JST領域探索プログラム「量子情報科学」報告書(要旨)

この報告書(要旨)は正式報告書の最初の数ページからの抜粋です。

はじめに

 近年、量子情報処理の研究が注目されている。これは量子コンピューティングや量子暗号など、計り知れない可能性を秘め、社会的影響も大きいと目されているからである。この分野は情報理論と量子物理が結婚して生まれた突然変異とも言えるが、このような新しい分野は概して既存の分野の正統主流派からは生まれず、趨勢にとらわれず好奇心のみを拠り所とする自由な精神から生まれる。量子情報処理が日本でなく欧米の文化から生まれたことは象徴的である。

 いま量子コンピューティングは正統主流派になりかけている。しかるにその具体的実現を少しでも検討すると、相当時間を要する困難な課題であることがすぐ分かる。一方、量子暗号は原理面で本質的なことは解明され実験的にも現実性があるため、既に実用化を念頭に置いた目的基礎研究に移行している。

 このような両極端に挟まれたロードマップの空洞の中、量子情報処理研究にも新しい展開があり得るのではないか? これを議論するのがこの領域探索の目的である。今回、領域探索として、考察の軸足として、あるいは頭の片隅にでも意識に置きたいのは「量子多者間プロトコル」「量子ゲーム理論」それに「量子テレポーテーション」である。これらは「自己と非自己を区別するagent間の情報やりとり」という共通の側面を持ち、いずれも量子コンピューティングと違って大量の量子ビットが関わる大規模エンタングルメント制御が不要であり、また量子暗号と違ってまだまだ萌芽中の萌芽的研究の段階である。これらの研究が本当にプロミシングであるかどうかはまだわからないが、大きく花開く可能性はある。それが花開くかどうかは、量子コンピューティングや量子暗号の萌芽期がまさにそうであったように、異なる知性の間のinteractionというゲームがどのくらい有効に成立するかにかかっているであろう。このやりとりを通じて、新たな次の可能性を探ること、これが本探索研究の目的である。

 最終的には量子情報処理は情報の社会学や倫理と関わりが深くなることが予想される。現に情報に関係する文科系研究者の中にも量子情報処理に非常な興味を示す人さえいる。素朴に考えても、もし「認証局」を必要としない認証や署名が出来たら? 選挙管理委員会が要らないとしたら? 絶対に破れない暗号を反社会的団体も使えるとしたら? 量子コンピューティングで暗号破りができる国が一つ出現したら? 考えると社会を大きく変革するかもしれない題材はそこかしこに転がっている。

 そこまで行くには時間がかかるであろうが、このような展開が考えられるのも「複数の異なる主体が絡むゲーム」的分野ならではの特質に他ならない。本探索プログラムでは一応理科系の範囲で、原理的にも未知の部分があり、社会的インパクトもあり、実験も高邁すぎも設計論的すぎもしない基礎研究として期待される次なるステップは何か、それを追究したい。もちろん量子コンピューティングや量子暗号も密接に関係しているので、それらについての議論が含まれることは必然である。互いの分野の勉強会に始まり、最後はinteractiveに成長する議論にまで持って行き、ひいては今後の新たな領域開拓の芽と交流の輪を築くきっかけを作ることを目指してこのプログラムを企画・設計したものである。

 なお、JST戦略的創造事業本部研究調整室ならびに全日本地域研究交流協会の皆様にはいろいろと大変なお力添えをいただき、今回のプログラムを遂行することができた。このような素晴らしい機会を与えていただいたJST本部の関係者の方々を含め、この場を借りて厚くお礼申し上げたい。

平成15年3月
コーディネーター
井 元 信 之

1.総括

1.1 経緯と構想

 この領域探索プログラム「量子情報科学」に先立ち、2000年度にはJST異分野研究者交流フォーラムを、2001年度には異分野交流ワークショップを、同じく「量子情報科学」のテーマで井元がコーディネーターとして企画・開催した。そこでは量子情報と「物理」「通信」「暗号」「計算」「生命」「人文社会」と量子情報科学との関わりを議論した。その構成メンバーやプログラムの詳細は付録資料として本報告書の最後に添付するが、多様かつ刺激的な議論がなされた。中でも普段は議論されないであろうと思われるものとして量子情報研究とDNAコンピューティングとの関連や情報社会学との関連などが議論された。また量子情報科学も新しい分野の常として、系統立った理論構築より先に少々行き当たりばったり式にアイデア提案が蓄積されているが、そもそも量子コンピューティングの高速性や量子暗号の安全性の根本的根拠は何かなど、よりシステマティックな研究の展開を目指す議論がなされた。さらにコンピューティングと暗号以外への量子情報科学の応用も考えて行く必要があることも議論された。このような今後の新たな方向性にも輪郭がおぼろげに見えるものからかなり不明瞭なものまでいろいろあることがわかった。

 JST異分野交流フォーラムおよびワークショップは「量子情報科学」以外にも多種走っていたが、その中でいくつかが2002年度の領域探索プログラムに採用された。この「量子情報科学」はその一つである。
 異分野研究者交流フォーラムを始めた頃と異なり、既に世の中では「量子コンピューティング」および「量子暗号」の研究はスタートしており、専門的な研究会も開かれている。そこでこの領域探索プログラムではそういう研究会では取り上げられないような議論を目指し、「まえがき」にも述べたように、「量子多者間プロトコル」「量子ゲーム理論」それに「量子テレポーテーション」を軸に進めることとした。これはこれで適切な方向付けと自負する一方、議論が理論偏重に陥る可能性もあるため、やはりハード実験の進展状況をウォッチすることも重要視したい。そこで3回の研究会では必ず実験関連を入れる設計とするとともに、海外動向調査はその3回の研究会と相補的な実験研究の最先端グループを調査することとした。
 研究会参加メンバーは異分野研究者交流フォーラムおよびワークショップとのオーバラップもあるが、新メンバーも少なからず加わっている。これは2年半前に構想したときからの研究分野の進展の必然的結果である。

1.2 実施内容

 今回の領域探索プログラム「量子情報科学」は2泊3日の討論会合を3回設けた他、海外動向調査を行った。3回の会合の座長をお願いした方々は、

座長(敬称略・50音順)
   今井浩 (東京大学)
   北川勝浩(大阪大学)
   清水薫 (NTT物性科学基礎研究所)
   高柳英明(NTT物性科学基礎研究所)
   竹内繁樹(北海道大学)
   都倉康弘(NTT物性科学基礎研究所)
   富田章久(NEC基礎研究所)
   平野琢也(学習院大学)
   村尾美緒(東京大学)
   森越文明(NTT物性科学基礎研究所)

である。また3回の会合の日時と場所はそれぞれ、

   第1回:1月17日(金)〜20日(日)
    場所:オークラアカデミアパークホテル(千葉県木更津市)
   第2回:2月8日(土)〜10日(月)
    場所:湘南国際村センター(神奈川県横須賀市)
   第3回:3月7日(金)〜9日(日)
    場所:ファーストグリーン赤根崎(静岡県熱海市)

である。出席者は固定メンバー、変動メンバー、それに座長を含め延べ40名であった。

また海外動向調査は、
  (1) Wien大学・Konstanz大学・Erlangen大学(S. K. Ozdemir:2月4日〜15日)
  (2) Sanford大学・NIST(井元信之・山本俊:2月27日〜3月2日)
の日程で行った。

1.3 研究会合プログラム

全3回の研究会合プログラムは次の通りである。

【第1回プログラム】
場所:オークラアカデミアパークホテル(千葉県木更津市)

1月17日(金)
20:00〜22:00事前討論

1月18日(土)
09:00 「イントロダクション」
        総合研究大学院大学  井元 信之
      セツション1「マルチパーティ情報処理」    【座長:富田 章久】
      話題提供「Quantum State Engineering」
        総合研究大学院大学 Sahin Kaja Ozdemir
      話題提供「ゲーム理論とオークション」
        NTTコミュニケーション科学研究所  横尾 誠
12:00 昼食
13:30 話題提供「不確定性原理と対話型二者間セキュリティ情報処理」
        NTT物性科学基礎研究所       清水 薫
      セツション2「量子コンピューティングの新側面」【座長:北川 勝浩】
      話題提供「量子オートマトンとは?」
        奈良先端技術研究大学院大学     中西 正樹
      話題提供「計算時間短縮を目指すか素子数抑制を目指すか」
        電気通信大学            國廣 昇
      話題提供「量子フーリエ変換は今でもできる!」
        NEC基礎研究所           富田章久
      セツション3「量子テレポーテーション」    【座長:高柳 英明】
      話題提供「光⇔物質間量子情報の移し替え」
        東京工業大学            上妻 幹男
      話題提供「量子テレポーテーションの現状と展望」
        東京大学              古沢 明
20:00〜22:00自由討論

1月19日(日)
09:00 セツション4「量子情報理論の最先端」     【座長:清水 薫】
      話題提供「エンタングルメントの分類」
        東京大学              三宅 章雅
      話題提供「量子暗号のセキュリティ問題」 
        総合研究大学院大学         玉木 潔
10:30 総括・まとめ討論
【第2回目プログラム】
場所:湘南国際村センター(神奈川県横須賀市)

2月8日(土)
16:00 「イントロダクション」
        総合研究大学院大学  井元 信之
16:45 セツション1「マルチパーティプロトコル」 【座長:森越 文明】
      話題提供「電子投票と電子入札」
        NTT情報流通プラットフォーム研究所 鈴木 幸太郎
20:00〜22:00自由討論

2月9日(日)
 9:00 セッション2「量子情報理論」       【座長:平野 琢也】
      話題提供「計算量・量子計算量とゲーム」
        東京大学              今井 浩
      セツション3「量子情報実験現状:光の操作」
      話題提供「線形光学によるエンタングルメント抽出」
        総合研究大学院大学         山本 俊
12:00 昼食
13:30 セツション3「量子情報実験現状:光の操作」【座長:今井 浩】
      話題提供「量子通信の新しい展開」
        学習院大学             平野 琢也
      セッション2「量子情報理論」
      話題提供「NMR量子計算とデータ圧縮」
        大阪大学              北川 勝浩
15:30 セツション4「量子ゲーム理論」      【座長:北川 勝浩】
      話題提供「囚人のジレンマ問題と量子情報理論」
        NTT物性科学基礎研究所       森越 文明
        総合研究大学院大学         玉木潔、島村 淳一
20:00〜22:00自由討論

2月10日(月)
09:00 セツション5「量子情報実験現状2」    【座長:都倉 康弘】
      話題提供「超伝導素子によるC-NOT動作」
        NEC基礎研究所           山本 剛
      話題提供「超伝導磁束量子ビットのシングルショット測定」
        NTT物性科学基礎研究所       田中 弘隆
11:30 総括・まとめ討論

  注)セッション2および3が時間的に入りくんでいるのは話題提供者の変更があったことによるもので、構成上の意味はない。

【第3回プログラム】
場所:ファーストグリーン赤根崎(静岡県熱海市)

3月 7日(金)
16:00 「イントロダクション」
        総合研究大学院大学          井元 信之
16:20 セッション1「海外研究動向調査報告」  【座長:井元 信之】
      話題提供「量子情報処理実験研究の動向」
        総合研究大学院大学          Sahin Kaya Ozdemir
                           山本 俊
20:00〜22:00自由討論

3月 8日(土)
09:00 セッション2「マルチパーティプロトコル」【座長:村尾 美緒】
      話題提供「対話型証明,ゼロ知識証明,量子計算」
        ERATO今井プロジェクト      小林 弘忠
      話題提供「マルチパーティプロトコルとゼロ知識証明」
        NTT情報流通プラットフォーム研究所  阿部 正幸
12:00 昼食
13:30 セッション3「量子情報処理の新しい話題」【座長:森越 文明】
      話題提供「量子テレクローニングと集団投票プロトコル」
        東京大学物理学科           村尾 美緒
      話題提供「Quantum Domain Theory」
        Imperial College            Dr. Elham Kashefi
      話題提供「光子を用いた量子情報通信処理」
        北海道大学電子科学研究所       竹内 繁樹
                           Dr. Holger Hofmann
20:00〜22:00自由討論

3月 9日(日)
09:00 セッション5「量子ゲーム理論」     【座長:竹内 繁樹】
      話題提供「モンティ・ホール問題:古典と量子」
        総合研究大学院大学          島村 淳一(登壇者)
                           Sahin Kaya Ozdemir
                           玉木 潔
        NTT物性科学基礎研究所        森越  文明
11:00  全3回の総括・まとめ討論

1.4 まとめ

 今回の領域探索プログラムでは通常の学会や研究会では行い得ない将来に向けての話題に触れ議論を行うことができた。大きく分けてマルチパーティ情報処理、量子ゲーム理論、量子テレポーテーション、量子情報の新しい話題、実験研究の5つの項目について話題紹介と討議がなされた。参加者の分野も数学、情報、通信、物理、材料科学、実験科学から多様な人材が集まり、広くかつ深い議論が出来た。詳細は「2.研究会合報告」にて時間順に紹介し、また「3.海外動向調査報告」と「4.海外動向調査報告」で出張報告を行うが、ここでは紹介された話題と議論を上記5つの項目順に総括しておく。

 1.4.1 マルチパーティ量子情報処理

 暗号やビットコミットメントは既にゲーム性を帯びた複数主体間のやりとりの様相を呈している。このマルチパーティ情報処理と量子を組み合わせる可能性を量子研究者の側から追究するためには、どうしても「量子のつかない」マルチパーティ情報処理の勉強から始めなければならない。「マルチパーティプロトコルとゼロ知識証明」はそれを目指したものだったが、大変わかりやすい優れたチュートリアルであった。これにより要素プロトコル(紛失通信やビットコミットメント)とゼロ知識証明の関係などが明らかになった。それに量子力学を持ち込んだ「対話型証明,ゼロ知識証明,量子計算」では量子ヴァージョンのアイデアが紹介され、量子ヴァージョンを考える際の問題点が浮き彫りになって来た。また「不確定性原理と対話型二者間セキュリティ情報処理」は量子ビットコミットメントや量子紛失通信に新たな一歩を踏み出す可能性を示唆しており、今後の展開が期待される。

 1.4.2 量子ゲーム理論

 同じく量子ゲーム理論を量子研究者の側から追究するためには「量子のつかない」ゲーム理論の勉強から始めなければならない。「電子投票と電子入札」「ゲーム理論とオークション」はそれを目指したものであり、これらも大変示唆に富んだチュートリアルであった。そして「囚人のジレンマ問題:古典と量子」「モンティ・ホール問題:古典と量子」「ビザンチン問題:古典と量子」では代表的なゲーム理論の例題とその量子ヴァージョン、およびそれへの批判論文について紹介された。
 まだ明瞭に理論が体系立てられているわけではないが、議論を通じ、ゲーム理論と量子情報処理の関わり方は次のような形態になっているのではないかとの感触を持った。すなわち (1) 古典ゲームのルールを物理的に守らせる(あと出しを禁じるなどの)ために量子マルチパーティプロトコルを使う場合と、(2) エンタングルメントなどの量子情報処理的手段を許してゲームを多様化する場合である。これらはゲーム理論そのものには特段の新しい変更をもたらすものではないので「ゲーム理論の量子ヴァージョンを開拓した」と言うのは憚られるが(この点が上記「批判論文」の骨子だが)、それなりに面白く将来性があるのではないだろうか。
 これに加えて (3) ゲーム理論の純粋な量子ヴァージョンを考えたいところだが、これは簡単に進む自明なことではなさそうである。少なくとも上記「囚人のジレンマ」「モンティ・ホール問題」「ビザンチン問題」の量子ヴァージョンは(これはこれで面白いが)それではない。今後の新たな発想が待たれる。

 1.4.3 量子テレポーテーション

 量子テレポーテーションは光で実験が行われているが、当然次は原子→分子→高分子と進むであろう。一つの方法としては、話題提供された「光⇔物質間量子情報の移し替え」を実現し、原子→光→(テレポーテーション)→光→原子が考えられる。また2者間でなく多者間テレポーテーションを視野に入れた「量子テレポーテーションの現状と展望」、それに複数箇所へテレポーテーションを行う「量子テレクローニングと集団投票プロトコル」も今後のあり方を示唆する話題であった。特に複数箇所へのテレポーテーションでは、量子クローニング禁止定理があるため、完全なテレポーテーションは当然できないが、その複数箇所からさらに別の一カ所に適切にテレポーテーションすると元の量子情報が再生できることから、複数投票者の満場一致投票ゲートへの応用が考えられる。また「1.4.5 実験研究」で述べる「量子エンタングルメントの抽出実験」は遠距離量子テレポーテーションに道を開くものである。

 1.4.4 量子情報の新しい話題

 新しい話題として「エンタングルメントの分類」「量子暗号のセキュリティ問題」「NMR量子計算とデータ圧縮」「量子オートマトンとは?」「Quantum Domain Theory」の話題があった。以下にそれぞれについて要約する。
 二体のエンタングルメントは一種類しかないが、三体は二種類あることが知られている。四体以上になると解明されておらず、困難な問題となっているが、新しいアプローチの可能性も提案されている。
 量子暗号のセキュリティ問題は古くて新しい問題である。BB84については「無条件安全性」から「我々と同じ科学力を持つ盗聴者に対する安全性」まで様々なレベルと仮定に対し安全性の条件が明らかになりつつある。B92方式もごく最近同様の進展が見られた。他の量子暗号についても明らかにして行く必要がある。
 「NMR量子計算とデータ圧縮」ではNMR量子計算における特異な冷却手段である「演算的冷却」が紹介され、これが量子データ圧縮と密接な関係があることが議論された。
 量子情報科学の発端(の一つ)はもともとD.ドイチュがチューリングマシンの量子ヴァージョンを考え始めたことにある。しかし計算のモデルはチューリングマシンの他にもあるので、それらの量子ヴァージョンを考えることにより新たな展開が得られるかもしれない。そのような話題として「量子オートマトンとは?」および「Quantum Domain Theory」が紹介された。

 1.4.5 実験研究

 エンタングルした光子対はテレポーテーションや量子暗号を行うためのリソースとして必要となるが、現実には遠方二地点への伝送や長時間のメモリーにおいてエンタングルメントが薄れるであろう。このとき、多数のペアを(それぞれの片割れをそれぞれの地点で)かき混ぜて少数ペアを抽出し、そのエンタングルメントが回復させる方法が必要である。「線形光学によるエンタングルメント抽出」はそのような方法の提案と実証実験(世界初)が紹介された。
 量子操作に続く量子観測は順序を逆にしてもよい場合がある。それを利用して光子を使った実験が「量子フーリエ変換は今でもできる!」で紹介された。Shorの素因数分解アルゴリズムはまさに「そうしてよい場合」にあてはまる。
 また光を使った量子情報処理では光子一つ一つを使うか、波としてスクイジングの様子に情報を載せるかという二つのパラダイムがある。「量子情報通信の新しい展開」では両者のハイブリッドの方法が紹介された。  「光子を用いた量子情報通信処理」ではパラメトリック下方変換と微小球発光という異なる方法による単一光子発生技術の現状が紹介された。
 「光⇔物質間量子情報の移し替え」では光からトラップ原子集団への量子情報の移し替えの実験と展望が紹介された。
 「超伝導素子によるC-NOT動作」では超伝導デバイスとしては世界初の2qubit動作実験が紹介された。また「超伝導磁束量子ビットのシングルショット測定」では超伝導デバイスとしては世界初のシングルショット測定実験が紹介された。

 なおこれ以外に半導体量子ドットについても取り上げたかったが、時間の都合もあり、またの機会に譲ることとした。また「海外研究動向調査」では大きな分子の量子干渉や光を用いた量子情報処理実験、単一光子の発生と検出、イオントラップ量子コンピューティング実験などを見学、調査した。その詳細については「3.海外動向調査報告」と「4.海外動向調査報告」に譲る。
正式報告書はこのあと各セッション報告および海外動向調査報告が続きます。
前のページ(ホーム)に戻る