「藤井寺球場ナイター問題の経過」 |
〔『広報 ふじいでら』(昭和48年6月1日発行 別冊No.2 特集号)より〕 |
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*** 筆 者 の 感 想 *** 正直言って、この文書を再構成する作業はかなり疲れました。体力的な問題ではなく、精神的な疲れです。文章量の多さもありますが、 何よりも、文の長さと分かり難さです。陳情や要望、確認書や協定書などの内容を吟味する前に、文章の読み取りそのもので相当疲労した 感じがします。文脈を確認して内容を把握するために、何度も読み返す必要がありました。当時の市民の皆さんは、これをちゃんと読まれ たのでしょうか。多くの市民に読んでもらい、確認書や協定書の締結に理解をしてもらう目的で発行された広報としては、余りにも読みづ らい文章と言わざるを得ません。以下に列記します。 @ 一つのセンテンス(文)がやたらに長く、いきなり最初のページに約390字もある文が出てきます。「 。‥‥‥ 。」がとにかく長いの です。市議会のページには、500字で一文という驚異的な文章があります。作成に努力された担当者には申し訳ありませんが、いわゆる “お役所文章”の典型と言ってよいでしょう。読み手の受けとめ方など関係なく、ひたすら伝達したいことや連絡したいことを並べ立て る、という姿勢で書くとこういう文章になりがちです。国や自治体などから来る通達文書や連絡文書によく見られることで、私も現職時 代によく経験しました。 自治体の広報紙に限らず、広報紙の文章というのは、とにかく「読みやすく、わかりやすく」書くべきだ、と私は考えています。広報 というのは「広く報せる」ことが目的なので、読んで内容を理解してもらえなければ用を成しません。この特集号の文は、市や議会の立 場を理解してもらおうという姿勢が強すぎて、文章そのものをまず理解してもらう工夫が欠けていると思いました。 A 全体の内容を通して私が感じたのは、「藤井寺球場ナイター問題の経過について」という表題で何を伝えたかったのだろうか、という 疑問です。「経過」を伝えたいのであれば、時系列に沿って事実をたんたんと記述すればよいと思います。「経過について」何か言いた いということなのか、とも受け取れるような全体構成だと思いました。 前置き文の中で、「詳しくご報告を申し上げ、市民の皆さんのご理解を得たいと存じます。」とありますが、「詳しくご報告」の中身 に、前述した通り市や議会の立場が出すぎていると思いました。全文を通して私が受けとめた趣旨は、誤解を恐れずに書かせていただく と、「ナイター問題の言い出しっぺは近鉄球団で、それに対して地域住民から反対や不安の声が上がり、多くの陳情や要望が市に寄せら れた。市や市議会はこれを受けて近鉄とも折衝し、関係地区住民とも何度も話し合い、市理事者と議会とで何度も会議を持った。一部の 過激な反対住民の行動にも対処し、果たすべき努力は十分尽くした。市民はそのことを評価して、我々が確認書と協定書の締結にこぎ着 けたこととその内容を認めるべきだ。」という感じです。「ご理解を得たい」と言うには、何かが足りていないと感じました。 B 足りないものの一つが、経過報告を文章化するに当たっての全体構成の吟味・検討と配慮・バランスです。詳しく報告するために、陳 情・要望を寄せた自治会や町内会の名前が何度も出てきますが、ご丁寧に自治会長の個人名までフルネームで書かれています。良い方に 解釈すれば、「この方々が努力された」という意味で載せることも考えられますが、この場合はそうとも思えません。請願書を提出され た方などは、個人名のみならず、住所まできっちりと書かれているのです。おまけに紹介議員まで書いてあります。議会の記録には当然 書かれている事項でしょうが、この特集号で必要なことでしょうか。対して、市の職員や議会の委員会正副委員長などは、何度も出てく るのに誰ひとりとして個人名は見られません。すべて役職名だけです。一人わかったのは、確認書などにあった市長名だけです。一般に 団体や組織の意思を表す行為・行動を伝える場合は、その代表者の役職名だけでもいいと思います。自治会長の場合も個人名は必要なか ったと思います。この特集号は半世紀前に発行されたものですが、現在ならば個人情報の扱い方として問題にされたことでしょう。 C 全体の文章量が多かったためか、特集号全体の中での整合性が取れていません。何人かで担当された原稿を合体して構成されたと思わ れますが、細かい点で表記のばらつきや揺れが見られます。仮名遣い、句読点の使い方などで統一性が欠けています。自治体の広報紙と いう性格を考えると、やはり新聞のように標準仮名遣いに準拠すべきでしょう。 特集号の内容からして、いろいろなところから「書いてくれ」「書かないでくれ」という要望を寄せられたことが考えられます。限ら れた時間の中で担当者は努力されたことと思います。多少の文章上の不備はやむを得ないことかとも思いました。 |