02/11/04 不正、不正と言うけれど…
『ボーヌ・グレーヴ・ヴィーニュ・ド・ランファン・ジェズュ』というワインがある。1731年から続くブシャール・ベエール・エ・フィス社であった。1987年、同社は不正事件を起こし、1995年にはアンリオ社に買収された。
1987年に起こした不正事件とは、ブドウ不作の年に法律で禁止されている補糖と補酸の併用を行い、補糖も法律の制限以上の量を行っていたというものである。さらに、原産地呼称統制法によって禁止されている原産地以外のブドウも使用されていた。 この事件が摘発された時に経営者は、「みんなやっていることなのに、どうして私だけが摘発されるんだ!」と言ったということである。
ここまでの話で多くの人は、「不正を犯す経営者はみんな同じようなことを言う」と思うであろう。雪印事件、日ハムの牛肉偽装事件などを思い浮かべるであろう。しかし、不正を犯すのはのは何も生産者だけではない。西友の牛肉買取問題からも明らかであるように、消費者も不正を犯す。私を含めて、全ての人間が何らかの不正を犯している。
実は冒頭のエピソードには後日談がある。1995年にジョセフ・アンリオが経営に乗り出すと、醸造所の従業員はいっせいに旧い経営陣を罵りだす。リストラの噂が広まっていたからか、各人が自分の保身を考えていた。その時、一人の青年が立ち上がり次のように言った。
「「会社をダメにしたのは悪い経営者なのだ!」そろいもそろってさっきからそればかりだ!そうやって他人に罪をなすりつけて、誰一人自分のあやまちを省みる者はいない!それでは、「なぜ私だけが摘発されるんだ」と言った経営者たちと何ら変わりがないではないか!」
他人の不正を糾弾する前に、我が身の不正を正さなくてはならない。自分自身のモラルを向上させなくてはならない。「修身斉家治国平天下」とはよく言ったものである。この国のモラルが低下し、不正が蔓延っているのであれば、まずは己から改善せねばならない。
ゼミ論文執筆の疲れを癒すために先月はおよそ1年ぶりに喫煙者となった。歩き煙草は一切行わず、喫煙コーナーで喫煙し、煙草のポイ捨ても一切行わなかったつもりである。しかし、嫌煙家たちの気分を害したことは多々あるであろう。
ゼミ論文の執筆が終わり、再び禁煙家になった。喫煙者たちの悪いマナーが目につく。しかし、自分自身が喫煙者であった時に同じようなことをしていなかったかと自分を戒める気持ちになった。