨き粉の混じった唾を飲み込むと苦しくなってしまいます。コップに水を入れておき、歯ブラシをゆすぎながら使うと便利です。歯磨き粉はうがいもきちんとできるようになってから使い始めると良いでしょう。
だいたい、3〜4歳から自分で歯ブラシは持てるようになりますが、口の中で歯ブラシを動かすことと、きちんと歯が磨けていることは違います。自分できちんと磨けるようになるのは7〜8歳以降であると言われています(ただし、磨けるようになる時期には個人差があります)。教科書的には4〜5歳くらいまではお母さんが磨いてあげ、それ以降は自分で磨いた後にきちんと磨けているかチェックしてあげるようにするのが良いと言われています。
6歳以降には永久歯が生え始め、乳歯と交換していきます。歯並びの高さが不ぞろいになるため、でこぼこ部分にも歯ブラシがきちんと当たるように教えてあげることが大切です。
それぞれのライフスタイルがありますので、理想的に行なっていくのは難しいかもしれません。できる範囲の中で、無理なく工夫していくことも大切であるといえます。
研究によって多少異なりますが、乳歯で50%以上が虫歯になっているものは3歳児では上の前歯(61.2%)、次いで下の奥歯(51.5%)です。6歳児では下の奥歯(83.4%)、上の前歯(72.4%)、上の奥歯(61.8%)の順になります。
歯の面でみると、乳歯の虫歯は歯と歯の間の面にできやすいと言われています。この部分は低石灰化層(ていせっかいかそう)といって歯の硬さが不十分な層ができやすいことと関係しています。つまり、この部分が虫歯になると進みが早く、早めに治療しないと歯ぐきの境目の部分に拡大して大きくなっていき、歯を取り囲むような虫歯になってしまいます。
歯磨き時やチェック時に、磨きの状態だけでなく虫歯になっていないかどうかもチェックすると良いでしょう。乳歯や生えたばかりの永久歯は虫歯の進行が早いため、放置せずに歯科医院で診てもらうようにしてください。
糖分を摂取すると、虫歯の原因菌が酸に分解し、臨界点を超えると歯の結晶が溶けてカルシウムが出て行きます。これを脱灰(だっかい)といいます。時間が経つと唾に出て行ったカルシウムが再び歯の結晶に取り込まれます。これを再石灰化(さいせっかいか)といいます。また、唾の流れや、唾の緩衝能(かんしょうのう
; 酸性を中性に戻す働き)により、口の中は中性に戻っていきます。
歯は脱灰と再石灰化を繰り返していますが、再石灰化や唾の緩衝能が間に合わず、目で見てわかるほど脱灰の進んだ状態が虫歯になります。
おやつを1日に何回も食べたり、ジュースを小分け飲みすると、1日の間で口の中が酸性に傾く回数が多くなります。そうなると再石灰化や唾の緩衝能が追いつかずに虫歯になりやすくなります。
虫歯が多い場合には歯磨きだけではなく、食生活の改善として甘味制限も必要になってきます。これは甘いものを全て禁止するのではなく、1日の中で時間を決めて(回数を減らして)与えるようにします。
哺乳ビンにジュース、スポーツドリンク、乳酸飲料を入れて与えている場合には、前歯が虫歯になりやすくなります。これを哺乳ビンう蝕(うしょく
; 虫歯の専門的な呼び方)、あるいはボトル・カリエスといいます。コップで与えるように切り替える必要があります。