02/12/26 「通路を横切る」ことの意義
議会政治の母国とも言うべきイギリス議会は与党と野党が向かい合う形で議場が造られている。毎週1回行われるという与野党党首による討論「クエスチョン・タイム」では、各党首が向かい合って、その後に議員が座っているという構図である。議会中央の与野党を分ける通路は「ソード・ライン」と呼ばれ、特別な意味を持っているということを高校時代に何かの本で読んだ記憶がある。
かのウィンストン・レナード・スペンサー・チャーチルはこの「ソード・ライン」をその生涯において二度渡っている。このことについてチャーチルは「この通路を横断する行為は重大な考慮を必要とする。私はこのことについてよく知っている。その困難な移動を、一度ならず二度も実行したからである」と回顧している。政党間の移動、とくに与党から野党への移動あるいは野党から与党への移動は重大な考慮を必要とするものである。
「保守新党」なる新党が結成された。略称は「保新党」(ほしんとう)といったところだろう。何となく「保身党」という字をあてた方がよいような気がする。チャーチルのような「重大な考慮」など微塵もはかられずに急造された政党である。構想から実現まで1ヵ月もかかっていないだろう。なぜこの時期に結党を急いだのかは明白である。政党助成金の問題である。理念も政策も後回し、とにかく運転資金だけがほしかったのであろう。
野党である民主党から「通路を横切った」人間は5人。そのうちの3人が比例区選出の議員であるという。小選挙区で当選した議員の政党間移動にはある程度理解を示すとしても、比例区選出の政党間移動は到底許すことのできない行為である。民主党であるがゆえに獲得した議席を維持するというのはあまりに民意にかけ離れていないだろうか?比例区選出の議員は即刻辞職すべきである。
代表に就任した熊谷弘なる人物は、民主党の国対委員長時代に小泉首相をはじめ連立与党をことごとく批判してきた人間である。その人間が与党に与し、政権を担ってゆくというのであるからなんともおそろしい話である。次の総選挙においてこの種の議員達は全て殲滅されるべきであろう。「人面獣心」とはこのような人たちのことを言うのである。
これまで保守党の存在意義がなかったように、「保身党」の存在意義などないのである。「脳死状態」に陥っている「保身主義者」たちの生命維持装置でしかないのである。